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その角の先  作者: こおり
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箱庭

くすんだ校舎の壁を見る。


元々は綺麗だったろうその壁は年月と共に老いていき、今の、どちらかといえば灰色混じりの壁になったんだろう。その年月の中に一体何人くらいの人間が、僕のように泣いてばかりの日々を過ごしたのか。


大人たちはこの環境を社会の縮図だと言う。学校という小さな社会で生き残ることが、将来の立ち位置を決めると言う。ならば僕は、社会に出たら死んでしまうしかないんだろうか。


教科書はもう文字の輪郭も読み取れないほどビリビリに裂かれ、上靴は笑えてしまうくらいカラフルな罵詈雑言が並べられ入れられていた生ゴミの余韻で異臭を放っている。何より僕の身体はひとまわり大きい同級生達の、尖った言葉や有り余る青春力でボロボロだった。


僕は今くすんだ校舎を見上げている。散らばった私物たちは持ち主同様、再起不能だ。僕の墓場はここだろうか。くすんだ校舎の壁を次に汚すのは僕なのか。


大人たちは、綺麗事を言う。イジメは、他人を傷つけることは良くないという。その大人たちの生きる社会で溢れているあらゆる暴力を僕は知っている。ここは社会の縮図なのだ。ここにあるものが社会に無いはずがないのだ。テレビの向こうで学生たちの闇を問うルポライターの強い眼の中にも闇があるのだ。


ここは箱庭。大人たちの箱庭。

誰でも知っている、弱いものが生きられない世界。





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