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ハイヒール
なし
夜が完全に明けた
ぎらぎらとした太陽が
今日の暑さを予想させる
大粒の汗が額にうかぶが
狂ったように
タイルを磨いた
はじめはデッキブラシを
倉庫の奥から探しだして
磨いていたが
力の加減が中途半端に感じで
店にあった
新品のたわしで
はいつくばって
タイルを磨いた
いつの間にか
街路樹の陰が出てきていた
そして
何かに取り憑かれたように
店の間口分のタイルを磨いた
氣がつくと
通勤ピークの時間であった
鬼氣まじりに
一心不乱にタイルを磨く
私を
皆、
避けて通っていった
恥ずかしいとか
みっともないとか
そんなことは
思わなかったが
やたらと
足下の
ハイヒールやら革靴が
目に入った
磨いたタイル地は
輝いていた
丸の内や
銀座にも
負けない足下
何か勇氣がでた
通勤客が
あらかたいなくなってから
道路にうつった
歩道の道路よりを
竹箒で丁寧にはき
水を流し
さらに先ほどのたわしで
かがんで
みがいて
そして、清めた。
排水溝の入り口も
同じようにして
ぞうきんで
鉄の格子状の棒をふいた
午前中いっぱいかかって
両隣3軒の店頭を
きれいにすることができた
何かが動き始めた
かわりはじめた
なし