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惑星魔法

見えない武器。

戦いの場において、それは大きなアドバンテージとなる。

ひゅっ!!

風を切る音が、自分から数センチ離れたところで発せられる。

その場所はつい先ほどまで自分が立っていた場所他ならない。

よけるのが遅ければ、あっというまに串刺しにされていただろう。

リティは、しかし脅威には感じていても恐怖は感じず、

槍を投擲する。



「むっ」

エルダムは真正面から放たれたそれをやはり見えない何かではじき返す。

だが、リティの攻撃はまだ続く。

滞空中なにもかかわらず、次々と氷の槍を具現化させ、投擲する。

すでに制御は手から離れている状態で、魔法制御のみでエルダムを対象にし連続投射する。

その速度、威力ともにマシンガンの方がマシとまで言わせるくらいに、ゲリラ豪雨ごとく降り注ぐ。

さすがの聖都フィーリア最強の守護者であっても傷一つ負ってしまうだろう、と。

第三者がいればそう感想を述べるかもしれない。

しかし、

彼は守護者である。

守護者とは対象を打倒するだけでなく、守る者を守らなければ守護者足り得ない。

つまり、

守護者とは最強の剣であると同時に、最強の盾でなければいけないのだ。

ゆえに、エルダムはすぐに最強の盾を用意し、発動させる。

「絶対の防御を我に与えよ――【絶炎断壁ファイアウォール】。」

呪は放たれた。

エルダムが指揮をするかのように手をさっと振ると、紅い炎の壁がエルダムを守るように周囲に展開される。

展開された炎の壁に次々と氷の槍は衝突し、四散した。

四散した氷の槍の欠片がダイヤモンドダストのように、景色に色を添えた。

すたっと、空から大地へと降りるとリティは槍を地に突き刺し、

両手を合わせ魔力を高める。

「火神司る星【火星マーズ】、塵、芥のこさず灰燼と化す一撃を我に――【惑星魔法プラネットマジック火星マーズ】!!」

合わせた手を離せば、そこにあるのは紅輝石ルビーを思わせる輝きを持つ数センチの魔力球が形成されていた。

それをリティはエルダムへと投げつける。

投げた魔力球は加速と同時にその大きさを倍々へと成長し、エルダムに直撃するころには、高さ25メートルもの超特大火球となってエルダムを包み込んだ!!


惑星魔法プラネットマジック】・【火星マーズ】。

リティ独自の魔法体系により確立された、主に対軍魔法の一つで人はもちろん、神ですら焼却できるシロモノである。

火属性である、サラマンダー、火の鳥などですら塵も残さず消滅させた劫火。

人の身ではまず防ぎようのない魔法だが――。


生き物のようにエルダムがいた場所を中心にして、獄炎がうねり周囲を紅い世界へと変貌させていた中、

突如、炎が何かに押し飛ばされるようにして追いやられる。

「……なるほど、それは炎を視覚化させているだけで、中身は別物ですねー」

リティは、そう推測を語った。

目の前にて傷一つ、埃一つついていないエルダムに向けて。







一方その頃、ウィナ達は遺跡の中枢――現在でも起動している魔方陣の前まで無事到着していた。

さきほどまでいた守備兵や、聖都フィーリアの兵士はいない。

そして自由都市の傭兵や私兵の遺体もないことからおそらく彼らは、遺体を埋葬しそのまま自由としへといったのだろうと洞察した。

もちろん、自由都市の長であるイーガの姿もここにはない。

「グローリア。

針を設置したら、すぐにでもこの魔方陣は発動するのか?」

「……いえ、起動の言葉を口にしなければ大丈夫のはず……です」

少し考え込みながらグローリアは言う。

「リティ様は、決着をつけるつもりでしょうか?」

「あいつには、あいつの考えがあるだろうからな……」

「リティが来るまで待つの?」

「――時間と、状況しだいな。

今のところこっちを狙うものはいないようだが、状況が変わればすぐにでも発動させざるをえない。

――そうだ。グローリア、この魔方陣は時を越えることができるものでいいのか?」

いまさらながらウィナはこの魔方陣の効果についてたずねてみた。

先ほどからの話の流れを見ると、そういう効果があると推測できたので聞くのを先延ばしにしていたのだ。

それに連戦続きで話を聞く時間もなかったわけだが。

ウィナの問いに、グローリアはしっかりとした口調で、

「はい。この魔方陣は時を超えることができます」

「……もはや何でもありか」

呆れた声で、ウィナ。

「でも良かったんじゃないかしら?

帰る手段が見つかったのだから」

「まあな。――で発動手順は?」

「2つの針を所定の位置において、後は自動で大丈夫です。ただ……」

「ただ?」

「リティさんの解析結果の方に、起動鍵に当たる呪文があるんです。

でも聞ける状況じゃなかったですので……」

「それは仕方ないな。

ま、これでいやがおうにもリティを待たなきゃいけなくなったわけだが――」

ちらりとリティのいる方向を見ると、バカみたいに大きな火球が見えた。

「あれは……」

「エルダムのおっさんではないだろう。

たぶんリティだな」

「ひょっとしてあれが惑星魔法……?」

グローリアの推測に、ウィナは少し驚き、

「リティから聞いたのか?」

「はい。

魔法の構築にいきずまっている時に教えてもらったんです。

リティさんのオリジナル魔法になるので、わたしには使えませんでしたけど……」

というわりにはさほど気にしてはいない様子である。

おそらく使えないものでもそこから魔法のツボのようなものを得ることができたのだろうと、推察した。

もともと、リティは管理者から許可された魔法体現者マジックユーザー

つまりは、世界基盤を操作できる術を知っている。

対して、グローリアはエルフ族という人間種族よりも魔力や魔法能力が高いが魔法体現者マジックユーザーはない。

人として努力と才しだいで越えることができるのがグローリアの魔法技術であり、

努力とか才などで越えることができないのがリティの魔法技術である。


「……すさまじいですね」

畏怖を込めた言葉をはくアーリィ。

わからなくもない。

大概、このメンバーもちーとではあるが、それでもリティの力は測れない。

飛び抜けていると言っていいだろう。


何故、そこまで強大な力を得るにいたったのか。

何故、自分についてくるのか。


わからないことだらけである。

本人はいろいろと知っているみたいだが――。

息をはき、少しラクな姿勢をとる。

「ウィナさん?」

「いまのうちに治癒をかけてくれないか、グローリア」

「!はい」

治癒の魔法を唱える彼女を見つめながら、孤高の魔女について思いをはせた。


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