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神殺し――決着

「うぬぬぬぬ……」

スカートを履いているにも関わらず、あぐらをかいて不満を身体全体で表現している神様しょうじょ

期待を裏切ることにスカートの下はちゃんとスパッツを履いているが。

「ええいっ!!負けじゃ、負けじゃっ!!わらわの負けじゃっ!!」

「はい、負けですよーマナ。

もう少し周囲に気を配っていたら勝敗はわからなかったですけど」


闘いは終わった。

さすがの強者達も神という普段であれば闘うことなどないものが相手だったため、疲労を隠せなかった。

リティ以外は。


「……テリアさん。リティさんって何者なんでしょうか?」

「わかりませんね。

こればっかりは」

少し憂鬱げにリティを見やるテリア。

彼女はリティの正体も大事だが、先ほどの戦闘で中ニ病的な台詞を言っていた自分の方がよっぽど問題だった。


「陛下大丈夫ですか?」

「やっぱりこの状態だとつらいかしら。

人間、健康が大事なのね」

表情には出していないものの、主君の体調を敏感に感じ取りながらアーリィは胸中でため息をついた。


まさに辛勝だった。

よくもぶっつけ本番であんな器用なことができたものだと思う。

おそらく自分1人では少女には勝てなかった。

それと。


「師匠が手加減してくれて助かりました」

「手加減っ!?」

グローリアが驚愕する。

少女はふんと面白くない表情を浮かべ、

「当然じゃ。

わらわは全力で戦闘しようとしたなら、こんな地下道なぞ一瞬に崩落するぞ?

生き埋めになるのはわららもいやじゃ」「

「もともとマナは対軍系の技法の担い手ですから、こんな閉鎖的な空間ではその力はほとんど使えないんですよー」

「……ずっと疑問に思っていたんですが、お二人は知り合いですか?」

アーリィの問いに、二人は互いに顔を見合わせ、

「そうじゃのう。

知り合い……知り合いといっていいか?

まあ、知り合いのようなものじゃ。」

「わたしはノーコメントですねー」

「まさか、リティさんも神様……?」

「それはないぞ、娘?

こやつは人じゃよ。

一応な」

「その一応というところが一番聞きたいところなのですが」

「本人に聞けばよかろう。

あまり人の話をするのは失礼にあたるしの」

じいっと全員の視線が自然と、リティへと収束する。

彼女は、にこっと笑うと人差し指を口元に持ってきて、

「それはヒミツです♪

一度やってみたかったんですよねー」

にやにやと笑うリティになんとなく一同引いた。


「ヴィエンタールマナウス様……でよろしいですか?」

「なんじゃ【月の女神】。」

「テリア・ローゼルと申します。

決着はついたと思いますが、通ってもよろしいでしょうか?」

「無論じゃ。

神は契約を守る。

わらわとの闘いに無事勝ったのじゃ。

さっさと通るがよかろう」

「師匠はこれから?」

「弟子一号の成長はイマイチじゃったからの。

鍛えてやるのも一興か。」

その言葉にアーリィは冷や汗を流す。

「それはダメかしら。

アーリィには私の身代わりにいろいろやってもらわないといけないし」

「ふむ。

それなら仕方ないの。

ならわらわはまた旅にでもでるか……。

と、【闇の聖母】。お主、その身体はどうした?」


「「「って今更っ!?」」」

胸中で全員がツッコミを入れた。




「なるほど。

腕が落ちたもんじゃな。【闇の聖母】。

昔のお主なら粉みじんにしておっただろうに」

「そうなの。

これもアーリィが私をこき使うからだと思うのだけど、どうかしら?」

「……陛下。」

呆れたように彼。

「ふふふ。

ごめんなさい。これでも楽しんでいるのよ。

それで腕が落ちたなら仕方ないわ」

「……ふむ。

記憶の解除はいるか?」

「いらないわ」

「そうか。

わらわの宝珠の力でお主に新たな魂を与える事もできるが……」

「それもいらないわ」

「え、なんでですか?」

グローリアが反応する。

「私、これでも大量殺人者なの。

自分の命惜しさにここで新たに命をもらうわけにはいかないでしょ?」

「しかし、王族であればこの帝国の行く末を見守らなければいけないのではないでしょうか?」

シインディームは首を横に静かに振る。

「残った人がうまくやるわ。

歴史を紐解いても、そうだったでしょ?

私の闘いはこれで終わり。

元々王になったのも面白そうだったからだったからなっただけだし。

やりたい人がいるならさっさと譲ったんだけど」

ちらりと自身の側近に目配せする。

アーリィは肩をすくめ、

「そういう意味ではイグリスは愚かでしょう。

ただ陛下に王になりたいと一言いえば、陛下はあっさりその地位を与えたのですから。

……もっとも私は反対ですが」

「そ、そんな……。

帝国のみんなは、女王様のことしたっていたんですよ、どうして……」

シインディームはグローリアの動揺に困った顔で、

「それは我慢してもらわないと困るかしら。

私は人間。

命に限りがあるんですもの」

「でも……守りたい人だっているんではないですか?」

彼女は、口元に人差し指をあてうーんとうなり、

「いるのは確かかしら。

でも私、その守りたい人を守るためにその何倍以上の人の命を奪っているの。

人を守るために相手の命を奪う。

矛盾していると思わないかしら?

守るためなら何をしてもいいの?」

「そ、それは……」

「陛下。彼女をいじめるのも大概にしてください。

彼女も陛下に対して悪意がないのはご存じでしょう」

「ごめんなさいね。

ちょっと貴女からからかってオーラがでていたからからかっちゃったわ。」

ふふふとシインディームは笑い、

「このお話はまた今度でいいかしら?

貴女……グローリアでいい?」

「あ、はい」

「貴女とおしゃべりするのとっても面白いわ。

私達いいお話相手になると思わないかしら?」

きらきらと輝くアメジストの双眸を向けられ、グローリアはうっと声を上げる。

「……陛下」

アーリィは呆れながら、女王をたしなめた。



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