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Fluff Stuff  作者: むあ
5/15

④生まれ変わりの話



 ―――これは、とある話


 ある人は、無念の死を遂げた。しかしその死は間違いだったという。

 そのとき神はその人間にこう告げた。


 死をなかったことにし、時間を巻き戻すには膨大な力が必要であり、その糧となるのが、善を尽くすことである、と。そしてその人間を動物として現世に戻し、彼は数年の時を経て、善事を続け、人間としての命を取り戻したのであった。




「というのはあくまでも話です。実際は、死を取りやめることはほぼ99%不可能です」


 天使の言葉に、私は本当に落ち込んでいた。

 ―――ほんとに、もう、私として生き返られないの…?


「しかしながら、今回は私たちの不手際。不祥事はけっしてそのままにはしません」

「じゃあ、どうするのよ」

「ひとまず神様に、話を通してみます。あなたが人間として早く転生できるように」


 で、でも…それじゃあ、別人になってうまれなきゃいけないってことじゃん!!


「そんなっ、私は私としてちゃんと生きたいのに…」



 じわり、涙で視界がゆがむ。

 ただ純粋に悔しかった。


 私は、たった16年の人生を生きて(でも本来はもっと寿命があって)――そしてただこのまま生まれ変われっていうのはひどすぎるよ。


「それはできないんです、だからこそ……例外的に、貴女を現世に、制限時間つきで戻そうと言う神様のお情けなわけなんです、やっぱり、やめますか?」

「行く」

「すごい即決ですね」


 天使が苦笑するけれど、そんなのかまってられない。


「何がなんでも行く」


 動物になったとしても、何の形であっても。私は家族のもとに、親友のもとに、そして大好きだった幼馴染のもとにもう1回行かなきゃならないんだから……


「だって私……」



 彼らに言いたいことが、たくさん残っているから……










 ――その後は早かった


 天使(いまだに性別不明)は、私に注意事項をたくさん説明した。


 ①まずは動物らしく振舞うこと

 ②1日1回は天使と通信連絡をとること


 他にも時間の概念のことや、行動範囲のこと、猶予時間についてなどたくさんたくさん――覚えきれなくなりそうになっていたら、天使は静かにこう言った。


「できることは限られます。しかしあなたには願いが2つだけかなえられる権利をさずけましょう」

「願いをかなえる…?」


 もらったのは小さな首輪だった。


「今からこれをあなたの動物になった姿につけ、現世に行って下さい。これが天界と連絡を取る手段でもあり、そしてあなたの願いを叶える存在になったり、お守りだと思ってくださいね」


 天使がそう言い終わるころには、私の視界はいままでよりもっと低い位置にあった。あ、もしかしてもう、私動物の姿になったってことなのかな。


「かわいらしい姿ですね」


 自分には見えないから何もいえないけれど、きっとでっかくて獰猛な動物ではないみたい。良かった――これなら皆に近づいても怪しまれないよね、?


「では、つらいこともあるかもしれませんが、少しの間だけ、現世での時間をお楽しみください」









 私は白い世界から突然ぽっかりあいた穴に吸い込まれていった。

 急激な落下に私が目を閉じかけたその瞬間、思わぬ姿に、私はその目を大きく見開いていた。








【一瞬近くに見えたのは、1人の黒い長髪を靡かせた少女の泣き顔だった】



 赤く、悲しく光るその瞳。その瞳の中には、困惑、そして悲しみ、そして愛しさが見て取れた。一体どうしてそんな表情をしているのか、私には分かりようがなかった。あっという間に遠ざかってしまっていた。



【私は、落ちていく】



 

 どんどん、速度は上がって、私はそのまま落ちていく。






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