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婚活戦線異状あり 冬の陣  作者: 玲於奈
10/23

完全試合

なし

高層階に向かう

エレベーター

デジタルの棒が

階をきざんでゆく

全面ガラスからは

先ほどの水上バス

きらきら輝く川面が見える

空から見れば

なんとやら・・・


まぶしい陽光の

いや熱線のふりそそぐ

温室のようなエレベーター内


川面を見ながら

那緒さんが押し殺したような声で

つぶやく


「婚約者のふりをしてください」


那緒さん、何を言い出すのかと思ったら


ガラスを見上げてしまった

くすんだ東京の空を

久しぶりに眺めながら

まさに、絶句。


「東京ですよ。おっかさん」


ここまで来て、

ふりですか、那緒さん。


「私は、これから何をするのでしょう」


そう聞く間もなく

デジタル棒が止まり

音もなく扉が開く


ああ、絶景かな、絶景かな

大見得の千両役者。

桜は咲かないが

金持ちの世界がぷんぷん匂う

そこは落ち着いた

深赤のじゅうたん

イタリーの超有名な

香水の匂いがする


つきあたりの

重そうな扉を開けば

さらに東京の街並みが広がる

今話題のタワーが圧倒的な迫力をもって

全面に展開する


執務机

応接セット

舶来の高級感よりも

空の高さ

支配感に圧倒された


「よく、ここに来れたな」


軽蔑しているのか

楽しんでいるのか

ソファにだらしなくすわる

男が歌うように言う


ここまで明るい原色がよく着こなせると

感心するシャツ姿で

足をソファに投げ出している男


サイドボードには

ワインと思われるグラス


酔っているかと思われたが

私が近づくうちに

イタリー製のスーツを

はらりと着て

居ずまいを素早く直す


先ほどの原色も

紺地にはアクセントとなり

戦闘態勢。


はなから

財力では

全く勝ち目はない

付け加えれば、ルックスも


那緒さん、

あなたは何を考えているのですか

こんな、勝ち目のない完全試合。

なし

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