平嶋君
「うおー夏美さんんんんん!」
平嶋が姉の名前を呼びながら俺の髪を触って嗅いでくる。一緒に住んでるからな。姉ちゃんとシャンプーは一緒だよ。父さんの髪だって同じ匂いだ。
平嶋は俺の姉が好きらしい。
なんで姉ちゃんなんだよ。
背も顔も、俺と変わらないだろ。
やめとけって。
意外と性格だって悪いし、寝相悪いし、すぐ散らかすし、それに、それに…
「そんなに近づいてくんなよ、盛ってるカップルみたいだろうが。離れろ。」
平嶋が笑いながら、
カップルでいいじゃん、と言ってくる。
周りが変な目で絶対見てる。
自分が変なのも知ってる。
「カップルっていうならさ、俺のこと好きになれよ」
平嶋が笑いながら
「お前は俺が好きなのか?」
って聞いた。
平嶋は好きだけど、違う。
「お前だって、俺、とか言わないで、髪だって伸ばせば夏美さんそっくりじゃん。まつげだって夏美さんより長いだろ」
そうしたら、姉ちゃんの代わりにするんだろ、と聞いたら平嶋はまた笑ってた。くしゃくしゃにした俺の頭を撫でている。
夏美そっくりになっても姉ちゃんは俺を好きにならないし、姉ちゃんにもなれない。
シャンプーだって食べてるものだって着てるものだって同じなのに。
ああ、なんで姉ちゃんはあんないい匂いがするんだろう。