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依頼そして、アメジストの輝き

自由都市マイラの長ウエィと兵士達に囲まれ着いた場所は、灰色の居城。

城といったが、形状は城ではなくコンクリートのような建物3階建てというところか。

入り口には、2人の兵士が立っていて、ウエィの帰還に気づくと敬礼をとった。

(……ふむ。ここでもあのスタンガンのような性能の武器を持っているのか)

リティと街中を歩いたときに兵士と冒険者達のいざこざの際、使われたシロモノ。

(魔法道具であれば高価で、兵士一人一人に渡すなど現在どの国でもできないが、ここではできる、か)

予算がそれほど潤沢なのか、それとも――。


「こっちだ」

ウエィの言葉で我にかえり、周囲を見回す。

建物内部は、恐ろしいほど質素である。

(……思ったよりも兵士が多い?)

固有能力【探査領域】で、兵士達の数が視認できる。

二次元マッピングなのは仕方ないが。

通路を少し歩くと急にひらいた場所に出る。

ここがどうやら応接間にあたるところのようだ。

ウエィに促される形で、ソファらしきものに全員腰をかけた。

位置的には、ウィナ達全員と対面する形で、ウエィが座り兵士達がその後ろに立っている。


「早速だが――」

「頼み事があるか?」

先制攻撃。

ウィナはウエィが話をきりだすよりも早く、きった。

ウエィは一瞬、言葉に詰まり、

「なるほど、すでにこちらの手札は読まれているということか」

さっきまでの雰囲気の中に肉食獣のような鋭さが含まれる。

「では依頼ごとを頼まれていただきたい」

「まずは話を聞かせてもらおうか?」

「そうだな。

話は簡単だ。ある人物を追っている」

「――ある人物?」

ウエィが部下に言って一枚の紙を提示させる。

そこには黒いフードにローブをまとった男の姿が。

「……この男をどうしたいんだ?」

「簡単にいえば捕まえて、こちらに引き渡して欲しい」

「それはわざわざ旅人の俺達に依頼するだけのことか?

おたくの兵士を使えばいいだけだろう?」

「残念ながらすでにそれはやっている」

「ほう」

「だが、結果はでていないというわけだ」

「それほどの相手なのか?」

「特殊な能力を使う相手で、こちらの兵士達では相手にならなくてな」

足を組み、背中をソファに深く沈ませる。

(さて、どうしたものか……)

本来であれば仲間達と相談したいところだが、うかつなことを言うとこちらの身が怪しくなる。

そもそもどうしてこちらを選んだのかもわからないのだ。

どうしたものか。

そう悩んでいると耳元に何か音をひろった。

(「ウィナさんー。相談に乗りましょうか?」)

歩く非常識。

リティだった。

ちらっと本人を見ると、にやっと笑っているが唇は動かしていない。

どうやら念話とか、テレパシーとかいうものだろう。

(「今更だから驚きもしないが、どうやった?」)

(「あれです。

ほら魔法少女とかあこがれていたんですよー。

星の光を堕とすものとか、神々の黄昏とか、いわゆる魔砲少女に」)

(「なにげにギリギリ発言だな……で、それに出てくる念話というわけか?」)

(「理屈はわかっていましたから、魔法で再現しました(キラっ)」)

(「いや、キラはいいが。

魔法で再現って……ヒマじんだろ。おまえ」)

(「なにいってるんですかー。

せっかく基盤の管理者から許可をいただいているんですよ-?

ネタ魔法を発明し世にひろめるのは婦女子として当然です」)

(「……とりあえず、おまえの話は置いておくとして――どう思う?」)

(「罠ですね。間違いなく。

しかも一石三鳥計画っぽいですねー」)

(「なるほどな。さてそうなると……」)

ここで断り、例え相手が何をしようとも逃亡する――ことは可能である。

こっちは明らかに戦力過多状態。

少なくとも戦力外3人の少女はいるが問題なくこの場を抜けることができる。

だが、そうなると懸賞金をかけられ追われる可能性もまた高い。

理由などトップがその気であればどうとでもなる。

(……となると、依頼を受けたように見せかけて、か。)

(「でも魔法的な誓約をかけられるとやっかいです、ウィナ様」)

(「……そうだなって、テリアか!?」)

(「はい。リティ様に術式を教えていただきました」)

(「まあ、便利な魔法だからな。俺達の間で必須技能とするのもいいかもな」)

とヒソヒソ話をしていたが、一時中断して核心部分を問いかける。

「一つ聞いておこうか。

おそらくここで俺達が何を言おうが、その依頼とやらをさせるつもりだろう?」

「さて、私は無理矢理相手を従わせるということは嫌いということもある。

だから言って見なくてはわからなないだろう?」

(そう本当に思っているならニヤけるのはどうかと思うがね)

「おまえの信念はとりあえず今はいい。

何故、俺達に目をつけた?

この自由都市マイラは、冒険者や旅人、傭兵といった人材が集まる土地。

俺達以外にもいるだろう?」

「なぜか、か」

男は腰を深くおろすように座り直し、指を絡める。

「"目"だ」

「なに?」

「その眼差し。

意志のある眼差しが気にいった。

君たちなら必ずあの男を捕らえることができると確信できる目をしていた。

それが理由だ」

「目、ね……。

それはずいぶんと不確定な理由だな。

かりにもこの都市の長ともあろうものがそんな理由で相手を判断していいのか?」

「目は口ほどに物を言う。

と、昔からの格言もある。

これほど重要なものもないだろう?」

「それもそうだな」

同意を示す。

だが、心の奥底ではさらに疑念を深めた。


上手い嘘のつき方というのがある。

いわゆる嘘の中に真実を混ぜるというものだ。

それだけで相手への信憑性が増す。

それで言えば、この目というのは嘘であり真実だろう。


男が目という言葉を発する時に、自身とシアを一瞬だが目をやったのを覚えている。

そして、その後に元奴隷の少女達3人へと。

この5人に共通するものがある。

それは目の色だ。

5人とも、シアはオッドアイだが、アメジストの輝きを持っているのだ。

(人体収集家だったら、シャレにならんがはてさて)

その可能性は低いような気がする。

だとするとこの紫という目の色がおそらく重要なポイント。

考えてみればである。

この大陸で生きていて紫の双眸をもつ人間にあったことがない。

大陸全てを回ったわけではないので、絶対ともいえないがそれでも珍しい部類に入るのは間違いないだろう。


「それで引き受けてくれるかな?」

「――いいだろう。

だが、誓約書を書いてもらうぞ?」

こうして詳しい商談へと入った。


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