異世界から召喚したのは“眠いの聖女”でした。
その日、教会の空気は張り詰めていた。
日々の祈りのための祭壇や椅子が片付けられた床には、召喚陣が描かれ、周りを聖女達が不安の表情で手を組み膝をつき力を注いでいる。
「……本当に行うのですか」
老いた神官の問いに、第一王子レオナルドは頷く。
「筆頭聖女アステリア、そして偽聖女フローラ……主力だった2人の聖女が欠けた我が国の結界維持は限界だ。聖女に目覚めたばかりのルナマリアには荷が重い」
「ですが、異世界からの聖女召喚は、あの完璧なアステリアでも成功させた事はなく──」
「それでもやるしかない」
緊張した空気の中、聖女達が祈りの言葉を捧げる。
やがて眩い光が広間を包み──。
次の瞬間。
「……ふぁ……」
召喚陣の中央に、ふらふらと立つ少女が現れた。
ボサボサの黒髪。
閉じた目の下には濃い隈が出来ている。
そして。
「……ねむ……なに……?」
ふらり。
少女は今にも倒れそうに揺れながら、懸命に目を開けようとしていた。
必死になり過ぎて白目になっている。
「私達だけで、召喚に成功した……!」
歓声を上げる聖女達。
しかし、召喚された聖女の顔を見た瞬間、老神官が顔色を変えた。
「ま、待て……黒髪……隈……あの顔……まさか……!」
少女が、小さくあくびをした。
その瞬間。
ドゴーン!!
メキャメキャメキャメキャ!!
教会の外から爆発音と謎の破壊音が響き渡る。
老神官が、掠れた声で叫ぶ。
「彼女は “眠いの聖女” です!」
「えっ、眠い?」
「彼女を眠らせてください!教会どころか王国……いや、地上が滅ぶかもしれない!!」
目を開ける事を諦めた少女は閉じた目のまま、ふにゃりと笑うとその場で横になった。
「……ふぁ~……だめだぁ~……」
バギャーン!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
再び、教会の外で謎の破壊音が聞こえる。
老神官は慌てて聖女達に指示を出した。
「コレット!最奥の部屋へ“眠いの聖女”様を案内!」
「わかりましたぁ!」
「ルナマリア!!部屋に着いたら“眠いの聖女”様に防音魔法!出来るな?!」
「は、はいっ!!大丈夫です!」
「寝かせろ!!一秒でも早く──!!」
「おやすみなさい……スヤァ」
メメメメタタァーーンッ!!
「今の音は何を破壊しただーッ!!」
指示を出し終えたところで、老神官の精神は限界を迎え、その場で失神した。
こうして召喚された “眠いの聖女” は、眠くなるととんでもない質量の聖女の力が暴発するため、睡眠不足厳禁で全力で寝かしつけられた。
ルナマリアと猫達との聖女の儀式、忘れていた第一王子レオナルドとの約束、祖母と母親も“眠いの聖女”だったというお話はまたの機会に。
─続く?……zzz─
相変わらず、眠たがりなの当方です。
“眠りの聖女”ではなく“眠いの聖女”。
「り」と「い」で大分違うと思ったところからお話を考えました。
2026年5月頃、名前等の設定、起承転結、書きたい部分の下書きをChatGPTに、冒頭部分をメモ帳に保存したまま放置。
2026年9月になり、メモ帳の下書きを清書したところ、ChatGPTへ壁打ちしていた陽愛(眠いの聖女)と性格が真逆になっている事が判明。
同じく下書きで放置中の話(筆頭聖女アステリア視点)に出る新人聖女のコレットが予定外に喋り出したりと、収拾が付かなくなったので強制終了し、冒頭のみを投稿しました。
大筋は出来上がっているので、放置中のお話も含めて、のんびりと完結させようと考えています。




