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つかの間の休息その2

「これからどうします?」

「今のところ騎士団の仕事は来ていないから、このまま調べ物をしたいな。

【生輝石】(リヴィリス)の件や、ニィナのことはアイツに頼まれているし」

「そうなると図書館だけでは足りないかもしれませんね」

「そうだな。

午前中にいろいろと読んだが、俺の欲しい情報は手に入らなかったし。たぶん騎士団レベルの閲覧制限じゃあ無理だな。

せめて高等官クラスじゃないと届かなそうだ」

「いっそのことヘラ様に聞いてみますか?」

「冗談。

いきなり女王陛下に会いに行くほど、無頼漢じゃないぞ。俺は」

すらりとした足を組みながら、肩をすくめる。

「それなりの知識人が身近にいれば聞くんだが……」

「該当者に心当たりはありますが――」

「――ああ、いたな。怪しいヤツが……。

ま、アイツは教えてくれんよ。たぶん。そんな気がする」


アイツ――リティ・A・シルヴァンスタインである。

はっきりいって怪しい。

怪しいが、今のところこっちに害をなそうとはしていないので、一緒にはいるが。

「何を考えているのでしょうか?」

「俺が聞きたい。

あのアルバのおっさんもクセものだし。あいつらから話を聞くのは無理だな。

逆に聞いてヘンなことを教わりそうだ」

「アップルパイのバニア添えです」とウェイトレスがデザートをウィナの目の前に置いていく。

それをじいっと見るテリア。

「……おいしいそうですね」

「食べるか?

さすがに全部は無理だし」

「ではお言葉に甘えて」

綺麗に半分に分割して、添え皿にのっける。

持ち手のところに女神の装飾をほどこした銀スプーンでアイスを取り、一なめ。

「……っおいしい」

「うまいな。これ」

思わず顔がほころぶ。

「最近、殺伐とした毎日が続いていたからこういう味に飢えていた気がする」

「本当ですね。この味。是非とも盗――じゃなく会得しないといけませんね。メイドとして」

とテリアはすっと宙空に手を伸ばすと一陣のそよ風が吹き、いつもの緑の髪をした精霊が現れた。

「ほっほーい。何の用-?テリア」

「エル。この料理のレシピの奪取をよろしくお願いします」

「待て。」

暴走しようとするテリアを止める。

「ウィナ様、どう致しましたか?」

「いや、それがテリアの中ではデフォなのはわかった。

今は人がいるしやめてくれ」

「エルの隠密行動は王城の宝物庫の監視すらすり抜けますが?」

そこで不思議そうな顔をする彼女。

(……テリアだけはまともだと思っていたんだが)

どうやら自分の周りに常識というものを重んじる人はいないらしい。

「とりあえず、エルには還ってもらってくれ。」

「わかりました。」

テリアはエルにひそひそと何かを言うと、エルは頬を膨らませてどこかへ行った。

ちなみにその間、誰もエルには気づいている様子はない。

王城の宝物の監視をくぐり抜けたのもあながち嘘ではなさそうだ。

そのことにウィナは頭痛を覚えながら、

「もう少し休憩したら、図書館にまた行くが……テリアもそれでいいか?」

「はい。帰りに商店街の方へ寄らせていただいても構いませんか?」

「ああ、それくらいなら問題ない。飲み物がなくなってきたし……紅茶のおかわりでももらおうか――」

と、ばたばたと忙しそうなウエィトレスに声をかけようと、ウィナが右手を挙げた瞬間。


爆発音がとどろいた。



「…………はっ?」

予想外のことに身体が固まるウィナとテリア。

周りの客も、なんだなんだ?と口々に疑問を声にだす。


「な、なんだ!?今の音」

「爆発……か?」

「ええ!?そんなのないよっ!!ここには女王陛下がいるのよ?」

「じゃあ、今の音はなんだっていうんだ!?」

「おかあちゃーん」


「ウィナ様」

「ああ、気になるな。行くぞ」

もちろんお金を払って、ウィナとテリアは音のした方へ走った。



「ヘンだな。アレだけの音がして煙がたたないってどういうことだ?」

噴水がある広場にまで出ると、そこには野次馬達が口々に、推論やら、本当のことやら入り交じった情報が飛び交っていた。

曰く「王城に火の手があがった」

曰く「帝国が攻撃をしかけてきた」

曰く「脱獄した囚人が腹いせに建物を爆破している」

などなど。


どれも考えられそうであるため、話だけでは原因が特定できない。

現場に直行して、事実を確かめるのが一番速いのだが。

口にした通り、あれだけの爆発音がしたにも関わらず一切、煙も立っていないし、火の気も見えない。

「魔法……か?」

「いえ、それであれば魔力の乱れが生まれるはずです。エルに聞いても大気の魔力に揺らぎはないそうです」

「……だとすると普通の爆弾か?

それなら煙や火が出ていてもわからんはずだが」

首を傾げていると、衛兵だろうか。

広場へと走ってくると、そこにいた同じ衛兵仲間に何か言っているのが見えた。


(……。図書……館が狙われた……?)

読唇術で内容を読み取る。

「ウィナ様?」

「行くぞ、テリア。

どうやら図書館が狙われたみたいだ」



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