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神殺し

シインディームの刀身が闇に銀閃の軌跡を残す。

「ふむ。」

宝珠の1つがその斬撃をいともさっさりと甲高い金属音をたててはじき返す。

「っ!」

「それおかえしじゃ」

別の宝珠が少女の影からすっと出て、一条の紅い閃光が放たれるっ。

「させませんっ!!

彼の者に聖なる守護を【聖盾】」

グローリアの凛とした声とともにシインディームに直撃コースをはしっていた赤光を防いだはず――だった。

しかし――。

「魔力の密度が薄すぎじゃ、娘」

少女の言葉が示す通りに、赤光が防御壁に触れた瞬間、ぱりんとガラスが割れるような音をたてて砕け散った。

「っ!?女王様っ!!」

「心配ないわ。えいっと」

くるりと空気を揺らす赤光の威力を利用してぎりぎりでかわす彼女。

「っあつっ」

少し苦痛の声を上げたシインディームの脇腹部分の布は燃え尽き、その触ることすら高貴な肌に紅い痕が残る。

「陛下になにをしますか、師匠」

ばっと黒い杖をふるうアーリィ。

刹那、太陽が落ちたと思わんばかりの熱量が一瞬にして少女を包み込んだ。

突風のごとく迫る熱波から顔を守るように腕でガードしながら、

「ちょ、や、やりすぎですっ!?アーリィさんっ」

叫び、慌てふためくグローリアとは対照的に、リティは何事もなかったかのように熱球へと飛び込み。

「リティさんっ!!?」


キィンと大気を切り裂くような音ともに今度は一瞬にして凍り付いた。

先ほどの熱球は消え去り、その位置には氷りづけとなった少女の姿。


シュッ、シュッ!!

さらに追撃をかけるようにテリアの複数の矢が飛来する。

よく見てみれば、鏃の部分から黒い風のようなものが渦を生みながら走っていくのが見え――


直撃――轟音っ。

爆風が吹き荒れる。


残心をしながら直撃した場を見ているテリアの目が射るように鋭くなる。

そして第2撃――。


「やれやれ、せっかちな娘は嫌われるぞ」

放つ前に、テリアの後ろに少女の姿が――。


と気づいた瞬間、テリアの姿は一瞬にして氷りづけになっていた。

「テリアさんっ!?」

「ほれ、娘。人の心配しているヒマはないぞ」

まるで瞬間移動。


目の前に現れた少女には、傷1つなく、服装すらも損傷がない状態なのが余計にグローリアの心を乱す。

「少し眠っていてもらうぞ、娘――ちっ」

宝珠から伸びた蒼い閃光が、直角に曲がり壁に着弾――ぱきぱきぱきと一瞬にして土の壁を凍り付かせる。

「グロちゃんをやらせるわけにはいかないんですよねー」

「り、リティさん!!」

「それに、【氷】はわたしの専売特許ですよー。マナ」

「それはわるかったのう。リティ。

じゃが、今のお主にわらわの相手は無理じゃぞ?わかっておるのか?」

「さあ、それはどうでしょう?」

場違いな無邪気な笑い。

リティのその行動に怪訝な表情を浮かべる少女。

そしてそんな少女に、リティは呪を口にする。

「――後ろの正面誰でしょう?」

意味深なリティのその言葉に、

「なに?」

と、少女は気をとられる。

はったりの可能性もなくはなかったが、相手があのリティだとするとそう思うことこそが罠という可能性もある。

刹那の動揺。

それが少女の命運を決めた。


少女の後ろに気配が生まれる。

振り向くとそこには一対の槍が少女の心臓を直撃するような勢いで直進していた。

しかし、

少女は少し驚いたものの、宝珠をそちらに向かわせ迎撃する。

仮にもこの宝珠は神の神器。

そう壊れるものではない。

そして少女の予想通りにそれは跡形もなく砕け散った――「なっ!?」


始めて少女はそこで疑問を浮かべた。

今まで何の障害もなくスムーズに流れていた情報が、急停止してしまったのだ。

少女の頭の中で。

その秒数は1秒にみたない。


しかし、自他ともに一流である彼女達にはそのわずかな隙が勝利への一撃を導くモノとなる――。


ぱちん。

乾いた空気に響く指を鳴らした音。

それが発射の合図。

リティの手から離れた数千もの氷結の槍が少女を中心に展開され、一斉に解き放たれた。


「っ!!!」

余裕の表情が少女の顔から消える。

同時に、少女の影から複数の宝珠が具現化し、それぞれに防御盾を展開した。

その1つに数十の氷の槍が着弾したが全く無傷の状態であることに少女は満足し、

現在闘っている彼女達に視線を移し――。


「油断大敵っ!!」

目が爛々としているシインディームの斬撃が、防御盾の一角を打ち砕いた。

「なにっ!?」

わずかに空いたスキマ。そこに蒼く揺らめく炎をまとわせた黒い杖が突っ込んでくるっ。

この一撃は無視できない。

意識をわずかに少しだけ集中する。


そして――

ぱりんと後ろから何かが割れた音が、少女の耳に届く。

その音は盾が砕けた音に他ならない。

「な、に……?」

声がかすれる。

集中が解ける。

背中に覚える灼熱感。

それは――


――先ほど砕け散ったはずの槍が、浅く少女の背中を貫いていてできた傷痕。





「ゲームセットですね。

マナ。」

いつもと変わらぬ笑みでリティは言った。

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