過去と未来が重なるとき
決着はついた――。
深々と、イーガ・ウエィの身体を貫いた赤錆の魔刀を手に、ウィナは気を失うことを耐えていた。
決着はついたが、それでも相手にしているのは強力な信念を持っている相手だ。
牙が折れれば、その折れ尖ったものを武器にして相手を仕留めようとする。
ゆえに、ウィナは意識を手放すわけにはいかなかった。
「……とどめをささないのか?」
「無駄な殺生は嫌いでね。
そもそもおまえが俺達をとらえようとしなければ、闘いにはならなかったんだがな」
額に汗を浮かべつつ、ウィナは苦笑いを浮かべる。
「それこそあり得ない。
私が自由都市の長である限り、必ず君達を捕らえ実験し、より強い防衛力を手に入れる」
眼光は弱さを見せるどころか、強くこちらを見据えていた。
ウィナは肩をすくめた。
自分の言葉が届かないのは、闘う前から理解はできていた。
そもそも自分の言葉でどうになかなるようなら、ここにこの男はいないだろう。
ウィナは周囲を見回し、敵の存在がないことを確認しイーガから背を向けた。
「……」
イーガは何も言わない。
そして、ウィナもこれ以上話す気はなかった。
辺りはいつのまにか雨の音のみが支配していた――
「……ウィナさんっ」
リティ達の元へ戻ると、ウィナの意識はすぐに覚醒した。
1人の少女がグローリアに抱きかかえられているのがみえた。
「――槍か?」
その言葉にグローリアはこくりと首を縦に振る。
そしてこっちに向けて手を伸ばし、
「治癒の光を――」
そう呪を口にすることで暖かい光がウィナの身体を包み込む。
「簡易的なものなので、あとでもう一度かけ直さないとダメですけど……」
「いや、十分だ」
礼をいい、抱きかかえられている少女をみる。
顔色は悪い。
生き生きとしていた瞳は、今でも消えてしまいそうに弱い。
「疲れたか」
「ふふっ、まあね」
少女の命がもう途切れてしまいそうなのは、誰からみても明らかだ。
それなのにセシリアは穏やかな笑みを浮かべていた。
「……怖くないのか?」
目的語はないが、彼女には通じたようで「ええ」と静かに肯定し、
「外見はほとんど変わっていないけど、長いことを生きてきたわ。
だから怖くはないのよ。
――ううん、少し怖いかな。
でもそれよりもこれでやっと終われるっていう方が強いから」
「そうか」
降りしきる雨。
しかし、ウィナも、グローリアも、セシリアも雨に濡れることはなかった。
ドーム状に展開された結界があるためだ。
術を行使しているのは、こちらに対して背を向けている彼女だろう。
「……マスタ-。
例のこと覚えている?」
「ああ、覚えている」
作戦を開始する前にセシリアが願ったことを思い出す。
「約束守ってよ。
信じているから」
「ああ、わかっている――」
「じゃあね、マスター。
短い間だったけど楽しかったわ」
それがセシリアの最後の言葉になった。
「逝ったのか」
「っ!!」
その言葉に、グローリアは鬼気せまる形相で声をかけてきた相手をにらみつけた。
身体を引きずるようにしてきたのはイーガ・ウェイ。
ウィナは2、3度慈しむようにセシリアの髪をなで、背中ごしに。
「ああ、逝った。」
それだけ簡潔に答えた。
「まだやるつもりなら、ウィナさんにかわって相手しますよー。
わたしも少々、虫の居所が悪いですので」
彼の方を振り向き、リティはいつもと同じように笑顔で言った。
「……遅かった、ですか」
息をきらせてやってきたのは、アーリィ、シア、テリアの3人。
こちらの様子を見て状況を察し、苦い表情を見せる。
誰もが身動きをとれず、
言葉を発することができず、
沈黙が続く。
そんな中、ウィナはすっくりと立ち上がる。
「……ウィナさん?」
涙をめいいっぱい溜めたグローリアの頬を優しくなで、
彼女に抱きかかえられいるセシリアを受け取る。
「……軽いな」
ウエストポーチから、一枚の布をグローリアにとってもらいそれを地面に敷く。
そこに静かにセシリアを横にする。
「何を――するんですか?」
「生前、彼女に頼まれていたことがあってな。
それをするつもりだ」
「蒼輝石の操作――ですか?」
あごに手をあて、アーリィが尋ねてくる。
「そうだ。
彼女くらいの蒼輝石になると、蒼輝石に宿る記憶や、力そういうものが何かの拍子に宿る可能性があるらしい」
蒼輝石は、魂、精神が圧縮されてできた宝石。
一度固定されたからといって、霧散したりしないかといえばそういうわけではない。
今回みたいな、対蒼輝石を核とする生命への武器である槍や、
または寿命などで蒼輝石はその輝きを失い自浄作用で流動化、気体化し大気へと戻る。
そんなサイクルを辿るようだが……。
しかし、その圧縮具合が高すぎたり、
もしくはそのエネルギーが膨大すぎると綺麗に自浄されず、
他の物質や非物質に宿り、再生したりなんだりすることがあると、彼女が教えてくれた。
「そういうのはごめんだというのが彼女の言い分だ。
だから、」
ならどうすればいいのか?
そう聞いた時、セシリアは朗らかに笑い。
「マスター。
予定のない貴女との主従関係だったけど、わたしは満足してる。
でも……実は一つ心残りがあるのよ」
そういう彼女はわずかながら頬を赤面させ、
「赤ちゃんが欲しいの」
蒼輝石を核とする生命体に、生殖能力はない。
その理由は、彼らは他の生命体に比べて強靱であり長い時を過ごせる身体能力もある。
ゆえに進化した生命体ともいえる。
それが人為的なものだとしても。
生命として次のステップへ踏み出してしまっているためだろう、生殖能力がなくなってしまったのは。
セシリアもまた子を為す経験がないまま、実験材料にされその身を変えられてしまった。
それゆえ彼女自身に生殖能力はない。
なら生殖能力がない彼らはどうやってその個体を増やすのか?
答えは簡単。
蒼輝石を自在に使いこなすことができるのが条件だが、
それができれば己が身の蒼輝石核と分裂され擬似的に個体を生むことが可能だ。
セシリアは技術的な面でクリアしている。
なら今まで何故造らなかったのか。
すでにウィナ達の前に彼女は己の分け身である子を見せていた。
だが、彼女曰く違うらしい。
蒼輝石を分裂させ、分身を造ったとして親にあたる本体と、子供にあたる分身。
本体が緊急の場合、分身は本体に戻る性質を秘めている。
そのため完全な個体として存在しているわけではないのだ。
中には本体と分身という分け方をせず、両方が本体としているものもいるらしいが。
そのあたりになるとセシリア自身も困難な技術で難しいらしい。
というわけで、セシリアが子供を作るために必要な条件として自身の存在が完全に亡くなった後、
誰かにその蒼輝石核をいじってもらい子供を誕生させて欲しいとウィナは頼まれたのだ。
しかしである。
それでは彼女の人格が残ったままの子供となるがいいのだろうか?
そう問いたら――
彼女は、自嘲気味に笑い、
「わたしの蒼輝石核には様々な人の精神が混入されて渾沌としているのよ。
もちろん実験のせいで――だけど。
わたしは、彼らの精神を束ね統一できる存在として表にでているだけ。」
「多重人格――みたいなものか?」
「用語的にはわからないけど、そんな感じかな?」
「それならそれで、セシリア以外の精神が子供となるだけだろう?
いいのか?」
その言葉にセシリアは首を横に振る。
「ちょっと違うのよ。
今、わたしの蒼輝石にはみんなで守った2つの少女の人格があるの。
あいつの実験で犠牲になった、ね。
夢の中でみんなと相談してもしもそういう機会に恵まれたらこの子達に身体を与えてあげようって決めたのよ。
他の人達は大気に戻らせたり、わたしの死後解放されるようにしたりしてね。」
「つまり、セシリアの蒼輝石を2つに等分し、構築しろということか?
俺にできるかわからないぞ」
「たぶん大丈夫よ。
マスターは、あの娘を蒼輝石にして再生させたでしょう?」
「しかし、あれは媒体となる身体があった。
それにうまくいったのも奇蹟に近いぞ?」
「たぶん、わたしの場合はうまくいくわよ」
妙に自信のこもった彼女の言葉に、それ以上何かいうこともできず話はお開きとなった。
「それで実際うまくいきそうなの?」
興味津々といった様子で、シアが聞いてくる。
「どうだろうな。
正直、確実に大丈夫とは言えない。
だが、遺言を受け取ったわけだからな、まあなんとかしてみるさ」
そういい、ウィナは精神を集中し始める――。
セシリアの身体から、蒼い粒子が浮かび上がる。
同時に、彼女の周囲に魔方陣が展開される。
この魔方陣は、自身の演算能力を補助する働きがある。
前回、シアを蒼輝石化したとき思ったのが、圧縮という技術は扱いが難しい。
感覚に頼る部分が多々あるし、少しでも制御を誤れば大事故へとつながってしまう。
戦闘などでこの【圧縮】の技術を使おうと思ったら、足を止め、精神を集中し――
などというきわめて戦闘で隙を見せるような行動をしなければいけなくなる。
こちらが相手より上手であれば、それでも問題ないが、自身と同等、もしくは上の相手と闘う場合、
そんな隙を見せたが最後、確実に死へとつながる。
ならばこの【圧縮】という技術をもっとコンパクトかつ、使用者に不可がかからない形で行使できないかと模索して得たのが、
魔方陣による補助機能だ。
魔方陣とは、簡単に言ってしまえばボタンを押すだけで作動する機械のようなものである。
通常、魔法には構築式が必ず存在している。
しかし、あまりそれは目立ったものではなく通常、魔法を専門的に習う人以外は意識しない。
なぜなら、意識せずとも手順にのっとって魔法を行使すれば魔法は成立してしまう。
日常生活で使える魔法は、本屋に売っているし、シルヴァニア王国ともなると子供の養成機関で授業の一貫として教えられている。
生活していく上で必要十分な魔法は、習得できてしまうのだ。
その中であっても魔方陣というのは、使用されている。
たとえば、魔法は持続させることが難易度が高い。
術者の精神に依存するからだ。
しかし、町の食堂で料理をしている人間にとって火をおこす魔法は重要だ。
これのでき次第で味が変わってしまうからだ。
そんな中、生み出されたのが普段は隠されている魔法の構築式を顕在化させ、それを表す式を記号化等し指先一つ、魔力一つで、
魔法の発現をさせる機構が開発された。
それこそ魔方陣の原型である。
これにより、現代でいうガスコンロのように弱火のままとか、中火のままなどといったこともできるようになり、
冷蔵庫的なものもできるようになったのだ。
庶民から広まった魔方陣は、国の魔法専門に扱う機関においても注目され使い方次第では危険であると判断。
そのため現在において魔方陣の新規作成には国の許可がいるし、売買にも同様の許可がいる。
かってに広めたりすると、場合によっては死刑などと重い刑にもなってしまうため、暴走する輩はそれほど多くはない。
ちなみにこの魔方陣の研究と、運用がもっとも盛んなのはシルヴァニア王国である。
ここの魔法陣の精度、運用技術は他の大国とくらべても抜きんでている。
これも、【盲目の巫女】の恩恵なのかもしれないが。
さて、話は戻る。
この制御を少し肩代わりしてくれる魔法陣は、当然ウィナ独自に作った――というわけではない。
リティや、グローリア、テリアなどにみせながら修正、修正、また修正としてできあがったもの。
一度できあがってしまえば、魔法陣を保存できる媒体を用意することで保存し、好きな時に使える。
媒体とするものの質で、発現する魔法の質が変わるので、媒体選びは重要だ。
先ほどの料理人の話になれば、火を起こす魔法陣を刻むのは漆喰石という大気魔力の吸収率が高い魔石が多い。
多少値が張るが、紙のようなものだと燃えてしまう可能性が高いためだ。
ウィナの媒体は、赤錆の魔刀。
固有武具としての性能もピカ一であり、なおかつ魔法陣保存にも適しているとリティに言われならというわけだ。
まぶたを降ろし、息を整える。
イーガとの戦闘での疲労や怪我は未だ色濃く残っている身体。
休息を訴える身体にムチを打ち、精神をクリアにする。
「【圧縮開始】……っ!」
ウィナのシアンの双眸が一際輝いた。
セシリアの周囲に展開していた平面型魔法陣が、急速に回転を始める。
さっきよりも彼女の表面から発せられる蒼い粒子の数が増え、セシリアを形取っていた素体が急激に崩壊していく。
蒼輝石を核とするものの表面は極めて固い殻で覆われている。
殻を消失させれば、中に詰まっている精神は一斉に大気へ解け消える放散現象が起きる。
それを放散させるわけにはいかない。
ウィナはセシリア自体を分解させながら、霧散しようとする精神を収束させるという極めて高度な並行作業を行っていた。
静かな闘い。
まさにそう形容するのが相応しい闘いを彼女達は見守っていた――
「幻想的な光景ね。私の時もこんな感じだったの?」
目を細め、事態を見守りながらシアは誰にともなく問う。
「あの時よりも、余裕がありそうですねー」
シアの疑問にいつのまにかやってきたリティが答える。
雨に濡れないように結界を張っているのは彼女。
「リティさん……」
グローリアは、複雑な表情で彼女をみる。
その眼差しの意味を理解したのか、リティはいつもと変わらぬ笑みを浮かべ、
「もう少しで全てわかるときが来ますよ、グロちゃん」
「そう――ですか」
今は、まだ信じていよう。
たとえそれがいつか彼女と袂を分かつ間へのモラトリアムだとしても。
「……」
イーガは黙ってウィナとセシリアを眺めていた。
言葉を発さず、しかし致命傷を負っているにも関わらず微動だにせずに。
その横にアーリィがすっと立つ。
「……とどめを刺す、か?」
「――今の貴方に必要はないでしょう」
アーリィが指摘するように、イーガはこのままでは後数時間も経たずに命を失うだろう。
彼の仲間や、協力者が来ない限り。
一応、周囲の警戒にはテリアが行っている。
今のところ周囲に敵対勢力は見えないそうだ。
(……ですが、気になるのは聖都フィーリアの動きですね。
何故動かないのか)
ある一定の距離を保ち、聖都フィーリアの兵士達は沈黙を守っている。
あれほどまでにアインシュビッツ巨石群を守り、侵入者に対しても迎撃の姿勢を崩さなかった彼ら。
動きが止まっている今、絶好のチャンスにも関わらず誰もこちらにやってこない。
(ルーシュの蒼輝石への干渉が終わったとして、はたして無事にここから抜け出せる状況なのか怪しいですね。
この時代、確か聖都フィーリアには最強の剣と最強の盾を統括する男――武装神官長エルダム・ウィル・ウィダートがいるはず。
彼が出てくるような事態にならなければいいのですが……)
アーリィの悩みはつきない。
施術に意識を集中させながらも、ウィナは思っていた。
【圧縮】にかかる負荷は、シアの時よりも遙かに少ない――と。
それだけ、魔法陣による演算処理がうまく働いているということなのだが。
(それ以外にも理由があるのかもしれないな)
深層世界で語られたミーディ・エイムワードの言葉を思い出す。
「この闘いが終わった後、もう一度ここに来なさい。
そして全ての扉を開けてもらうわ」
すべての扉を開けろと、彼女は言った。
加護を受けた人間が、【扉】を開けるということはオリジナルに近づくこと他ならない。
オリジナル――つまりは、加護を授けた【神】である。
ウィナで言えば、ミーディ・エイムワードその人。
【闘神】という称号を持ち、シルヴァニア王国最強の守護者。
それがミーディ・エイムワード。
その彼女に近づくということは、自身も彼女と同等の力を得るということ。
(……そして、ミーディ・エイムワードに何かがあった場合、彼女の器となる――か)
まるで出来レースだ。
物語で言えば、勇者達が魔王を倒したかと思えば、勇者が魔王となり世界を支配する。
悪夢でしかないだろう。
自身の命を長らえることを考えるなら、ミーディの言葉を否定し精神世界に行かなければいい。
いや、この過去の世界で静かに暮らすというのもアリだろう。
だが、
微塵にも気持ちが傾いていないことに、ウィナは苦笑した。
理由はわからない。
明らかに盤上では王手をかけられているのにも関わらず、
脳のどこかで逆転する布石が残っていると、訴えかけているのだ。
ゆえに諦めない。
諦めたところで、そもそも彼女達が諦めるはずがない。
ならば、先手を打つか、後手に回るか、それだけの違いにすぎない。
だからこそ――
セシリアの身体が完全に消失し、彼女のいた場所に大きな蒼い宝石が浮遊している。
「――蒼輝石、か」
イーガの声。
その声音には驚きが混じっていることにウィナは気付いた。
無理もない。
自身も多くの蒼輝石をみたわけではないが、シアのものと比べて4倍、5倍以上の大きさをもっていた。
魔法陣は未だ展開されている。
ウィナは圧縮していた術式を中断したまま、能力行使中に邪魔だった赤錆の魔刀を虚空から呼び出す。
そして、躊躇なく両断した。
その行為に、ウィナとリティをのぞく全員が目を剥く。
しかし、すぐさま平静を取り戻しウィナの行為を見守った。
ウィナは、綺麗に両断された蒼輝石を平行に移動させ、
中断していた【圧縮】を再開させる。
大気に干渉し、大気に満ちる魔力を収束させていく。
蒼輝石が一際大きく輝くと、幽霊のように輪郭が安定しない人型が2つ成形される。
心臓にあたる部分に、蒼輝石が存在しなおも明滅を繰り返しをして、同時に輪郭がだんだんはっきりとしていくのが、第三者の視点からでも認識できた。
ウィナの表情はさっきよりも険しさを保ったまま、
制御の魔法陣を使っていても起きる頭痛に耐えながら、【圧縮】を続ける。
――数分後。
最後に蒼い光が人型から発生し、それが止んだあとに全く自分達と変わらない人間が、そこにいた。
黒い艶のある髪。
閉じられてはいるが、長いぴんとしたまつげが、令嬢を思わせる。
形のいいあごのラインに、唇。
バランスのいい、身体のライン。
同性からみてもうらやむを通りこし、見惚れてしまうほどの美貌をもった彼女達が、胸を上下させ浅い呼吸をしていた――。
そう彼女達。
セシリアの願いは双子。
その願いにウィナは答えたのだ。
だが――。
ここで一つ誤算が起こる。
「……なっ」
アーリィが、ひどく驚愕し彼女達をみる。
その反応はアーリィだけではない。
グローリアも口を両手で多い、目を大きく見開き、
シアは、鋭い眼差しで、
テリアは横目で、
イーガは何が起きているのかわからないのか、先ほどから表情は変えず、
そして、リティは表情を変えずただ静かにみていた。
「――ウィナさん?」
何かを問いかける口調のリティ。
ウィナは彼女にわかっている短くつげ、
「つまり、ここが過去の世界なのが確定したということだな。
彼女達がここにいる以上」
ウィナは、納得はしたが理解ができない眼差しを彼女達双子に向けた。
服装、身長など少しばかり違いがあるものの、
間違い無く彼女達は、ミーディ・エイムワードとヘラ・エイムワード達、その人だった――