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戦う少女  作者: 葵かずさ
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第一話・出動!



「お嬢、時間です。」

ノックもなしに部屋に入ってくるなり彼は言った。

「わかったわ。今行く。先言ってて」

それに答えたのは、先日十七歳になったばかりの少女だ。

「了解です。皆、下にいますから」

そう言って彼は、踵を返し部屋を出て行った。

下というのは、階下にあるロビーのことだ。

彼らが集まるのは、あそこぐらいだ。

まぁ、他の部屋じゃ狭かったり、広すぎるのであそこが丁度良いのが事実なのだが。

それを確認すると彼女は、隣室へある物を取りに向かった。



「お嬢!今日も頑張ろうぜ!」

彼女がコツコツと靴音を立て、階段を下りていくと、そこでは二十人ほどの男たちが彼女を待っていた。

皆、彼女の舎弟である。

「セオラス。この間の傷は大丈夫?」

一番先に彼女に話しかけてきたのは先程彼女を呼びに来た青年の弟である。

彼らは三人兄弟で、皆ここにいる。

もう三十に近い長男のラウール。

先程彼女を呼びに来た二十代半ばの二男のディール。

そして今彼女に話しかけた二十代前半の三男のセオラス。

彼らはこの中でも群を抜いて強い。

「ああ!お嬢が看病してくれたからな!」

「ほんと?よかった…」

彼は先日、カンナをかばい、こめかみ部分を切られてしまったのだ。

幸い、傷は浅く、早く治るとされていたのだ。

それでも、自分をかばってできた傷だから、申し訳ないと数日間毎日看病していたのだ。

「セオラスさんいいなぁ。お嬢に看病してもらって。」

二人のやり取りを聞きながら、一人が口を開いた。

セオラスを兄のように慕っている、レンという十五の少年だ。この中で最年少だ。

「ふふん。いいだろ?お嬢を守ったご褒美さ☆ま、レンには無理だけどな」

「なっ!?俺だってチャンスがあれば…」

「そのチャンスが回ってこないんだよね。レン残念」

今度はまた別の青年がレンに言う。

「アレックス!お前にだけは言われたくないね」

レンにアレックスと呼ばれた青年は、二十歳を超えたばかりで、明るい青年である。

真っ黒な髪と瞳の彼は、いつ見ても、身だしなみが整っているうえ、些細なことにも気が回る。

この中で、一番きれいだといえるだろう。この中では、二日ぐらいは風呂に入らないのもいるのだ。

「え~何で俺だけ?」

アレックスは少し残念そうに聞く。

するとレンは…

「俺より弱いのはお前しかいないからだよ!」

そう叫んだ。アレックスは、笑顔で一言。

「そうかな?」

「……?」

首を傾げたレンに、アレックスはただただ微笑んでいた。

これ以上黙っていると、さすがに終わりそうになかったので、皆が見渡せるように、階段を数段上った。

「みんな!今日も頑張るわよ!」

カンナはこぶしを握り、上に上げた。

すると、二十人近くいる男どもは、皆、カンナに続いた。

「おお!」

「お嬢は俺が守りますっ」

なんていうレンの声もしたが、すぐに、お前には無理さ☆というセオラスの声もした。

「今日は南地区を制圧するわよ!今日彼らは、南地区に集まるそうよ。」

「お嬢はいつも、何でも知ってますね!」

と、ディールが褒めてきた。しかしカンナは、ちょっぴり残念そう微笑んだ。

「これはラン姉の情報よ」

それに、ラウールは強く反応した。

「えっ?ラン嬢が!?」

「ええ。戻ってきたの」

「マジですか!いまはどこに?」

「…今朝、どこかに出かけちゃって……」

「…………そうですか」

ランは、カンナの年の離れた姉で、カンナが幼いころに亡くなった母親の代わりもしてくれていた。

半年ぐらい前に、旅に出て行ったのだが、昨晩帰ってきた。

と思ったら、また今朝出かけて行ってしまったが。

「でも、旅道具は全部家にあったし、ほとんど何も持っていってないと思うから、すぐ帰ってくるわ。」

「……」

ラウールはよくランを気にしている。理由はわからないが…。誰に聞いても教えてくれないのだ。

ラウールは、少し悲しげだ。

「ラウール?どうしたのよ」

カンナが聞いてきたのを遮るようにディールが小声でラウールに話しかけた。

「おい、兄さん。お嬢の前でそんなにしょんぼりするなら、お嬢に話しますよ」

途端に、ラウールは顔を赤くした。

「そ、それはっ…」

「いやなら、せめてお嬢の前ではニコニコしていてください。後で何しようが構いませんので。」

ディールは、目を細めていう。その威圧感に、とうとう耐え切れずにラウールはうなずいた。

「わ、わかった…」

「さ、早くにこにこしてください。お嬢が心配しないように。」

ディールはそこまで兄だけが聞こえるようにしゃべっていたが、兄がうなずいたのを確認すると、カンナの前に来て、少し頭を垂れた。

「ディール…」

「申し訳ありません、お嬢。もう大丈夫ですので。」

「…、ならいいんだけど……」

この中で、ディールだけは言葉遣いが綺麗なのだ。

「はい。」

有無を言わさない微笑みで言われ、カンナは答えれなかった。後ろでは、ラウールもどこか不気味に笑っている。

少し引いたが、何も突っ込まないことにした。

気持ちを切り替え、カンナは、行くわよ!と叫んで男たちの先頭に立ちロビーを出て行った。


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