マックスやまびこ
なし
これしかない。
なぜかそう思った。
アルマーニ
本当に
久方ぶりで袖を通した
くだらないが
取っておいてよかった
漫画も買えず
質草にしようと何度思ったか
そして、
勝負の時は
サングラス。
あのサングラス。
自分にはこれしかないのだ。
駅前で待った
ちょっと見は
あちらのお方。
昔の通りだ。
自分で自分の姿を想像して
笑ってしまう。
その姿に
いつも見慣れない人物に
通勤客の動揺が走る。
スキンヘッドに対する
世間の対応に
改めて感心した。
世の中は変わってない。
そして、
音もなく
5分前に彼女はやってきた
はじめは誰だかわからなかった
しかし面影はあった
派手さはない
偽りのない姿
質素な服
そんな姿に思わず
偽る自分が
恥ずかしかった
おはようともごもご言った後、
切符代はと思って
券販売に向かおうかと思ったのに
いきなり改札に
向かう那緒さん
見れば
私の分まで買っている
お礼も言いそびれて
黙って
エスカレーターで
ホームに向かう
彼女は何も話さなかった
お盆の過ぎた
平日の
マックスは
想像以上にがら空きだった
本当に
すいていた
車両は1階だったが
壁の境界ぎりぎりに
見える首都圏を
見ながら
久方ぶりの
都会に自分でも
びっくりするくらいに
興奮した
窓の光景ばかり氣になって
なにもしゃべれなかった
山頂と一緒だった
那緒さんは
疲れたように眠っている
その
無意味に
つかれた表情から
なぜか小学生の時に
15参りで行った
菩薩のお寺を思い出した
2時間もかからずに
東京についた
しばらくして
上野へもぐった
暗いトンネルの
蛍光灯を見ながら
これからどうなるのか
窓に映る自分の顔を
みながら
あせった
しばらくして
自分にとっては
久方ぶりの
東京駅に
車両は
滑り込んだ
なし