戻ってきた日常
父様とケイセイとシオネと私の四人の暮らしが戻ってきた。
父様がお仕事に行かれ、私とシオネとケイセイで家事と雑事と家畜と菜園の世話をして留守を守る。
時々ケイセイが父様のお仕事に連れて行ってもらうようになって、その頻度は徐々に上昇している。
そういう時、私は一人でお留守番で、とても寂しかった。
でも今はシオネが一緒にお留守番をしてくれる。
彼女も四六時中私の側にくっついてるわけではないけれど、呼べば聞こえる距離に誰かがいるという、それだけで不思議に心が静まるのだった。
ああ、今日も、とても平穏。
少し変わったことといえば、シオネが、手指を使う仕事をしない自由時間の大抵を、楽だからという理由で犬の姿で過ごすようになっていることだろうか。
当然会話ができないのだけども、シオネの方が私たちの言葉を理解しているので、意思の疎通に困ることはあまりない。どうしても具体的な説明が必要になった時には、シオネは人間に戻って話してくれる。
傍から見ていると、確かに衣食住全てにおいて気がかりが少なそうに思われる。
時折、ふらっといなくなる。
「また狐に会っているの?」
彼女が人に戻っている時に、あれは何をしているのかと尋ねたら、いいえとシオネは答えた。
「森に戻ってきてからは一度も会っていません」
「では、探しているの? 遠くへ行っては危ないわ。当てもなく歩き回ってはだめよ」
「それもいいえです。おじいさんには、会う必要のある時には会えますから、わざわざ探しません。大丈夫です」
シオネはきっと、私が身を案じているのを察して、安心させようとして断定的に言っただけなのだと思う。なぜか、その時私は、彼女が一人で得心している態度が余裕綽々に見えて、それが無性に気になった。
いいえ、気に障ったと白状しましょう。
例えば、今のように老狐についてシオネが深い好意を覗かせる時。魔法について話す時。森の外について話す時。私は意見を求められることはなく、理解も及ばない。
姉弟間でのみ通じ合い、父様や兄様、イズリアル様もが理解を示す暗黙の了解といった共通の空気の根拠に、私だけが到達できていない。その事実が深い溝となって私たちの間に横たわっていることを、この時強く感じられて、強い疎外感に苛まれたのだ。
「では、一人で何をしているの?」
ああ、詮索がましいことは言いたくないのに。問いを重ねた口調が挑むような険を帯びたことにシオネは気付いてしまったかしら。
「小さい生き物を観察したり、食べています」
シオネは私の後ろ暗い感情に気付かなかったようだ。気付いたとしても、それを表には出さなかった。黒い瞳に感情の起伏を乗せることなく、落ち着いた口吻で話を続け、終わらせた。(後にして思えば、落ち着きすぎていたような気がする。やはり意図的だったのだろう)
私は彼女の平静な口調で我に返り、友人に抱いたささやかな反発を長々と見つめることなく脇へ追いやった。
ちなみにその時にシオネが言ったことは本当で、彼女は犬の姿のまま食器に顔を着けて食事を摂ることに頓着しない。合間に小腹が空いたらその辺で果実なり虫なり小動物を獲って生のまま食べているようだ。
ようだというのは、私はその光景を目撃したことがないのだ。血の臭いのする生ごみを家の近くに残しておくと何を呼びよせるかわからないので、おやつの場所や後片付けには気を遣っているのだろう。
たまに私の目に触れた時には、シオネは獲物を前脚で押さえて、じっと見詰めているだけだ。そして、気が済んだらもがき疲れた哀れな虫なり小動物なりを口もつけずに放してしまう。
朝と夕の、家族四人揃っての食事時には皆に合わせて人間の姿で食卓に就くけども、日中の生活態度を見る限り、犬の姿でいる方がはるかに気楽だというのは確かなようだ。
彼女は、毛皮をまとった身一つで、どこにでも行く。
山の幸を採りに森に分け入る時には尻尾をふりふり、率先して茂みに突入していく。体全体で地べたに寝そべり、頭から小川に飛び込む。地に鼻をつけてにおいを嗅ぎ回ってはおいしい茸や芋の生えている場所やズラ(姉弟はウズラと呼んでいた。ズラだってば!)の巣穴を探り当て、前脚とお腹を土塗れにして穴を掘る。
汚れた時や濡れた時は体を振って汚れや水分を落とし、自分で玄関脇に置いておいた雑巾で足の裏を拭いて、野山の獣がするように自分の体を舐めて整えれば、彼女の身繕いは完了だ。
元々きれい好きな子なので、日に一度は小川でしっかり水に浸かって帰ってくる。
シオネが喜ぶだろうと建て増したお風呂場は、皆が身繕いを小川の水で済ませている今その存在感は薄い。大量のお湯で身を洗い浸すことのできるその真価は、冬にこそ発揮されるものだと私も理解している。今はその時に備えて薪を貯めている段階だ。
シオネ自身の清潔感はそれでいいとして、人が化身した獣にも夏毛冬毛の切り代わり時というものは訪れるようで、どうしても部屋や廊下の角に毛玉が生まれているのばかりは、さすがに責任を感じてか人の姿に戻って掃除していた。このようにしてこまめに人に戻っているせいもあるだろうか、家の中に獣の臭いが籠ったりすることもない。
シオネは夜眠る時も、犬型のまま床に転がって過ごしている。ふかふかの赤い毛皮は、初秋の冷やかさをものともしないのだ。
今も、敷物の上にすっぽり収まるように腹這いになって、前脚に顎を挟んだ恰好で寝そべっている。
自分の寝台に腰掛けていた私は、手元の書物から目を離して、シオネを見た。
尻尾だけが敷物からはみ出して木目の床を撫でているのと、後ろ脚が体の両横に中途半端に畳まれていて半ば投げ出された感がするのが、なんだか愛嬌があって可笑しい。胴の丸みとそれに沿う脚が描く柔らかそうな肉の盛り上がりが毛皮に包まれることで、なんとも撫でたくなる魅惑的な曲線を描いている。
ケイセイは姉のそんな姿をツキタテモチが潰れたみたいだと評していた。彼らの故郷独自の、とても柔らかくて弾力に富んだ食べ物のことだそうだ。
シオネの使われなくなっている寝台には、彼女が森の外から持ち帰った荷物が整理されて置いてある。
街で調達してきた衣類や、魔法を始めとした様々な学問の書籍や辞書が二山ほど積み上げられている。壁の上に頑丈な作り付けの棚を作らなくてはと話していたけれど、シオネは平気で床に転がって眠るので寝台が使われなくなり、うやむやのままに置き場となっている。
私が今読んでいる本は街のお土産ではなくて、今年初夏のシオネの誕生日に合わせてイズリアル様が贈られた娯楽本だ。ヴォジュラでは、紙は最低級のものであっても娯楽本が出回るほどには安価ではないと聞いている。わざわざ他領から取り寄せられたのではないだろうか。
内容は、さる有名な組合員の冒険譚を面白おかしく脚色して物語風に仕立てたというもの。森の外の雰囲気を窺い知ることが出来てとても楽しい。こういうものを覗き見ると、世界には本当にたくさんの人が生きているのだと思う。
興味深いのだけれども、私が森の外に出てみたいと言うと、家族皆が血相を変えて反対するので、よほど根深い問題が横たわっているのだろうと思い直して、皆を刺激しないことにしている。
なぜ私だけが森の外へ出てはいけないのか、そのことに関してなぜ皆がこんなに団結しているのかがわからなくて、その件についても私は蚊帳の外に置かれているような気がしていて釈然としない。
とにかく皆が連呼するのが、「森の外の人間は危険」だということ。
でもシオネはこの間森の外に滞在したし、ケイセイだって父様の許しが出れば街に行って組合員になってもいいと言われている。兄様だって外で仕事を得ている。危険度はむしろ姉弟の方が大きいだろうに、なぜ私だけがいけないのか、本当にわからない。
「ウルリカはあまりにも美しいので、混乱が起きてしまいます。狼の群れに羊を放つようなものです」「辛い目に遭ってから学ぶのでは遅いのです」と、姉弟が涙ながらに力説するその理由にどうしても納得がいかない。それからケイセイの狼と羊の例えは微妙に間違っている。
泣くようなことでは断じてないと思うし、シオネが「どうしても森の外へ出るなら、顔を取り換える方法を見つけなければいけません」とかなんとか、ぶつぶつと呟いていた。顔なんてどうやって交換するのかしら。
閑話休題。
シオネへの兄様の贈り物は子ども向けの教本だった。家族と先生と領主様に感謝しましょうとか、年長者と強い者は敬いましょうとか、お手伝いを積極的にしましょうとか、妖霊人の頭に触れることは種族問わず失礼にあたりますとか、ポンスカは通行の邪魔にならない場所に作りましょうとかの、主に一般教養の習得を資するもので、私には意味のないものだった。
そして、イズリアル様のご親族の方宅に預かりの期間中に教えていただいたという錬丹術の道具類。これが一番場所を圧迫している。
錬丹術というのは、製薬の調合時に魔法を掛け合わせて、治療効果の優れた薬やその他特殊な効果を持つ薬を作り出す技術のことで、私の記憶が確かなら、資格魔術師でなければ認可されない珍重な職能だ。
「シオネは、資格魔術師になったの?」
とある時尋ねれば、彼女は覚束ない表情で「きゅう」と一声鳴いて頷いた。「自分でもよくわからない。でもそうらしい」というところだろうか。
ケイセイは、「お姉様のことですから、バクハツを起こしたりサンギョーハイキブツをたくさん作るに決まっています」なんて言ってた。意味は分からないものの、多分あまりいい内容ではない。
どうしてだろう、ケイセイは最近、シオネに辛辣だ。せっかく四月ぶりに一緒に暮らせるようになったのに。きょうだいは睦まじくあるべきなのに。
私がハラハラしながらも深刻にならずにいられるのは、父様が笑って見ていらっしゃるからだ。声変わりの時と同じで、成長期の子供には自然に起こる精神的な揺らぎの時期なのだそうだ。
変ね、私は12、3歳の頃にそれらしいことがあった覚えがないわ。
ともあれ、今のシオネは肩の力がいい具合に抜けていて、自由そうで、日々の暮らしを楽しんでいるように見える。
それならいい。
日々のささやかな変化に戸惑っているのはきっと私だけではない。少なくともケイセイもだ。
今までは感じなかったちょっとした反発や戸惑いをうまくあしらえさえすれば、私たちはここで今まで通りに暮らしていける。
それがきっと、私が知らなかった、人と接するということなのだ。
私には不思議に思っていることが他にもある。
ビタとミンの仔ヤギが大きくならない。
生まれてもう一月経つというのに、生まれたての頃とほぼ変わらないのだ。どんな生き物でも、赤ちゃんは急激に体が大きくなるものだというのに。
それはそれで可愛いのだけど、仔ヤギのゴーディアスは少々人見知りする子のようで、残念ながら私は気に入ってもらえなかったのか、近づくと逃げられてしまう。
父様も怖がられているようで、ゴーディアスは父様には一定以上の距離を保とうと用心している。シオネを連れ帰ってきてくださった時に対面させた兄様とイズリアル様も同じだった。
シオネのことは、近くにいても逃げたりしないけれど、受け入れているというのとは違うようで、例えるならまるで空気のように気にならない存在とでも言おうか。
名付け親のケイセイにだけはとても懐いていて、彼の行くところにはついて行こうとするし、抱っこもさせる。
そのことについて、特に深い考えがあるわけでもなく話の種の一つとしてシオネに話すと、翌日から彼女は犬の姿のまま、ゴーディアスの様子を観察し始めた。
ひょこひょこ近づいて行ってつれなく逃げられたりしながら、合間に人の姿に戻っては、寝台の上の山から魔法に関する書物を取り出して内容を検めながら、何日も難しい顔をしていた。
「……というわけで、私はゴーディアスとケイセイを観察しました。そして、これは事故かもしれませんと結論しました」
そしてある日とうとう、家族が一堂に会した晩ご飯時に、その気がかりを発表した。
皆で食卓を囲む時は人の姿に戻るシオネの眉根には深い縦皺。ちょっと演技じみた重々しさで彼女は呟いた。
「ケイセイは、仔ヤギを自分の使い魔にしてしまったのではないでしょうか」
「まあ!」
「そうかもしれないな」
私は驚きで口を丸くした。父様は落ち着いた頷きを一つ。ケイセイはびっくりしすぎて言葉もない様子だ。
「チョイマチ……待ってくださいお姉様。ぼくもゴーディアスが大きくならないとは思っていましたが、ぼくのせいですか?」
シオネはなぜか魔人の首でも取ったような得意そうな顔で顎を逸らして、ケイセイを見下ろすようにしながら推測を述べる。
「ケイセイ本人にもそのつもりがなかったのだと思います。言うなれば誤作動です。私のような暴発とは種類が違いますが魔法の誤用です」
『うわそれすげームカつく。ねーちゃんと同レベルとかありえね』
ぼそりと付け加えられたケイセイの一言は彼らの言葉であるニホン語で呟かれたため、私には意味まではわからなかった。
シオネは、どうやら今ので話の腰を折られた形になるらしい。目を細めてケイセイを見た。
「ああ、シオネ。そんな険しい目つきできょうだいを睨むなんて、いけないわ」
「心配はしないでください、ウルリカ。射殺すような眼差し、などという言い回しがありますが、どんなに激しく睨んだところで何も殺せやしないのです」
「そういうことを言いたいのではないのよ」
「使い魔に関しては、父さんもいくつか見聞きした経験があるが、森の外で体系づけられている魔法のあり方については、よくわからない。折角だから、詳しく説明してもらえるとありがたいな」
父様が殊更にのんびりとした声音で、突然そう仰った。ありがとう、父様!
弟と喧嘩も辞さないといった構えだったシオネは、父様に感謝の目配せを送り、気を取り直して説明を続ける。
辞書と首っ引きで専門的な魔法の本を読み説いた彼女によると、使い魔の契約には、本来幾つかの段階と正式とされる手順があるのだという。それを全て省略して、手順の一つである名付けをした時点で契約を完了させてしまったのではないかということだった。
勿論、本来なら、ただ名前を付けただけでは使い魔の契約なんて始まらない。そんなことでは魔術師が家畜や愛玩動物に愛称としての名前を与えるだけで契約が成立してしまう。
それをうっかり可能にしてしまう事故が起こった、つまりケイセイの魔法が暴発なり誤作動なりしたのだろうというのが、シオネの推測。
「それもかなり早い段階でです。使い魔は契約が完了した時点で独自の生き物として完成します。仔ヤギの体がしっかり作られないうちにそうなってしまったので、ゴーディアスは大きくならないのです」
魔術師が手を加えて体を変質させたり強化したりということはできるそうだ。ただ、本来の生き物としての、自然な成長や老化をしなくなるのだという。
「じゃあ、使い魔の契約を解けば、ゴーディアスは普通の仔ヤギに戻って、再び成長し始めるってことかしら?」
「恐らく」
「あるいは魔術師か使い魔のどちらかが死ぬかだ」
父様が事実を補足するだけといった口調で付け加えられた条件に、私とケイセイは震え上がった。
「いやですわ、父様! そんな縁起でもないこと!」
「すまない。昔同じ理由で契約解除された実例を目にしたことがあったのでな。そういう方法も存在するということなんだ。他意はないよ」
「あっては困ります!」
「死ぬのは嫌ですが、どうやって使い魔にしたのかもわからないのに、元になんて戻せませんよ!」
「ケイセイ、そんなに頭を掻き毟っては頭皮を痛めるわ」
「ウルリカの優しさが今は違う意味で沁み渡ります」
がっくりと肩を落としながらもとりあえず手は止めてくれたケイセイの抗議に対し、シオネは落ち着いて問題を掘り下げにかかる。
「使い魔にしようというつもりはなかった?」
「ありませんでした!」
「代わりに何か強い思い入れのような気持ちを持ちませんでしたか? 気持ちを込めて。名前に意味を込めるような? ブツゾーに命を吹き込むような! 力強く明確なイメージを持って! 選びに選び抜いて!』
「……おう、それだ」
シオネの次第に高潮していく口吻は、途中からニホン語に変わっていた。
ケイセイの沈黙は、思い当たる節がある人特有の後ろめたい痛ましさが漂っていた。
結局、解除の方法を模索するにも当てもなく面倒、さりとて殺すなど論外ということで、ケイセイはゴーディアスの使い魔生に責任を持つことを決めた。
どの道魔法の腕を上げていくうちに使い魔も持ちたいとは考えていたらしい。理想の使い魔とは大分かけ離れているようだったけれど、生き物のことは思い通りにいかないものですからと割り切りよく妥協した。
なお、好奇心からどんな使い魔が欲しかったの? と訊いてみたら、どらごんやぐりふぉんなどのゲンジュー系の幼生という想像もつかない回答だった。少なくとも、私は知らない名前の生き物だ。
シオネが補足してくれたところによると、どらごんとは、水を司る太古の妖霊のような存在で、普段は深い淵に身を潜めている。時に雨雲をまとって空を駆け、河川や海の恵みや猛威を自在に揮う。家よりも大きく育ち、蛇をもっと大きくして手足や鬣を生やした威厳ある姿にしたような見た目らしい。
するとそこにケイセイから待ったがかかった。
「違います、お姉様。それはニホンのリュウです。ぼくの言うどらごんはセイヨー的です。四つ足で、岩剣トカゲをより厳めしくしたような見た目です。火やいかずちを吐きます。高い山の頂上や古い砦の跡に住んで、沢山の財宝を貯め込んでいる孤高の生き物です。非常に知的で、魔法にも詳しいのです」
シオネとケイセイの言うことを聞いていると、全く違う生き物について説明されている気になってくる。それだけ多面的な生き物だということなんでしょうけれど、とにかくすごそうだということしか伝わってこず、結局、二人の意見のどれが正しいのかはわからなかった。
父様が身を乗り出して尋ねた。
「ぐりぽんというのは、なんだ?」
「猛禽の頭部と獅子の体を持つ珍しい生き物です。人の入れない険しい岩山につがいで巣を作ります。風に親しみ、鋭い嘴と爪で空から襲いかかります。これに抗することのできる生き物はほとんどいません。戦闘力の高いゲンジューです」
「ゲンジューとは?」
「希少で、魔法の力を備えた生き物のことを、ぼくらのふるさとではそう呼んでいました。ここでは、魔物とされているかもしれません」
「ふむ」
「そんな一般的な知識だったとは私は知りませんでしたね」
シオネの声はちょっと冷たかった。咎めるような気色さえある。ケイセイは素知らぬ顔で向こうを向いた。
父様はしばしの沈思の後、おもむろに口を開かれた。
「ぐりぽんと同一の種かどうかはわからないが、フォルフォスティという名の野獣がそれに近い外見と生態を持っている。このヴォジュラ最西端のウルク・ベルクの山々の高所に住み、魔物化しやすく、ゆえに風の魔法を使いこなす個体も多い。それのことかもしれないな」
「グリフォンがいるのですか!」
喜色にあふれて身を乗り出すケイセイに素っ気なく水をさす人がいた。
「残念でしたね、弟よ。もしどらごんやぐりぽんがいても、あまり大きな生き物は使い魔にはできないそうですよ。フェルビーストの女王様がくれたこの本によると、自分の半分以上の重量を持つ生き物は駄目だそうです。自分より大きい生き物などもってのほかです。ヤーイ、ザマミロ』
『じゃかあしいわ』
シオネったら、今まで魔法に関しては優等生だった弟が失敗をしたことで余程胸が空いたみたい。実は相当鬱屈していたのね……




