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【神の名を知るもの】

「がっ!?」

鳩尾に柄の頭部分が見事に食い込み、騎士の男はそのまま後ろへと倒れていく。

「やるのう。その若さで大したものじゃ」

クロム老が瞳を輝かせる先には、くるりと宙で刀を回し、鞘を左手に持ち替えたウィナ・ルーシュがいた。

ウィナは少し呆れた様子で、

「じいさん、元でもここの統括騎士団長だったんだろ?

こんなにあっさり倒されていていいのか?」

「何を言う。

その騎士はちゃんと己が本分をきちんと為したぞ?

勝てない相手ならば、できるだけ騒がしく音をたてるようにし、足止めに徹すること。

どうじゃ?」

クロム老の言葉が終わる頃には警報が鳴り響き、複数の人間の足音がし始める。

「なるほど。

あくまでも騎士は量であって質ではないっていう考えか」

「もちろん質も大事じゃがな。

現実、新兵を一人前の騎士にするには5年。

そこから優秀な騎士を育てるにはさらに5年。

そして1人で全てをこなせる超人を作るには10年かかる。

そこまでいくのに20年。

だいたい概算じゃがな」

と、肩をすくめてみせる。

「しかし、それでもうまくいけばという前提条件がつくがのう。

国も人も、そして世界もナマモノじゃ。

こちらの都合なぞ待ってはくれん。

結局のところ、今もっているもので打破していかんといかんのじゃ。

残念じゃがのう」


「こっちにいたぞっ!!」

「脱獄だっ!!各騎士団に連絡っ!!」

「時間を稼げっ!!」

「おうっ!!」

威勢のいい声がこちらにまで聞こえてくる。

すでに起動している【領域探査】で確認できるだけで20人。

しかもそれはあくまで一時的にこちらを足止めさせるためだけの先行戦力。

様々な人間が動き、こちらへと進路を取り始める。

「……大したものだ」

賞賛をつぶやき、ぎゅっと鞘を肩にかけている状態で、柄に力をこめる。

にいっと唇の端がつりあがる。

目視の範囲に銀色の甲冑を着た兵士達が、進行方向を塞ぐように曲がり角から現れる。

すでに手にはエモノを持ち、複数で陣形を取りながら決死の表情でこちらを見、かけてきた。


「上等っ。

手加減してやる。まとめてかかってこいっ!!」

ウィナのアメジストの双眸が輝いた。




「――待ってください」

地下道を歩いていた全員の足が止まる。

テリアは耳に手をあてるような仕草で、

「警報……です――。

お城内部で警報が鳴り響いているようです」

「ウィナさんですかねー」

「アーリィさん。あとどれくらいでお城につくんですか?」

「だいたい半分は来ているところですから、ここまでかかった時間ぐらいかかると思った方がいいですね」

「じゃあ、あと30分くらいですねー」

と、相変わらずマイペースなリティ。

「ローゼルさん――でしたか。

お城内部にまで貴女の精霊は入ることはできませんか?」

「……無理ですね。

障壁が張っているみたいで侵入は不可能です。周囲の音などはとらえることはできますが」

「――だとするとマズいかもしれませんね」

アーリィの表情が曇る。

「どういうことですか?」

「先ほど話した通りに

今の王城の警備している者達の中でおそらく彼女をどうにかできるものはいません。

さいわいなことにいなかったといっていいとかもしれません」

アーリィの遠回しな言い方に、テリアの目が細まる。

「つまりどこかへ出ていたということですか?」

「ええ、長期任務ということで外へと出かけていたはずなのですが――」

「帰ってきていているということですか?

それがわたしの精霊が侵入できない結界を作っていると?」

「可能性が高いですね。

そもそも王城の結界は私の管轄です。

私の意志で侵入許可を与えることも、排除することもできるように設定しています。

先ほどその設定を変え、私達であれば侵入できるようにしたはずですが……」

「わたしの精霊が侵入できないということは、誰かがその設定をいじっているということですか?」

「そうです。

そしてこの帝国にてそんなことができるのは1人しかいません」

「誰なんですか?」




「わらわじゃよ。

娘」

ざっと全員が身構える。

声の主は、ゆらりと闇の中から現れる。

「……え、子供?」

グローリアが唖然と現れたものを見る。

そう、女の子。

背はウィナよりも小さく、瞳は真ん丸で大きく、黄金に輝いている。

髪もこのぐらいの年齢にふさわしいツインテールといった様相で、こんな場所であってなければ単に可愛らしい幼女と片付けてしまいそうである。


「師匠、お久しぶりですね。いつお戻りになられたのですか?」

朗らかにアーリィは尋ねるが、目は笑っていない。

最大限の警戒をもって少女に注意を向ける。

少女は、大した気にもせず、テリア達全員の顔を見て――リティのところでおやと表情を変える。

「お主までここにいるとは思わなんだ。

忘れ物か?」

「えへへ、そんなところですよー。」

「リティ様お知り合いですか?」

「ちょっとした知り合いかな?紹介は本人がやってくれると思うからわたしは説明しないですけど」

リティの物言いにそうじゃなとうなずき、

少女は、虚空に手を伸ばす。

閃光とともに子供の頭ぐらいの大きさの宝珠がふよふよと少女の周囲に現れた。

「改めて名を名乗ろうぞ。

わらわの名は、【神の名を知るもの】ヴィエンタールマナウス。

世界の【幹】を支える一柱じゃ」



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