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Fluff Stuff  作者: むあ
9/15

⑧ひとつめの願い


 が、眠ってしばらくしてから、私は息苦しくなって、目を開けた。幼馴染の彼の部屋、時計を見れば12時を少し過ぎたころだ。


 そんな真夜中。


「…っ」



 なんでこんな煙たいんだろう。あいつの体の間をすり抜け、扉のノブに飛びつき、キッチンに向かう。


(あ、熱いっ……これって、火事!?)


 火が、赤くキッチンの真ん中で広がっており、倒れていたのはあいつのお母さん。体は触ってみると氷のように冷たくて、おそらく持病の低血糖症が悪化したからだと気づく。


 ……どうしよう


 火はガスコンロからでていた。スイッチを切ろうとしても、猫の身長じゃ届かないし、すでにスイッチは火の中にあって触れられない。


 まずはおばさんを助けないと……口で彼女のエプロンの肩部分を咥えて引っ張る、が動かない。やはり私は猫なのだ。




「わ、どうしたんだ!?これ」



 そのとき、キッチンに入ってくる、誰かの声。あいつのお父さんだ。


 にゃー!!!!しゃーー!!!


 こっちに注意を向けると、すぐにおじさんは状況を察して、おばさんを助けにきた。


「おい、まりっ、大丈夫か!!!!」


 それから火を消そうとする、でも、火はますます勢いを増していた。炎はおじさんすらも飲み込んでしまいそうな大きさになっており、私はただ、2人が炎に飲まれていくのをみるしかなかった。






 そのとき、ふと1つだけ、可能性が頭を過ぎった。



(願い事……!)




 WISH!



 お願い、ここは大事な人の家…だから、火を消して頂戴…





――




『あっという間に、1つ目の願い事を使っちゃいましたね』



 実際…願い事はすぐに叶ったのだった。水道のねじが緩んでいて、それが偶然開いて水が漏れ、火はガスコンロの回りだけで収まった。その後、不安になって通信をしたところ、天使はあきれた様な声を漏らす。


『願い事は2つしか、かなえられないんですよ?1つをいとも簡単に使ってしまうなんて』

「いいじゃんか、だってあいつの家燃えてほしくなかったし」

『まぁ、いいんですけど…』


 天使は口調を変えて、静かに、私に語りかけるように言った。


『これはあくまでも、あなたの願い事を叶えてほしいのです。あなたは本当に優しすぎる』



 やさし、すぎる?


『自分のためじゃなくても、人のために何かをなしえてしまうような、そんな人だから』



 ……違うよ、そんな。

 自分をそんな風にやさしいひとだなんて、言わないで。ううん、言えない。



 私は……


「私は、そんないい人じゃない!!!」


 私の声に、天使は黙り込んだ。気まずくなって、仕方ないからこうはき捨てる。


「じゃあ、また連絡するから」




 それから強引に通信を切った。







 きまずさは3日目にも抜けず、私は連絡をしなかった。天使も連絡をあえてよこさなかった。





 そして---4日目の夜に、私が天使と連絡をとるまでに、私は気づかされるのだ。



 自分のできることへの限界と、死んだ人がどう思い出になっていくということを。










 願い事はあと1個。でも、私はもう…帰りたいーー何もない白い世界に帰りたくなっていた。


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