カフェの在り処
「それで、このカフェってどこにあるの?」
ヒデが渚からパンフレットを受け取った。
「暑いし早く行こーぜ。いつまでもここにつったってるよりマシだろ。途中神社も見かけるかもしんねーし?」
アイス食いてー、とアキがぼやいた。神社のことは諦めてくれ、とゆき美はこころの中でぼやいた。
「地図はかなりシンプルだね。うーん、これは地元民じゃないと分からないんじゃないかな?」
地図をみたヒデが苦笑して、ゆき美にパンフを寄越してきた。オシャレなカフェの外観と内装、メニューの一部の写真とともに確かに簡素な手書きの地図が載っていた。小学生が書く宝の地図のように大雑把で、一般的に目印となる郵便局も交番もコンビニも載っていない。駅と自販機と誰かの家を道だと思われる線で繋いである。
「うわー」
地元民でもおもわず声が出るくらい残念な地図だった。口元が引きつる気さえする。この地図で辿りつけたら奇跡だな、と目的地周辺の地理に目をやると観釈迦堂という字が目に入った。
「あ、行けるかも」
カフェ場所ははっきりとは分からないが、観釈迦堂までの道ならわかるし、地図から方向もなんとなく分かる。行けるかもしれない。
視界の端で、渚ちゃんが嬉しそうに顔を綻ばせているのが見えて、その笑顔にキュンとした。