観釈迦堂
観釈迦堂は相変わらず薄暗かった。おばちゃんはすっかりお婆ちゃんになって、それでも変わらず奥座敷で店番をしていた。
「いらっしゃい。よっぽど暑かったんだねぇ」
「干からびるかと思いました。お腹も空いてます」
パピコを吸い上げながら、渚ちゃんがこくんと頷いた。
「おはぎも食べるかい?
「いいんですか?」
「俺パピコ食うの久しぶりだわ」
「俺も」
「私も…食べると思い出しちゃうから」
渚ちゃんとお婆ちゃんから少し離れたところで私達もパピコを食べた。
「なあ。一本残ったパピコってまだ置いてんのかな」
「どうだろ。もう食べたか捨てたかしちゃった可能性が高いと思うよ。残ってて欲しいけどね。聞く?」
「ボケてねぇといいけどな。ばーさん」
パピコを食べてカフェと"余った一本"について聞いた私達は観釈迦堂を出た。
「意外にしっかりしてたなあのばーさん」
「そうだね。地図もわかりやすいし、パピコも捨ててないらしいし」
「でも"捨ててないけど埋れて行方不明"よ?本当にあるのかしら」
「さーな。探しておいてれるってんだからいいだろ。その間飯くおうぜ。カフェの場所もわかったことだしよ」
お婆ちゃんが描いてくれた地図はパンフレットに載っているものよりも遥かにわかりやすかった。観釈迦堂から10分と離れていないところにカフェは有るらしい。
「そうですよ。早く行きましょう」
渚ちゃんが口周りについた餡を拭いながらそう言った。