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侵入、アインシュビッツ巨石郡

「2交代制でどうやら守備は切り替わっているらしい」

朝。

テリアの雑食シチューという世にも恐ろしい名前の割には、味がいいシチューを食べながら作戦会議。

「なら狙うならその交代する間?」

もぐもぐと女王だった割によく食べているなーと感心しながらウィナはああとうなずいた。

「ただ今回は、あくまでも調査のみに専念してくれ。

仕掛けがわかったからといってすぐ起動はさせないように。とくにリティ」

「ええー。そんなことしませんよー。

ちょっといじくるだけです」

「「だからそれをやめろっていっている(のよ)」」

ウィナとセシリアの声が見事にはもった。

「でもどうしてですか?」

と聞いてきたのはグローリア。

「俺達の最終目標は現在に戻ること。

これは間違い無い」

全員がうなずく。

「ただ、この過去の世界でいくつか気になることもできてきた。

セシリアのこと、自由都市の事、そしてあの黒いローブとフードの男達。

今の状況で戻っても踊らされるだけだろう。

なら少しでも状況を掴んでおく必要がある」

「そのために情報を集めよう。そういうわけですか?」

「その通り。

俺としても早く平穏な生活に戻りたいんだがな……」

やれやれと肩をすくめるウィナ。

「では早速くじ引きで決めましょうよー。

陽動組と実行組で」

「その組み分けであっているが、なんでくじ引きなんだ?リティ」

「その方が面白いからですよ」

「…………それでいいか?」

「結果次第でしょう。

遺跡の探索というよりは、魔方陣の術式などを解析する方がメインですのでそれをやれる人材がいないと話になりませんね」

とアーリィは、リティ、グローリア、そしてセシリアを順に見ていく。

「……セシリアも行けるのか?」

「――望む望まざるに関わらず、魔法についてはいろいろ教わっているわ。

現代の魔法についてはわからないけど過去の魔法についてならそこの2人よりもわかるはずよ」

「おお、挑戦状をたたき付けられましたっ。グロちゃんどうしようか」

「ええっ!?そこでわたしにふるんですか!?」

「――じゃあ、リティ、グローリア、セシリアは一緒に実行組でいいか。

俺は」

「ルーシュ。

貴女もそっちにいってください」

「いいのか?」

「その方が成功率が上がるでしょう。

おそらく陽動を行ったとしても、これだけ警戒している相手達です。

あまり陽動に引っかからない恐れもあります。

その時、打倒できる人間を多く配置していた方がいいでしょう。」

「わたし達は少数でひっかき回して、危なくなる前に離れるということですか?

アーリィ様」

肘に手をあて、考える仕草をするテリア。

心なしか、少し機嫌が悪そうである。

「ええ、お願いします。ローゼル。」

「……仕方ありません。

ウィナ様。しばし離れます。」

「ん。わかった。気をつけてくれ」

「ウィナ様もお気をつけて」

そうして組み分けは終了し、交代する時間をメドに動きだすことにした。




「なんだか珍しいメンバーね」

ぽつりと、シアはテリアとアーリィと自分を見てつぶやく。


シア達が今いる場所は、アインシュビッツ巨石群の中心部から遠い東の入り口。

入り口といってもただ単に巨石がごろごろ転がっているだけなので、全てが入り口ともいえる。

守備兵達は、どうやら時計回りに警備をしているようで、もう少し時間がたてば交代となる。

その交代して間もない瞬間を狙い、相手を無力化、そして大きな爆発などをしてこちらに守備兵達を集中させる。

これが今回陽動組のお仕事になる。

危なくなる前に逃げるという話だが、シアも、アーリィも、テリアもぎりぎりまで引っ張るつもりだった。

「ウィナ様とあまり離れたくはなかったのですが」

残念そうに言うテリアに、シアは微笑し。

「ごめんなさい。

でもこれが現状最善手だと思うの」

「それは疑ってはいません。シア様。……単なる愚痴のようなものです」

その言葉に苦笑を浮かべながら、シアとアーリィは兵士達の動きに注視していた。

そして――。

2人組の兵士達は、右手首を見――おそらく時計のようなものがあるのかもしれない。

西側の方を見ていた。

ぴくっとテリアの耳が動く。

「……さらに2人が来ます。」

「OK。交代というところかしら。アーリィ」

「準備はできています。問題ありません」

3人は互いに獲物をすでに構えている。

テリアの右手には下弦の銀籠手。左手には月を射るモノを。

アーリィの手には漆黒の杖を。

シアは、腰に差している刀の柄に手をかけている。

「……カウントをとってくれる?アーリィ」

「わかりました。

カウントは5で。」

「5」

やってくる兵士達はまだ遠い。

しかし、こちらにいる兵士達は、ようやく夜番が終わると少しばかり緊張が解けているようで笑顔を見せている――

「4」

早朝ではないものの、まだ午後にはなっていないこの時間。

太陽の光がアインシュビッツ巨石群に降り注ぎ、光のカーテンとして彩りを添えている――

「3」

近づく気配。

同時に、浮き足だつ彼ら。

テリアは静かに弓を構え、矢を生み出す。

弦に手をかけ、狙いはこちらにやってくる2人。

一撃必殺。

「2」

ぐっと前足に力をこめるシア。

その側面、彼女を守るようにアーリィは立つ。

「1」

じんわりと浮かぶ汗を拭うこともなく、ただひたすらに集中する。

ぎしっと弦の鳴る音。

今か今かと待ちわびるその弓矢のきしむ音は――




「0」

アーリィの最後のカウントを聞いた直後に放たれた!!

しゅっ。

空気を切り裂く音。

その音に兵士達が気付くっ。

だが、遅い。

「かっ」

「ぐっ」

うめき声をあげ、こちらにやってきた兵士の2人はそのまま大地へと倒れた。

テリアの手から放たれた矢は、彼らののど笛をものの見事に食らいつく。

「て、敵……っ!?」

大声を上げようとした兵士が一瞬にして火だるまに、

「なっ!?こ、」

そして同僚の惨事に歩み寄ろうとした兵士は、

「残念。遅かったわ」

シアの一閃でそのまま大地に倒れた。

まさしく電光石火。

3人は兵士達が動かないことを確認すると、互いにうなずきあい。

「では」

アーリィは、特大の火球を生み出し大地に着弾させた。

ごおぅんっ!!!

重々しい音ともに、大地が鳴動した――




その日、アインシュビッツ巨石群の上空を焔の柱が天を貫いた。





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