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情報収集の前に

宿に入ると、気だるそうな女主人の案内で部屋が紹介された。


部屋は4人部屋。

しかも最後の1部屋だったそうだ。

なんでもお祭りが始まるらしく、予約で埋まっているとのこと。

「……で、なんでベッドが1つで4人部屋なんだろうな」

ウィナは腕を組み、仁王立ちでキングサイズのベッドを見た。


ベッドは部屋の半分を支配しており、しかも天井にはどこぞの御姫様の部屋のように幾重にも重なった布が花びらのように降りている。

「ふわ~すごいです……」

グローリアは、黄金色の瞳をきらきら輝かせる。

「俺と、テリアとリティは一緒に寝ることが多いから問題ないけど……」

「グロちゃんなら問題ないですよー」

「何の話ですか?」

「いや、ベッドが1つしかないから一緒に寝ることになるけど問題ないかってことなんだが」

「………………はっ!?」

そこで、その事実にようやく気づいたのかグローリアは、みるみる顔を紅くして、

「ふ、ふふふふふふふつつかものですが、よろしくお願いしますっ!!」

「それ違うっ!!」

こういうときのために作っておいたハリセンが、見事にグローリアの頭に直撃した。

「痛いです……」

「紙だからそれほど痛くはないはずだが……。さてお笑いはここまでだ。

今後のことについて話をするぞ」

全員がベッドの上に乗り、円陣を組むように座る。

一応、部屋着には着替えているし、足湯につかっていたからベッドが汚れることはない。

「まず、今までわかったことをテリア」

「はい。

シルヴァニア王国中央図書館にて、禁書が盗まれる事件が発生しました。

その際、魔法を使ったことで禁書と干渉し合い図書館を揺るがす大爆発を起こしています。

犯人が男なのか、女なのかも、個人なのか、複数なのかもわかっておりません。

証拠らしい証拠は、このバッジです」

テリアが双頭の蛇と盾と剣の交差しているデザインのバッジを取り出す。

「以上が現在わかっていることです。

ちなみにこのバッジは、この帝国内において位の高い者に与えられるものだそうです」

「……わからないことばかりですね」

グローリアは唇を噛みしめる。

「まあ、わからないことばかりなのはここに来る前もわかっていたしな。

まず俺達がやらなきゃいけいないのは、この国のどこかにいると思われる犯人を追うための情報だ」

こくりと全員が首を縦に振る。

「といっても、帝国自体の領土は広いし、俺達のような外国人に調査権など与えられていない。

だから調査は全て帝国に気づかれずにしなければいけないが――」

そこで、ウィナは肩をすくめる。

「だが、それはほとんど不可能な話だ。

そこまで諜報機関が無能ということはない。必ずこっちの動向に気づかれる。

問題なのは、そこで争ってしまうと完全に敵国として認識されることにある。」

「戦渦の一端が始まるということ……ですか?」

ぶるると身体を震わせるグローリア。

騎士としてはまだ見習いにも関わらずこんな国家の存亡をかけた任務など悪夢以外ないだろう。

(まあ、俺としては滅ぼうがどうなろうが知ったことじゃなかったりするんだが)

ウィナの軸は、あくまでも見知った人を助けることと、自分が不快に思うことをつぶすことの2点に絞られている。


それ以外のことは基本その場の流れに身をまかせる主義なのだ。

「そんなに緊張しなくてもいい。

もしも、そんなことが起きたとしてもシルヴァニア王国は生き残るだろう。

あの3賢王がいる限り」

「いつからウィナさんは、3賢王を崇拝するようになったんですか?」

揶揄するようにリティが言ってくるので、

ウィナはにやりと笑みを浮かべ、

「最初からだ」

「ふっふっふっふ。じゃあそういうことにしておきますねー。」

「て、テリアさん。なんだか2人が怖いです……」

「いつものことです。グローリアさん」

そう答えるテリアは、面白そうに2人の様子を見ていた。




「じゃあ、夕方までの予定をたてる。

俺は、この国の裏の方を当たってみる。情報屋くらいいるだろうし」

「危険じゃないですか?」

「ん。大丈夫だ。

それなりの準備はしていくつもりだし」

「わたしは、知り合いが住んでいるのでそっちを当たってみますね」

リティのその言葉に、ウィナの片眉がぴんと跳ね上がる。

「知り合い?」

「そうですよー。

幼なじみというヤツです」

「おまえにも人並みに子供時代っていうものがあったんだな」

「それどういう意味ですか、ウィナさん!?」

「まんまその通り。

じゃあ、そっちはリティにまかせて……テリアとグローリアは?」

「……そうですね。

わたし達はリティ様やウィナ様のように単独で"敵"を相手に戦える力はありません。

ですから、わたしはグローリアさんと2人で街の噂話などを集めてみようと思います」

「――だな。

その方がこっちとしても安心だし。

グローリアの結界魔法や、防護魔法は信頼できるから時間さえ稼いでくれれば、何かあったとき応援にかけつけることができるしな」

「そ、そんなわたし……」

あわあわ両手をぶんぶん振り回すテリアに、全員が笑みを浮かべた。

「――よし。早速行動開始と行くか」

「はいっ!」

「OKです」

「かしこまりました」

3者3様の肯定が作戦開始の合図になった。



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