第9話:深淵の谷と、変異の新種
ギルドの外、朝霧が立ち込める街路。
俺たちは馬車に揺られ、深淵の谷へ向かう。
窓から見える風景が、次第に荒野に変わる。
風が土埃を巻き上げ、乾いた土の匂いが鼻をくすぐる。
カイルが地図を広げ、指でなぞる。
「谷までは、二日かかるぜ。
途中で、変異種が出るかも」
エラが杖を磨きながら、言う。
「英雄たちの隠し遺産……谷の底に眠るらしいわ。
セレナの氷の遺産、かも」
ミアが本をめくり、頷く。
「記録によると、英雄たちがヴォルガノスの一部を封じた場所。
そこで、真実がわかるはず」
俺は槍「竜穿」を膝に置き、窓外を見る。
英雄たちの過ち……狩りすぎた代償。
今、竜が溢れ返る世界。
「俺たちが……バランスを取る」
馬車が止まる。
夜営の時間。
キャンプファイヤーの炎が、パチパチと音を立てる。
星空の下、俺たちは輪になって座る。
カイルが肉を焼き、香ばしい匂いが広がる。
「新入りだったお前ら……今じゃ、立派なパーティだな」
エラが小さく笑う。
「あなたもよ、カイル。
最初は警戒してたのに」
ミアが湯を注ぎ、薬草茶を配る。
温かい湯気が、顔を優しく包む。
「英雄たちの伝説……私たちの血に流れてる。
でも、過ちを繰り返さない」
俺は茶を啜り、言う。
「家族を失った恨み……でも、それだけじゃ勝てない。
みんながいなければ、ここまで来れなかった」
絆の言葉が、夜の静けさを温かく満たす。
夜明け。
馬車が谷の入り口に着く。
深淵の谷。
崖が切り立ち、底が見えない。
風が渦を巻き、寒気が肌を刺す。
カイルがロープを固定。
「降りるぜ。
気をつけろ」
崖を降りる。
岩肌がざらざらと手をかすめ、埃が口に入る。
途中、霧が濃くなり、視界が悪くなる。
エラの光魔法が道を照らす。
底に着く。
谷底は、暗く湿った洞窟のような空間。
苔の匂いが濃く、空気が重い。
ミアが本を照らす。
「ここ……封印の間」
壁に古い扉。
エラが魔法で開く。
中は、祭壇。
中央に、氷の結晶。
セレナの遺産。
【氷の守護石】(氷属性強化、耐性UP)
エラが触れ、杖に組み込む。
「これで……魔法が強くなる」
だが、部屋が揺れる。
地面から、根が伸びる。
変異種の新種――岩殻亀竜の進化版。
【石竜亀】
甲羅が岩のように硬く、背中に竜の頭が複数。
咆哮が谷を震わせ、土埃が舞う。
「来る……!」
カイルが弓を構え、【空中追尾】で矢を放つ。
矢が頭を狙うが、甲羅に弾かれる。
エラの【氷の嵐連鎖】
氷の嵐が連鎖し、甲羅を凍らせる。
凍った部分がひび割れる。
ミアの【集団バフ】
緑の光が俺たちを包み、速度と耐性を上げる。
俺は槍で突進。
【群れ斬り】
槍が回転し、複数の頭を斬る。
血が噴き、霧が出る。
石竜亀が暴れ、岩が崩れる。
風圧が体を押す。
カイルの【罠設置】で地面に毒罠。
亀が踏み、動きが鈍る。
エラの氷爆発が、甲羅を砕く。
ミアの即効解毒で、霧の毒を防ぐ。
俺の最終突き。
心臓を貫く。
ドスン!
新種が倒れる。
息が荒い。
汗と血が混じり、地面に滴る。
体に光。
【リオン / レベル11 / 新スキル:竜封じ突き】
全員アップ。
エラ:【氷の絶壁】
カイル:【影分身矢】
ミア:【緊急蘇生】
ミアが遺産の石を調べる。
「これ……英雄たちのメモ。
ヴォルガノスが、谷に血を注いだ。
子孫が隠れ、増え続けるように」
エラが読む。
「英雄たちは気づかなかった。
狩りすぎが、最大の過ち。
バランスを崩し、世界を脅威に」
カイルがため息。
「つまり……今のが、その証拠か」
俺は頷く。
「真実を知った。
次は……止める」
谷の出口へ。
だが、上空から影。
飛行型変異種の群れ。
「また……!」
エラが杖を構える。
「来るわ……大群!」
俺は槍を抜く。
「みんな……いくぞ!」
(次回予告:変異群れの大戦。
ギルド同盟の援軍。
そして、古龍復活の兆しが……!?)




