表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/11

圧倒的感謝の代償@7

アホすぎてスルーするとこだったが


「……女神と2度呼ぶでない貴様、よりによって……くそ女神と一緒にすな。女性を褒め称えるならほかにもあるだろうが女王とかサキュバス様とか」


 ラサが吐き捨てた瞬間、その漆黒の角が、体温の上昇に呼応するように淡いピンク色に発光した。

 だが、ポンコツこと勇者は彼女たちの「サキュバスとしての不快感」に気づく様子もない。ただ、涙を流しながら琥珀色のスープを聖水のように吸い上げていた。


「何度でも言う!俺は今、このヒレのために、世界の半分を敵に回す覚悟ができたぞ!! おお、サメよ! 俺を導けえええええええ!!」


「「「…………(スンッ)」」」


 個室に訪れる、再度氷のような静寂。

 三姉妹は本当に確信した。


この男、救いようのないアホだ。


やはり安易に拾うものではなかった。



 だが、当のポンコツは空になった土鍋を見つめると、震える手で隣にいたラサの両手をガシッと握りしめた。



「ラサ! 感謝する! 貴様こそが、俺をこの『黄金の真理』に導いた真の導き手だッ!」


「……っ!? 『様』をつけなさいと言ってるのよ! ……ちょ、ちょっと、何すんのよバカっ! おい、急に触るなと言って――」


 ラサが突き放そうとした、その時だった。


「――っ!?」


 ラサの喉から、甘く、切迫した悲鳴が漏れた。

 勇者の分厚く、熱を帯びた掌に包まれた瞬間。彼女の手首から先が、まるで内側に強烈な光源でも仕込まれたかのように、琥珀色の光を放ち始めたのだ。


「……あ、あつっ……!? なに、これ……おい、貴様の手、どうなって……っ!」


 ――ピリッ。

 ラサの視界の端で、【88のダメージ】という赤い数字がポップアップする。

【状態異常!えろがる1の快感】の青い数字の

ポップアップも


「む? 大丈夫ですか!? 強く握りすぎてしまいましたでしょうか!? 申し訳ありません! つい感謝を伝えたいあまり……!」


 勇者は戦慄し、椅子から転げ落ちるようにして床に膝をついた。そのまま、騎士の儀式にも似た鋭さで、深々と土下座する。

 だが、その圧倒的な「感謝」と「謝罪」の純粋すぎる熱は、殺意に近い純度でラサを侵食していった。


(なんなんだ、コイツは……!?)


 ラサの薄いドレスから覗く鎖骨が、激しい呼吸で上下する。

 激痛と同時に、これまでのどんな男からも味わったことのない「清冽な快感」が、背筋を突き抜けていた。


この世界の人族はみんなこんなんか!?


 信じられないことに、このポンコツに触れられている箇所から、彼女の腕は朝靄に溶ける幻のように、個室の壁紙を「透過」し始めていた。


「……ラサ? ちょっと、あなたの腕、透けてる……!?」


 ミーネが震える小声で悲鳴を上げ、椅子を蹴って立ち上がる。ララァもまた、好物の杏仁豆腐をスプーンから落として目を見開いた。


「嘘でしょ……。個室の照明が、ラサ姉の体を通ってるにゃん……!」


「……っ! 溶ける……っ、体が、内側から『清らかな何か』に溶かされそう……っ!!」


 浄化の光に晒され、ラサの肌は白磁よりも白く発光し、その輪郭が揺らぐ。

 あまりの熱量に彼女の瞳は潤み、理性とは裏腹に、その指先は勇者の逞しい手の甲を、縋るように強く掴み返していた。


「……あ……っ、やめ……おい、ポンコツ…………っ」


 ラサは絶叫に近い声を上げ、最後の理性を振り絞ってポンコツの手を振り払った。

 突き放された勇者は、額を床に擦りつけたまま、慄き震えている。


 琥珀色の光は霧散し、ラサの腕は実体を取り戻した。だが、彼女は激しく肩で息をし、顔を真っ赤にして、熱の残る自分の手首を抱きしめるように押さえた。


「怪我させてしまった!? 病院に行きましょう、もしくはすぐ薬局へ行ってきます、それともこの店のスタッフを――」


「バカにゃん!? サキュバスが病院なんて行ったら即・解剖だにゃん!」


 ララァが鋭くツッコミを入れるが、パニック状態の勇者の耳には届かない。


「……申し訳ありません! この命に代えても――」


「ボケェェェ!! この天然ポンコツッ!! 帰るわよ、お会計ッ!! ポンコツ、貴様はさっさとスタッフを呼んでこい!!」


 勇者を渾身の力で蹴り飛ばし、ラサは逃げるように個室を飛び出した。

 残されたミーネとララァは、慌ててマジックバッグからポーションを取り出し、姉の背中を追う。


「……魔力も流したし、大丈夫だ。……しかし、なぜダメージを受けた!? なのに、この得体の知れない高揚感は……なんだ、アイツは……」


「……ええ。あの時のラサ……今まであんな顔、見たことないわ」


 そんな妹たちの戦慄を知ってか知らずか。

 勇者は呼んできたスタッフと一緒に、消え入りそうなほど申し訳なさそうな顔で戻ってきた。


会計を済ませ

 三姉妹の「消滅の危機」は、こうして盛大な勘違いと共に、夜の銀座へと舞台を移すのであった。


!?


このポンコツ

ただヒモでは!?


20時に

もう一話

投稿予定です


良ければブックマーク

よろしくおねがいします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ