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Fluff Stuff  作者: むあ
3/15

②静寂を切り裂いたブレーキは……



 家に鞄と制服だけ投げすてて、家を飛び出した私の背後に、シロがついてきていた。私の足跡と、シロの足跡が、再び本格的に振り出した雪の上でしっかりと残っている。


 橋を渡って階段を駆け上がれば、そこには昨日と同じ――ううん、それ以上の景色が広がっていた。


「きれいだね、シロ」


 にゃー


 シロを胸に抱きかかえながら、私は境内の石の台のようなものに座った。その近くにあった木の札を見ると、この神社の祭られているものが説明されているみたいだ。


「えっと…」


―――祭られている巫女「烏摩」について


 ここは昔、この辺りでもっとも美しい存在とされた巫女の社でありました。

 大変美しく、多くのものがその姿を見ようと社にやってきたといいます。

 しかしながら彼女は神職の身、巫女でしたので、ずっと独り、この社で過ごしたとされています。

 彼女は、一生の間に、何千何万という人々の病気を治し、大災害を次々と予言しました。

 また彼女は動物と会話ができ、動物たちの心や想いを、多くの動物、人へ伝えました。

 彼女は愛するものに対して言葉を告げられなかった動物たちを、数多く、心安らかに死後の世界へ旅立たせたのです。彼女の死後ここは聖地とされ、彼女の功績をたたえ、彼女は神の1人としてこの神社に祭られています。





「動物と会話ができた少女……か」


 ふとシロを見た。


 にゃーぉ?


 不思議そうに私を見つめるシロに、私はなんでもないと言い、そのまま雪の上に座り込んだ。いつのまにか、日は今にも沈もうとしていた。さっきまでまだ太陽が空の上にあったというのに。腕時計はもうすぐ6時半。あっという間にいなくなった夕陽に、慌てて立ち上がる。


「帰ろっか」


 私はそういって、神社をあとにした。








 それはうす暗くなった、帰り道のこと。






 私は雪の中で、シロと歩いていた。その静寂を切り裂いた、車のブレーキ音。




「……え……?」


 それが、スリップした車の。

 私たちのほうに向かってくる音だなんて。


「あっ…」






 ドスンという鈍い音共に私はそのまま、右の腕のほうに衝撃を感じ


 体が宙を舞うような感覚がして


 道路のすぐ横の橋の下に…雪まみれになりながら川原に転落した


 すぐに続く、頭に衝撃





 そして、生暖かい感覚と、冷たくなる身体。鈍い痛みが耐えきれなくなるほど頭を押しつぶしていく。インフルエンザにかかった時よりも酷く重たい頭痛に、私は死の予感を感じとっていた。



 ――あぁ、私……


 ―――私、死ぬんだ……





 そのとき思いうかんだのは




 いつも笑いかけてくれていたお母さんや

 いざってとき頼りになるおにいちゃん、

 やさしいお父さんや

 にくたらしいけど大好きな妹、

 そしてずっと仲良しの親友に…



 ―――最後に、まだ想いを伝えられていなかった


 ―――幼馴染の彼の顔








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