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第15話 仲間プラスワン

グローリア・ハウンティーゼ。

エルフと呼ばれている種族である。


【エルフ】

通称"森の人"。

その名の通り必ずしも森に住んでいるわけではない。

そもそもエルフという言葉は、はエルフ種族の総称であり、その中には【ハイエルフ】【ハーフエルフ】【エレメントエルフ】【マージエルフ】

と確認されているだけで4種類存在している。

それぞれ特色があり、【ハイエルフ】は、他種族と比べて能力が高い。エルフの中では圧倒的な能力をもっているため、リーダーの立場をとることが多い。

【ハーフエルフ】は、他種族との掛け合わせで生まれた子のことを主に指す。能力はエルフとしての能力に、その掛け合わせた種族の能力と2つもつことになり、

それだけでも普通種のエルフよりも強い。しかし、エルフ達は純血主義であるためか、他種族の血が混ざるのを嫌う。そのため迫害されているのが現状だ。

【エレメントエルフ】は、名の通り精霊種に近い種族であるため、生命体に不可欠な3要素【魂】【精神】【肉体】のうち魂と精神が半々で混ざり合っているため、

心臓と核と呼ばれるもの2つを持つ者が多い。また精霊種に近いだけあって、自然界の現象について敏感であり他のエルフよりも自然に属しているため、

めったにあうことができない種族でもある。

【マージエルフ】は、近年発生した新種族である。他のエルフよりも魔法の扱いに秀でていて、その力のみなら【ハイエルフ】とそう大差のない力を持っている種族である。

近年エルフ達に現れ始めた【マージエルフ】は、研究も進んでおらずわかないことが多い。

しかし、【マージエルフ】は他のエルフ種族とは違い、普通種のエルフから突然発生する特性を持つ。

その特性からか、普通種のエルフが進化したものが【マージエルフ】ととらえる学者も多い。

また【マージエルフ】として発現する普通種エルフにはある特徴がある。

普通種のエルフとしてもっていなければおかしい能力などを持たない場合が多い。

以上の理由から、他エルフ種族も【マージエルフ】の扱いは未だ決まっていない場合が多いが、欠損して普通種として生まれてくるので、

他のエルフ種族と折り合いがあわず、外に出るものも多い。


いずれの【エルフ】も人間と比べて、身体能力、魔力とも優れているのは確かである。

そして、生まれる時に【樹神】ヴェレイエスの加護を受けているため、【植物支配】【動植物との交感】【先天知識―動植物】【先天能力―薬剤調合】

とかなりチートな能力を持っているため幼女だからといってあなどれない。


長寿でもあり、それが理由かはわからないがエルフは女性の人口が9割を占めている。男エルフはなかなか肩身が狭い。

性格は非常に、温和で好奇心旺盛で怠け者。

すみかでだらだらして1日が終わるということはザラにある種族。


あまりにマイペースなものが多いので、もしも異種族間交際をする際には心のおおらかな人間ではないとやっていけないらしい。


(むこうにいたときは、エルフって言えばファンタジーの代名詞で、美男美女が多くて、精霊魔法が使えて、ツンデレで……みたいな

イメージがあったけど――)

今、思えばあのとき自分は若かったのだろう。


この大陸のエルフは、自分のイメージとは180度違う。

(合っているのは、美男美女が多いくらい、か)

そう思いながら、目の前の美女――グローリア・ハウンティーゼを見る。


髪と目は、見る人を引きつけるほど光彩にあふれた黄金。

たいていのエルフは、めんどくさがりやが多いため髪の毛を切るということはなく、伸び放題と言われているが、

彼女はばっさりと肩のあたりの長さで切っていて、内にシャギーが入っている感じであった。


服装も神官を目指していたという話だったので、ローブ系――身体の線を隠すようなものを身に纏っているかと思えば、

ハーフパンツに、Tシャツ系の上着、それにジャケットといったかなりラフな服装。

身長も高いのですらりとしたきれいな脚線美も健在で、黒のタイツで覆われていた。


一見して自由奔放な女性と、形容したくなるのだが――

気弱な瞳が全てを台無しにしていた。


なので彼女を表現すると『普段のびくびくおどおどした少女が頑張って、イケイケゴーゴー的な格好をムリにしている』

ということである。


「ええっとグローリアさん?」

「は、はいですっ!!」


(……はいですって――どこの言語だ?)

軽くめまいがした。

ちなみに、今ウィナ達は家の方へ戻って来ている。

あれから簡単な面接をして3人は落選。

そして、謎の女性シャクティ・ルフランは面接に来ることはなくそのまま落選。

そういうわけで3人の感触がよかったグローリアを連れて、いろいろ話を聞いてみようと思っていたのだが――。


「そんなに緊張してなくてもいい。

はっきり言ってしまえば、もう君にこの騎士団へ入団してもらうことは決まっているから」

「そ、そ、そうなんですかっ!?」

(もう少し落ち着いていれば、本当に美人さんなんだけどなー……)

黙っていれば、間違い無く男達は彼女の魅力にノックダウンする。

元男の自分が言うのだから、確実に。

「まずは深呼吸して、」

「すーはーすーはーすーは」

お腹に手をあて、深呼吸する彼女。

「ちょっとは落ち着いたか?」

「……はい。すみません。騒がせてしまったみたいで」

「OK。

ようやく本格的に話に入れそうだ。」

ウィナはテリアの入れてくれた紅茶を口にし、

「じゃあ、簡単にできることとできないことを説明してくれないか?」

「は、はい。

わたしができるのは、主に補助系の魔法と治癒の魔法……です。

できないのは接近戦がどうしても苦手で……かといって弓も下手っぴなんです」

肩を落とすグローリア。

浮き沈みの激しい人かもしれん。

ウィナはそう評価しながら、続けた。

「補助と治癒はどれくらいのことができる?」

「補助は……結界や能力補正系などは準騎士団の中でもトップ――くらいです。先生がそうおっしゃっていましたです。

治癒は、無くした部分を再生することくらいまではできます」

きれいなラインのあごに手をあてて答えてくれたグローリア。

「補助もすごいけど、治癒の方がすごいな。

無くした部分を再生って……教団の神官にもできる人は少ないぞ」

一応、この世界には治癒や病気を治す魔法に秀でた集団――『白の教団』がある。

お金は当然取られるが、取るぶんだけ完璧に治療するし、アフターフォローもちゃんとしている。

こう評すると、なんだかえらく人のいい人ばかりが集まるように思えるが……。


実際は少し違う。

白の教団の教祖や幹部達は、種族でいうところの【悪魔】である。

彼らはかってあった【神々】との戦争に敗れたため、【悪魔】達が王【魔王】を人質として取られてしまった。

【魔王】を返して欲しければ、善行を積め。

【神々】への賠償として他の種族へ善いことをして善行ポイントを貯めることを求められたのだ。

そうして悪魔達がポイント稼ぎの一つとして『白の教団』を設立し運営している。


この時点では問題はない。

問題になってくるのは、早く善行ポイントを貯めれば、それだけ自分達の王を取り返せる。

そのため、『白の教団』は怪我人を見つけてはかってに治して「ありがとうございます」と言わせるといった強引な手法を用いて、善行ポイントと貯めている。


一見治して、ありがとうと言わせるだけだから問題ないと思うかもしれない。

だが、

彼らは治療する人間や種族を選ばない。

たとえば、死刑になってしまった殺人者。

人や、他種族を襲う魔物。

そういったものですら治してしまう。

そのため、死んだはずの悪人が復活して、また騒ぎを起こすということが起きているのだ。


さすがの【神々】もこの事態は想像していなく、現在対策を練っている最中らしい。


「すごくないです、わたしにはこれくらいしかできないですから」

とグローリアは力なく笑う。

「それに……わたしにはどうしても治さないといけない人がいるんです。

今のわたしの力じゃ、治せないないですから……」

「それが、神官になろうとした理由なのか?」

「はい。

治癒術の力を高めるには、より強い魔法の構成と魔力、媒体――それらが必要不可欠になります。

『白の教団』は、確かにやり方は悪いんですが死者ですらちゃんと生前の姿に復活させることができるほどの魔法を行使しています。

だから、教団に入って治癒の魔法の腕を磨こうと思ったんです」

さっきまでの気弱な目ではなく、意志のこもった双眸でこっちを見つめてくる彼女。

その目の輝きは、さっきまであったいろいろな不安を打ち消してくれるほど強く、彼女の芯を垣間見る思いがした。


このまま終わればいい話で終わったのだが、あいにく"彼女"がここにいるからにはこのままで終わる訳がなかった。

そう今まで沈黙を守っていた"彼女"がようやく動き出したのだ。

「グロさんは、それなのになんで準騎士団に入っちゃったんですか?」

「グロっ!?ぐ、グローリアですっ!!わたしの名前はグローリアっ!!」

「別にどっちでもいいですよ。グロでも、ゲロでも」

「良くないですっ!?一歩間違えたら、わたし汚れちゃいますっ!!」

涙目になりながら、グローリアは必死にリティに言う。

「それでどうして準騎士団にはいっちゃったんですか?ええっとゲロさん」

「明らかにわざとやっていますよねっ!?」

ピンとたつ長い耳を真っ赤にして怒るグローリア。

「おかしいな……さっきまでシリアスな話をしていたはずなんだけどな……ん、ありがとう、テリア」

空になったカップに新たな紅茶が注ぎ込まれる。

ティーカップの中で液体が踊るたびに鼻孔にいいにおいが届く。

「とりあえず、まずは1人というところか」

「はい。そうですねウィナ様。」

リティとグローリアの言い合いを横目で見ながら、

「仲がいいですね」

「そうだな。ケンカするほど仲がいいっていうし。

準騎士団に間違えて入った理由は後で聞くとして――」

すっと目を細めると、テリアに小声で、

「シャクティ・ルフラン動向はつかめたか?」

「先ほど帰ってきたエルの話によりますと、途中で消えたそうです」

「……どのあたりだ?」

「帝国の国境近くの渓谷のようです」

「帝国……ね。

9割方、スパイだな。ちなみにここの王族は知っていたのか?」

「おそらくは。

エルが言うには、何かの気配がずっとシャクティの近くにあったそうです」

「ということは泳がせておいたと考えるのが普通だな」

だがおよがせておく意味が、ウィナにはわからなかった。

(……色眼鏡で見ているせいか。

何をやっても怪しく見えるな)

ため息をつき、

少し冷えた紅茶で喉をうるおす。

「何にしても、今の時点じゃあ、あせりは禁物か。

テリア。このままシルヴァニア国内の情報を集めておいてくれ。情報の貴賤問わずだ」

「かしこまりました。この後はどう致しましょうか?」

「騎士団は5人。

だとするなら、あと1人探さないといけないんだが――困ったな」

手を組み、思考を広げる。

そんな時だ。

「あ、そういえば隊長からの言づてがあったの忘れていましたね」

とリティが、こっちの話に入ってくる。


先ほどまでリティの一方的な攻撃?でグローリアは床に座り込んで、椅子を抱きしめ「グロじゃないもん。ゲロじゃないもん」

と小声でぶつぶつ言っていた。

正直、萌えた。


「で、アルバのおっさんはなんて?」

「何でも急な仕事が入ったらしく手伝いが欲しいそうです。1人でも決まったら連絡してくれ――と手紙メールをもらいました」

「急な仕事?

まあ別に構わないが、4人でも活動できるのか?」

「したらいけない――という規則はないですよー。

基本は5人組が望ましいということで、特に罰則規定はありませんし」

「……そうか。ならリティ。おっさんに早速連絡をとってくれ。テリアは支度の準備を。状況しだいじゃあ、遠出になるかもしれないし」

「はい」

「了解ですー」

「――でグローリア」

「はいっ」

ぴょんと勢いよく、立ち上がるグローリア。

「グローリアは、準備大丈夫か?早速、騎士団として初任務になるかもしれないが」

「はい。寮の方にはもともと何も置いていないですから、問題ないです」

と答える彼女の頬には涙のラインがうっすらと残っていた。

ウィナは、すっと彼女に手を伸ばした。

「これからよろしく頼む。グローリア」

「は、はいっ!精一杯頑張りますっ」

そうしてウィナ達は堅く握手をした。


「よろしくね、ゲロさん」

「だからっ、わたしの名前はグローリアですっ!!」

ふしゃぁあと毛を逆立てる猫のようにグローリアは、リティを威嚇する。


(大丈夫かな……このメンバーで)

ふと先のことが心配になるウィナ・ルーシュであった。



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