叶果(キョウカ)
人との関わりが面倒くさくて
人との関わりを絶ちたくて
青年は願った
「誰もいない世界が欲しい」
翌朝、青年が起きると誰もいなくなっていた
近くにあった車に乗って走り回った
本当ならまだ乗ってはいけなかったが
誰もいない世界なら取り締まる人もいない
今まで見たことのない景色に青年は興奮した
毎日、毎日が楽しかった
誰にも縛られない自由な世界
ずっと続くと思っていた
でも青年は気づいてしまった
共感してくれるひとがいないことに
言葉を口に出すことができるのに出すことがないことに
次第に心が蝕まれて気力だけが失われていた
「何がしたかったんだろう」
その言葉だけが繰り返されるようになっていた
誰もいない世界で
その先にあるものが青年には見えなかった
ある日、全体が黄緑色の奇抜な一軒家を見かけた
青年は何気なしに家に入った
中を散策していると子供部屋と思しき扉を発見
部屋に入ると学習机の上には日記が置かれていて
ページをパラパラとめくると最後に書かれたページを見つけた
『きょうでいしゅうかんのがっこうがおわった。土日はかぞくと
キャンプに出かけるよていだから明日がたのしみだ』
読み終った瞬間、青年は泣き出していた
何か取り返しのつかないことをしてしまったのではないかと