①シロの行くところ
家に帰る道筋だ。
帰るのかと思ったら、シロは川沿いの家を通り過ぎ、橋を渡る。
その奥はただの小さな山しかないと思っていた私だったけれど、実はその場所には、小さな石段があった。
『烏摩神社』そう書かれた古ぼけた石碑が、階段の上る前に置かれていた。
「からすま、神社?」
ここは神社なんだ……
私はいつのまにか、シロの後ろを追うよりも、ただ階段の上にあるものを見たい衝動で、足を進めていた。
――雨は再び、雪に変わっていた。あたりも夕暮れ時になり、寒さが身にしみる。
「寒いなぁ」
階段はもう少しで終わり――あと3、2、1……
「わぁぁぁ…綺麗…」
私は雪を踏みしめ、階段の頂上にある場所にたどり着いていた。
そこは、小さな神社と、奥に広がる開けた場所で、小さな丘のようになったその奥に見慣れた街の全景が広がっていた。
夕暮れのこの時間、景色は本当に綺麗だった
いつもは近くの空き地で寝転がっている私だけど、きっとここの方がずっともっと気分はいい、そう思った。
「よい、しょっと…」
再び降りだしたおかげでふんわり、クッションのようになった雪の上に私の体が乗って……誰も触ってない新雪は少し沈みこんだ。
空一面に広がる、いつもより赤い、灰色の雲。
「いいとこ発見!!!!」
私は起き上がって、隣で丸くなっているシロをしっかり抱きしめた。シロ、君は私の英雄だ!
私はその日、日が沈むまで、その場で空を見上げていた。
翌朝になっても、私はあの景色を忘れられずにうずうずしていた。
しかし、空は少し晴れ間が見え、道路の雪は解け始めてるので、少しがっかりしつつも、天気予報のお天気おねえさんの、夕方からは雪、という予報を信じることにする。
私は側溝にある残り雪を踏みしめながら学校に向かった。いつもは遅刻魔の私だけれど、今日は気分爽快で早く着く。珍しいね――という親友の言葉にまぁね、とはにかみながら、また今日の夕方も行こうと、あの階段の上に思いをはせていた。
もちろん授業中も、上の空。
雪が降り始め、思わず心の中でガッツポーズ。
うれしさが顔にでたのか、それを見られ、苦手な教科で先生にあてられた。案の定答えは分からず、憂鬱になったけれど、隣の子になんとか答えを教えてもらって乗り切った。
そして夕方。
私は学校をうきうきしながら後にする。
でも、そのころはまだ、知らなかった
これから何が起こるのかも、私の運命が大きく変わることも