早慶戦
なし
思わず那緒さんの手を
引いてしまった
棒人間のデジタルを
みながらあわててその手を引っ込め
そんな自分に赤面した
下りの重力に
よろめきながら、ここが勝負と
意を決し
那緒さんの
うるんだ眼をみつめる
勝負あったか
昼ドラ効果
ついに、ついに本領発揮か
チーンという音ともに
下界へ
「私、どうしても
今日会わなければいけない
女友だちがいるの。
これ、帰りの切符。」
うるんだ涙もなんのその
いきなり手渡され
こちらを振り向きもせず
足早にビルを後にする那緒さん
てっきりキスをするじゃないか、
もしかして結婚かと思いきや
「やはり男は
男友だちの友情を大事にする」
那緒さんもそうなのか
そんな時、
女は、その友情を励まし、あたたかく応援する
自分の役まわり
どっかの純愛連続ドラマのようだ。
男女が逆転。
想いにひたる間もなく
プライドのお達し
金の力
いかつい警備員がこちらに
全力で走り寄るのを見て
今、
自分が取り残されて
おとりになって逃げ遅れたことに
氣がついた。
毎度毎回、思うけどいつも最後は
こんな役まわり。
ロビーの客も
周りも巻き込むかのように
派手に笛をならし
大声をあげて威嚇する警備員が
スローモーションのように
見えてしまった
果たして
手中の
この切符、払い戻し可能なのか
取り押さえようと必死に
タックルしてくる
ラグビー部をかわしながら
帰りの電車賃ばかりが氣になって
頭で計算した。
なし