六甲颪…
六甲颪 …
阪神タイガースの唄として
ご存知の方が殆どでしょう…
私もそうでした…
この話しを知るまでは…
街がタイガース優勝で活気づき、いい気になった3人の若者達は、夜更けに六甲山に向け車を走らせた…
駅前のレンタルDVD屋のアルバイトを終えた里美は、自転車に乗り帰り道を急いでいた。
車も人気も少なく街灯も疎ら…
何時もの事ながら、ペダルを漕ぐ足も速まる…
「あぁ~もぉ~本当、この道暗いから嫌だな~」
里美は怖さを紛らす為、呟いた…
自転車のペダルを必死に漕ぐ…
シュンシュンシュンッ…
風が鳴る …
里美は風を鳴らし家へと急いだ…
背後が急に明るくなり
「車だ… 」
里美は車の邪魔にならないように、歩道を走った…
黒いワンボックスカーが里美を追い越し、急に停まった…
ガァーッ
後部座席のドアが開き、男が2人、里美の前と後ろに立つ …
「なっ、何、嫌ー !離して!嫌-!」
男達は無理矢理、逃げようと抵抗する里美を、ワンボックスカーに押入れた…
里美は後部座席で…
躰を小さく縮め
ガタガタと恐怖に震えていた …
「嫌!嫌!離して!ふっ、ふぐぅーっ!」
2人の男は泣き叫び、抵抗する里美の口を 、ガムテープで塞ぎ
手足をロープで縛ると、直ぐに車が走り出した …
里美が連れ去られた後は…
倒れた里美の自転車が…
悲しそうに…
カタカタとペダルを回していた
「ふっ、ふぐぅ~ うっ、うっ…」
里美は躰を震わせ…
大粒の涙をボロボロと落とした…
どこに連れて行くの…
怖いっ、怖いっ、誰か助けてー!
口を塞がれた里美は心、の中で叫んだ
里美と一緒に後部座席に座る2人の男も、運転席に座る男も…
ゲラゲラ笑いながら …
「女1人の夜道は危ないって習わなかった ?」
「そんな怯えるなよ~ドライブしようぜ」
「六甲颪! 六甲颪!」
ゲラゲラ!ゲラゲラ!
里美を拉致した男達は、六甲山へ向かった
里美は恐怖のあまり、引きつけを起こしたように…
「ひっ、ひっ、ひっ…」
声が漏れる …
六甲山に着くと、男達は里美の衣類を剥ぎ取ろうと手を伸ばした…
「うわぁ~しっしっ死んでる~」
「おっ、おいっ、放れ、それしか無い!」
3人の若者は暗闇の中、辺りを気にしながら里美の遺体を山頂から放り投げ、逃げるように六甲山を後にした。
その後、互いに一緒にいる気にはなれず
ワンボックスカーを運転する坂田が、後部座席に乗る2人を家の近くまで送った。
… … … 壱 ノ 怪 … … …
坂田は1人になり、自宅に向かい車を走らせた。
嫌な事があったせいで気が沈む…
音楽でも聞こうかと、カーステレオのボタンを押した…
「ん?気のせいか…」
一瞬、バックミラーに…
何かが過ったよう気がした …
キュルルルキュルルルキュル…
CDが空回りする…
「はぁ?おかしいな…」
坂田はもう一度、カーステレオのボタンに指を伸ばした…
ひっ … ひっ … ひっ …
「うわぁ~っ」
スピーカーから里美の引きつけ声が流れた
「俺じゃね!俺が言ったんじゃねぇよ! 」
坂田の背後から白く細い腕が…
ぬぅ… と伸びてきた…
「うわぁ!違うっ違うって!うわぁ-!止めろ-!」
大きな交差点が坂田の目に映る…
信号は赤 …
坂田は慌てて車のブレーキを踏んだ
キキキキキキキーッ!
首に伸びる細い手が …
ギュゥ、ググッ、ギュゥ
坂田の首を締め上げた…
「うぐぇ… くっ…苦し… い … … 」
ゴッ… …キッ … …
ド--ンッ!… ガガガガ… ドンッ
黒いワンボックスカーは…
トラックに激突し横転…
坂田は首の骨を折り… 即死…
… … … 弐 ノ 怪 … … …
黒いワンボックスカーを降りた白石が、アパートへ戻りTVのリモコンを押すと、お笑い番組が放送されていた。
TVを見始め、5分もすると …
「ハハハッ!ウケる~ハハッ!」
白石は笑い始めた…
40分程でお笑い番組が終わると、シャワ ーを浴びようと、バスタオルを持ち風呂場へ向かった。
「ふっふん~♪ふふふふ~ん♪」
鼻歌を唄いながらシャワーの蛇口を捻った
ザーザーザーザー
シャワーの湯が勢い良く白石の躰を濡らす
「お願いだベイビ~♪ふふふんふ~♪笑って~♪」
唄いながら頭を洗い始めた …
ゴシッゴシゴシゴシッ
ひっ …
白石の頭を擦る手が止まる …
「ん?」
ひっ…ひっ…
白石は左右に大きく振り返るように…
躰を振り…
「誰だ!出て来い!」
ひっ… ひっ… ひっ…
「この声 … さっきの… 女 …」
白石は里美の声だと思い出し…
「違う… 違う…俺じゃない!違う…ひっひや ぁ~っ!」
慌てて風呂場を出ようとドアを開けた
風呂場の床から…
ぬぅっと白い腕が2本伸び
白石の陰のうを掴んだ…
「はっ、離せっ!このっ!痛っ痛っ!止めろ-!」
ギュゥ…ググッ…ギュゥ…
「ぎぃ-ゃぁ-!止めてくれ-!」
… … グッ… チャ …ッ …
白い手は白石の陰のうを握り潰した…
「ぐっ… ぁ …」
バタンッ …
白石は出血多量による
外傷性ショックで死亡 …
… … … 参 ノ 怪 … … …
牧野は家に帰ると直ぐに、鰯の缶詰を肴に酒を煽るように呑み始めた…
ひっ ひっ ひっ…
里美の声が頭を離れない …
「クソッ!だから嫌だったんだよ… 白石の 奴… 」
忘れよう、忘れようと牧野は酒を煽る…
1時間も過ぎると …
すっかり躰に酒がまわり…
牧野は、ゴロンとソファーに躰を横たえ…
ぐごぉ~ ぐごぉ~!
眠ってしまった …
ぎゅ-ぅっ… ぎゅ…ぅっ…
「うっ、ぐはっ、やっ… 苦…し…」
牧野は胸を圧迫される苦しさに驚き
目を開けた …
ズッ…ブブッ…ズフブッ
「ぎゃぁ-!目っ!目っ!」
白くしなやかな指が、牧野の眼球を突き刺した…
グッ…グチュッ… … ブチンッ…
「うぎゃぁぉ-っ!」
しなやかな指は…
牧野の眼球を抉り出した…
ボトンッ…
牧野の目の玉が2つ床に転がる…
ひっ… ひっ… ひっ…
「うわぁ-!来るなっ!来るな-!」
牧野は目の玉を抉られ、錯乱し両手をブンブン振り回す…
ひっ… ひっ… ひっ…
「俺じゃない!違う!来るな-!」
じわり… じわり…
目は無くしても…
何かが近づく気配は感じる…
ひっひっひっ…
牧野は後退りながら、手を振り回す…
「ううぅ… 来るなっ来るな来るな-!うわ ぁ-!」
見えかない者の恐怖に堪えかね…
ガッシャァーン …
窓ガラスを突き抜け…
勢い余りバルコニーの冊で前転し
そして…落ちた…
牧野は飛び降りで即死 …
… … … 四 ノ 怪 … … …
でも… 可笑しいですよ…
六甲山で悪さした人 …
もっともっといる筈なんですよ
女性を犯して裸のまま放置したりして …
でも… 直に …
ひっ … ひっ … ひっ …
… … 必 ズ … …
… … 眼ニ見エナイ者達ガ … …
… … 復 … 讐 … … 致 シマ ス … …
… … ヒッ … ヒッ … ヒッ … …
拝読頂きまして
ありがとう ございます。
読書の皆さんに感謝致します。