ワインレッド
少し幼い、
*
最近、あいつがおかしい。
あいつ、というのは幼なじみの祐馬である。
まあ確かに少し前から昔に比べて格段におかしくなってたけどさ。
祐馬は高校に上がってからというもの、何があったのか『不良』というヤツになってしまった。とは言っても軽い素行不良なだけで、元からの変なところでの堅さは抜けていないけれど。たとえば、服装は絶対乱さないとことか、宿題はきっちり終えることとか(ただし提出はしていない)。
……それでも、私を無視したりは、今までなかったんだけどなあ。
「おーい、祐馬あ」
「…………」
「聞いてるー?」
「…………、」
「今すぐ返事しないとシバくよ」
「んだよ」
とまあ、いつもこの調子。
今は祐馬が席に座っていて、私が後ろに立っているから、見下ろす構図がなんか新鮮。祐馬は振り向かない。
「先生がまた呼び出してたよー?
ってか、提出物も解いてるくせに何で出さないのよ」
怒られるの分かってるくせに、と言っても、うるせー、と返ってきただけ。前までだったら、「それよりさ、」と会話がいろんな方向に飛び火してたのに。なんか悲しいなー。抱きついてやろうか、小さかった頃みたいに。
よし、そうするか。
「うりゃっ」
「は? っわ、」
ぎゅううう。
背中から思いっきり抱きつく。うんうん、前は私の方が背が高かったから、よくこうやって抱きついてたっけ。
「っ、何してんだ」
「見たまま。昔懐かしく抱きついてる」
んーっ、落ち着く、と言うと、心外なのか祐馬の眉間にしわが寄った。
「気安く男にんなことするな」
「あれれ、やきもちー?」
「違えよ」
「大丈夫大丈夫ー、祐馬にしかこんなのしないし」
大丈夫じゃねえよ。
そう聞こえたのは気のせい?
「ねー祐馬、」
ひねくれてないで、素直になってよ。
そんな私の心の言葉が聞こえたのか、赤い頬を隠すように、祐馬は肩に乗せた私の頭をぽんぽんと撫でた。
しょうがないなあ、もう少しだけ、待っててあげよう。
(真紅まで、あとすこし)