北への逃避行
なし
タワーからの
オートジャイロ。
アニメの見過ぎか
でも自分では
その氣分。まさにあの音楽だった。
外に出て
見覚えのあるところだと
思ったら
体が勝手に反応した。
犯罪者の様に
細かい路地をたくみに抜け
息せききって
思わず走りやめたところは
あの
佃大橋だった。
渡りながら氣づいたのは
あのまままっすぐ勝どき橋へと
つっこんでいたら
昔の習い、
もんじゃストリートに
突入するところ・・
自分にあっぱれ
新人研修の土地勘が役に立った
しかし、敵もさるもの
財力にあかせて
今頃は・・・
追われる身。逃亡者。
私の身元もすでに割れているやもしれない
そんな危機感におびえながらも
息せき切った
心では、あれだけの
ボスキャラを相手にあっぱれ。
自分で自分をほめてあげたい。
そんな高揚感でいっぱいだった。
しかし、
果たして
無事に生きて祖国を踏めるのか
その想いがよぎる
犯罪者
逃亡者。そして、北への逃避行。
失意、転落、北の海に・・
お氣まりのパターン。
そして、そんな心中に関係なく
今日も真っ赤な太陽が
昇る。
まだ6時というのに
もう蝉はわんわん鳴いている
なんのことはない
いつもの日常
まったくもって変わらない
今日も、1日に二度しかない
毎度の駅前の枯れ山のにぎわい
本当に、本当にまったくもって残念だが
日常なのだ。
雑魚はヒットしなかったのか
それとも
想定外の人物か
東京駅での張り込み、取り押さえを想定
用心し
上野駅の長い下りエスカレーターを
ややうつむき加減で足ばやに地下に潜り
ミッションインごとく
いつでも
銀色の路側帯を
滑り降りるイメージし
背後からの危機にそなえた
乗車の新幹線でも
たくみに自由席の場所を移動
その様子はまさに不審者
車掌はさぞかし迷惑だったに違いない
そして一夜明け今、私はここにいる
片手にほうきを持ち
朝日を眺める
眼下には荒涼とした光景。
なぜなら
あれだけ、頑張った作業も
数日でこのありさま
しかたなく
もう一度
なめるように竹箒でゴミや砂をとる
そのありさまは、
砂上の楼閣のよう。
ただただ、黙って取り除いた。
なし