家康
なし
茶色
というか
黒というか
濁った水面を
白波を立てて船はすすんでいく
家康は
江戸を開くときに
運河を造らせ
物資輸送の鍵とした
アナウンスのテープが
ひとけのない
船内に漂う
なぜか
日の出桟橋から
水上バスに乗った
隅田川を北上する
桜の季節なら
素晴らしいだろうに
夏休みを過ぎた今
乗客も多くはない
端からみたら
われわれは
どのように見えるか
あぶれものと
水商売の末路
しばらく行くと
近未来的な
高層ビル群
オフィスでなく
マンション
走りはじめの
あのころ
話題になった建物
今でも
億ションなのか
ついついハウスメーカーの
くせがねけきらない
そして
左手に大きな
ホテル
話題のアニメ原作者と
建設会社が作ったホテル
入ってみたいと思わせる外観
ただところどころくすんでいる
経営は悪いらしい
東京で降り
船に案内されたが
那緒さんは
相変わらず眠っている
終着点についた
着いた途端に
生氣を取り戻したか
やっと那緒さんも
しゃきっとしてきた
那緒さん
私たちはどこに行くのですか?
降り場からタクシーに乗る
運河から見た
ホテル
正面に横付けされた
那緒さん
緊張の面持ちで
お金を払い
正面玄関をくぐる
那緒さんは車中も無言で
何も聞かされないまま
それに続く
ホテルに面食らうが
なんのことはない
ホテルに連なる
オフィスに
向かうようだ
何が始まるのか
なし