外伝3特別講義2
「じゃあ、一時間目はリティさんの魔法学っす。みんなちゃんと聞くっすよ」
教師の言葉に生徒達が全員うなずきで返す。
そうして教壇に上がるのは、もっとも先生らしくないリティ・A・シルヴァンスタイン。
赤い髪をポニーテールにしているのは変わらずだが、今日は何故かスーツ姿で眼鏡なぞもかけている。
言うまでもなく、彼女は目が悪いわけじゃない。
本人聞くと、こういうのは形から入るのがいいそうだ。
まあ、リティのやることだからいいか。
とウィナは胸中で無理矢理納得した。
ちなみにウィナ達は、入り口の反対側でパイプ椅子?っぽいものを腰をかけ、リティの授業を聞いている。
今回、準騎士団養成学校からの依頼である特別講義の実施。
ウィナ達は相談し、それぞれが得意分野で教えていくことに決まっていた。
ウィナであれば、戦術や実践での注意点、また武器の使い方を。
リティであれば、魔法全般。
テリアであれば、飛び道具の使い方や、効果的な長所の伸ばし方など。
グローリアであれば、よりよい結界や、治癒の魔法構成の仕方など。
準備期間はそれなりにあったため、講義内容は各自煮詰めてきたつもりである。
そして、もう1つ重要なことに全員がどんな授業をするか全く知らない。
その方が楽しいだろうということで、本番でのお楽しみということになったのだ。
というわけでリティの授業。
彼女は、早速教鞭を持ち黒板をぱしっと叩く。
叩いた先にあるのは魔法とはと書かれた白い文字。
「では、これから魔法学をやっていきますが。
まず魔法とはどういうことなのか?
説明できる人いますかー?」
何人か手をあげる。
リティは適当に選んで、答えを聞く。
「はい、そこのツインテールの女の子。」
「はい。
魔法とは、特殊な言語を用いて世界に変化をもたらす技術の総称です」
「テキストであれば、100点満点ですねー。
ですが、わたしの授業だと50点かな?
理由はわかります?」
「……いえ。」
「特殊な言語を用いなくても、魔法は使えるんですよー。
こんなふうに」
無言で、手を前に出す。
とぽわんと光の球が生まれ、教室内をくるくると回り始めた。
「!!」
誰もが呆気にとられ、その光球の姿を追った。
魔法としては大したものではない。
光球を生むということは、光の属性の初級に位置する魔法。
だが、問題なのは――。
「あれがリティ様の力の一端ですか」
厳しい表情を浮かべるのはテリア。
「みたいだな。
まさかあそこまで力を持っているとはね」
ウィナも同意した。
グローリアは呆然とリティを見つめている。
「魔法は、特殊な言語を用いて世界に変化をもたらす技術。
それはある意味あっていますし、おそらく普通に暮らしている人にとってもその程度の認識しかないです。
でも、本当の魔法とは【基盤】を操る力そのものです。
わたし達のこの世界を構成する基となる【基盤】。
安易にいじくれば世界の環境が激変したり、大陸が沈んだりと様々な現象が起きてしまいます。
それゆえに【基盤】を管理している存在、わたし達は【管理者】と呼んでいますが、彼女達の許可が下りないと力が使えない――
制限をかけられています。
その制限の1つが魔法言語。
特殊な言語のことですね。管理者達はこの魔法言語を適切に用いないと魔法が使用できないといった制限をかけています。
このため、魔法には特殊言語が必要となるわけです。
次に魔法種類の制限。
この世界の魔法区分は、一般魔法、下位魔法、上位魔法と大きく分けて3つに分類されています。
その下に第1種、第2種、第3種……というふうにさらに細かく分類されています。
これもまた1つの制限です。
高度な魔法は難易度が高く、使う魔力量も多い。
でもこれは制限をかけられているからそうであって、制限がなければ魔力量は低いが高度な魔法を新規で作ることも可能です。
管理者の許可が必要ですが」
そこで1人の男子生徒が手をあげ、質問する。
「管理者の許可を得ることができれば、自分達もそのようなことができるのでしょうか?」
「その答えははいであり、いいえでもあります。
まず管理者に会うには管理者を知らなければいけないですが――。
誰か見当つきます?」
リティの問いに、生徒はそれぞれ「神様?」「創造神?」など存在として高位なものをあげる。
「正解は誰にもわからないです。
意外です?
でも当然なんですよー。
基盤を自由自在に操るということは、その人は死んだ人間もよみがえらせることもできるし、
時間だって未来にいったり、過去にいったりできるということです。
わかりますか?
管理者は、本当の意味で世界の支配者になってしまうんです。
そんな管理者を放っておくなんてできますか?
できないですよー。
人であれ、他の種族であれ血眼に捜します。
そして傀儡にしてその力を狙う。
そうなるとわかっているから、おそらく管理者であることはわからなくなっているんです」
「でも、それでしたらどうして騎士リティ様はその力が使えるのでしょうか?」
「そうなりますね。
それは簡単です。
管理者によって許可を得られることができた人の魂に、許可書が刻まれます。
あるとき急にそのことを理解し、管理者という存在がいるということに気づきます。
ある意味加護のようなものと思ってくださればいいと思いますねー。
加護と違ってこれは本人が許可を得たいと思っても得られることができないというところですが」
「今の話……本当なんですか?」
グローリアが顔を近づけて聞いてくる。
「……どうだろ。
俺はあまり魔法の方はくわしくないからな。テリアは?」
「見たことも聞いたこともないですから、わたしもはっきりとは。
ただ月の女神から流れてくる情報にはそういうものがいることは間違いないそうです」
「実感としてわかりずらいと思いますが、まあそんなものだというので納得してください。
次の話に行きますね。
わたしは、管理者の許可をもらっていますので別に特殊な言語を使用せずとも魔法使用ができます。
ですが、ほとんどの場合は特殊言語を使用して魔法を使用しています。
それは何故だと思います?」
「強すぎる力は、自分を不幸にする?」
「そういうこともありますが、もっと現実的なことです。
答えを言いますと、特殊言語で魔法を使用した方が、魔法を使用しやすいというところですねー」
「?」
「特殊言語なしで魔法を使用するということは、自身で規則を設定し、魔法を管理すること他なりません。
さっきの光球を生み出す魔法も一見、ごくごく普通の一般魔法、もしくは下位魔法に思えますが、
あれはまったくのオリジナルです。
つまり、特殊言語なしでの魔法は、既存の魔法とは違う体系に位置しているので、既存の魔法を無音発動しているわけではないということです。
すべてオリジナル。
自分で考えて、決めて、設定するという細かな前準備が必要なんです。
わたしの場合、管理者の許可をいただいた時には、すでに既存の魔法体系をほとんど網羅していましたので、
今でもとっさの時には特殊言語を用いる魔法になります。
一応、オリジナルの魔法体系は完成しているんですが、はっきりいって対軍系なんですよねー」
そこで遠い目をするリティ。
「対軍って」
「リティ様らしいですね」
「リティ様は、その許可をもらっていないときの最終魔法レベルはいくらだったんですか?」
「上位魔法第零級です」
「ぶっ」
吹いたのは教師。
他の生徒は、頭の上に?マークを浮かべている。
「零級って聞いたことないです、わたし……」
「俺もないな。
そもそも俺まだ一般魔法レベルだし」
「上位魔法第零級。
まさか取得している人がいるなんて……」
目を丸くし、額に汗を浮かべるテリア。
「第零級ってどういうことなんですか?」
生徒の1人が疑問を口にする。
リティはあははーと軽く笑うと、
「第零級というのは、神様と同レベルの魔法行使能力が認められたものに贈られるものです。
まあ、人外ということですねーあはははは」
ざわざわ。
ざわつきだす教室内。
誰もが畏敬もしくは、恐怖をもって壇上にいるリティ・A・シルヴァンスタインを見ている中、ただ1人、すらりと長い足を組んだ少女ウィナ・ルーシュはぽつりと。
「意外に頭が良かったんだな―リティ(あいつ)」
「ひどっ!?ひどいですよーウィナさんっ!!
わたしとのことは遊びだったんですねっ!!」
「遊びとゆうか、むしろその辺に落ちているゴミ?」
「ランクダウンですよっ!?
どこまでわたしの存在レベルを下げるつもりですかっ!?」
と、ウィナとリティの日常のやり取りが行われる中、生徒達は――
「やっぱり団長と副団長ってそういう関係……」
「ハーレム……ハーレムなのか?」
「きゅん、お姉様……」
微妙な勘違いが進行していた。
授業が終わった後、ウィナは聞いた。
「ちなみにオリジナルの魔法体系でどんなものなんだ?」
「ええっとですねー。
惑星魔法と名付けました。
それぞれ、太陽、月、水星、火星、冥王星とかを象徴とした魔法行使をする魔法です」
「…………明らかに対人向けじゃないな」
「えへへへーそう思います?」
「いや、ほめてないし」
「ちなみに火星はまーず、水星はまーきゅりーって呼ぶ方がいいですよねー。
わたしはちなみに金星の子が好きでした」
「いや、聞いてないし。……って元ネタそれかっ!?」