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婚活戦線異状あり 冬の陣  作者: 玲於奈
18/23

タンポポ

なし

配置された当初は

ロータリーが頻繁に来て

業者が水やりをするなどして

手入れされていたものの


今年の猛暑による

頻繁な水やりで

予算がきれたのか

枯れてしまった花々

白いプランターに緑字で

「げんきな よびかけ あいさつ運動」

人権団体のもの


そしてわが市が誇る植物園

そこのぼたんを

イメージした観光協会のプランター

あわいピンク

薄紅

水色など

とてもおしゃれ

だがこちらも枯れている


最後が石組みをイメージする

重厚なプランター

よく見ればそれは

プランターに貼られたシール

電車会社の

東北復興キャンペーン


何よりあるものから変えていこう

変革、チェンジ。と思い立ち

植え替えを始めた。


一番弱っているプランター。

よく見ると枯れた花の間にゴミがある。

くさった匂いもする。

じょうろで水を持ってきて

土を湿らせてにぎっても

ぼさぼさ

マラソンコースの畑とは大違い

見た目もまったく

おいしくなさそう

花も株も弱っていて

草姿のバランスもひどく悪い

根腐れして枯れている

思い切って弱った草を出し

剪定した


さらに水をかけてもべちゃべちゃだ

土のリサイクル

よい土の入手法を考えねばならない


日課の早朝マラソンをし

土や苗の入手を頭の中で模索しながら

いつもの掃除が

駅前のロータリーにかかった時だった


昨日途中でやめたプランターの手入れに

とりかかろうとしたら

おばちゃんの一団に囲まれた

そう思った瞬間

一斉射撃。


「もとにもどしなさい」

「あなたのしていることは法律違反です」

「植えた人のことを考えなさい」


言葉がダーツのようにつきささる


機関銃のような言葉の雨に

呆然。

人間いきなりの不意打ちには

対応できない。

反撃とばかり

体勢を立て直そうと

したところ

さらに

おばちゃん軍団との

間合いがつめられ

圧迫感


しかたなく

「すいませんでした」


深く頭を下げた。

負けた。

突然すぎて負けた。


おばちゃんは、

そういう手法なのか

輪が解かれ

寄せた波はあっさり引き

どこかへ消えた。


今まで何もしないでおいて

花が元氣になってから

元に戻せとは

嫌がらせ以外の何ものでもない

そんなことで

何が人権団体だと

毒づきもしたが

さすがにこちらにも

非がある。


許可無く変更したという点を

つかれると弱かった


次の一手が打てずに

何もできない日々が続いた。


現状を打破するきっかけが

間もなくやってきた。


いつもより寝付けなくて

早朝が午前になって

市営団地をマラソン中

5歳くらいの茶髪の男の子が

追いかけてきた


「幼稚園でかけっこがある。

 だから僕走ってる。

 おじさんも走ってるんだね」


「家から離れたらあぶないよ」


さりげなく注意したが


「へいき、へいき

 団地のまわりを

 ぐるぐる走っているだけだから

 大丈夫」


とVサインをだしてきた

その日は別れた。


後で、

その子が氣になって

次の日また行ってみた

茶髪が走っていた


追いついて

脇を走った。


男の子が疲れて

併走できなくなって


何かを私にわたす

手渡されたものは

道路に転がっていた透明なビン

それに白と黄色の花がつまれて

さされていた

思わずバトンのようにうけった


男の子はスピードが落ちて

立ち止まってしまった

そしてバトンのように受け取って

走り去った。


途中で

氣になって振り返ると

茶髪は、手を振っている


しばらく

透明なビンに入ったタンポポを

みながらゆっくりと走った。

何かを思いつきそうだった。


思いつきを実行するより先に

婚活教室もとい青年教室の

薄っぺらなはがきが届いた


サマーキャンプから

1ヶ月であった。




なし

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