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闘いを制するもの


【闘神】ミーディ・エイムワード。

数多くの武勇と逸話をもった現代の英雄。

しかし、あまりにその功績が大きすぎて、そして彼女自身めったに表に出なくなったために、中には信じていないものもいる。


ゆえに本当に彼女の戦いを見たものは、少ない。

その少数の中に、ウィナ達は入ることになる。

それは、驚愕をもって――。


初手をゆずる――。

そんな心の慢心などを持たず、ミーディは、戦闘が始まるやいなや真っ先にウィナへと駆け出した。

その速さすらすでに目で追えるかどうかレベルの速度。

別に何かの技を使っているわけではなく、ただの身体能力のみでその速度を出していることに気付き、ウィナは内心驚愕する。

瞬く間にウィナとの間合いを詰めると、さきほどまで抜刀していた刀をいつのまにか納刀していた柄の部分に手を置き、刹那の速度をもって抜き放つっ。

「速いっ!!」

キンっ。

こちらが反応できるぎりぎりの速さ。

ウィナは最初の一閃をなんとか自身の赤錆の魔刀で相殺し、

「天帝の怒りをここに――【雷槍エレキ・ジャベリン】!!」

横から響くグローリアの詠唱。

彼女の手から放たれた雷の槍が、ミーディを串刺しにしようとせまる。

「甘いわよっ」

「っ」

腹部に衝撃。

気付いた時には、ウィナは空中を飛んでいた。

そして、ミーディは雷槍が届く前に刀を振るう。

切ったのは空気。

だが、何かに直撃したのかのように雷槍はミーディに当たることはなく霧散した。

「そんなことはないですよ?」

リティの否定。

このときミーディは己が立つ位置を瞬時に俯瞰し、状況から判断できる戦術を数十脳裏に浮かばせ、それぞれに対し対応を打ち出す。

この間、わずか1秒以内。

そして、リティは放つ。

惑星魔法という、対軍用途のオリジナル魔法を。

「っ」

急激な大気圧の変化。

常人よりも優れているミーディの聴覚は、龍の鳴き声のように聞こえた。

同時にばぢばぢばぢと、空と地から雷を構成する因子が形成され、地上ではありえない巨大な雷がミーディへと落ちた。

それはまさに神々の鉄槌。

あまりの爆音に、全員の聴覚が一時的に機能を果たさなくなったがそれはささいなことだ。

ウィナは、すでに体勢を整え爆煙が収まらない中心地をにらみつける。

グローリアも、半身の姿勢でいつでも魔法によるカウンターが放つことができる姿勢を維持し、

リティもまた槍の鏃を大地に向けながらも、警戒を崩さない。

並みの相手ならここで、終わる。

しかし、

「――返すわよ、コレ」

視界の未だ聞かない煙の中から、聞こえた声。

その言葉の意味を理解するよりも早く、ウィナ達の視界は真っ白に塗り替えられた。



やがて煙が晴れ、刀を肩でかつぎながらミーディはさっとウィナ達を見る。

そこに感情は含まれず、ただ状況確認といった様子であった。

ウィナ達は――。

「っ、まさか打ち返してくるとは思いませんでしたねー……」

珍しく、冷や汗をかきながら笑うリティ。

「まったくだ。

まさかアレを圧縮して剣に乗せて放つとはな……」

少なくともウィナにはまだできないレベルだ。

そう。

あの瞬間、ミーディはリティの惑星魔法によって発生した雷を掌であっさりと圧縮し、その圧縮した魔法を赤錆の魔刀にまとわりつかせ、360度横斬りをしたのだ。

それによって雷の属性をもった衝撃波が発生し、ウィナ達は躱す暇もなく直撃したというわけだ。

それでも、全員が立てているのは警戒をしていたおかげだろう。

「【闘神】……」

恐れおののくようなグローリアのつぶやき。

彼女の感じた感情は、リティもウィナも感じていた。

まさしく【闘神】。

あんなことをしておいて彼女は息一つきらしていない。

「――思っていたよりも、弱いわね。

でも」

「っく」

風が――いや、突風のような気の圧力がミーディを中心に放たれる。

「手は抜かないわよ。

貴女達がわたしを殺せないなら、わたしは貴女達を始末してさっさと計画を進めるだけだから」

そう、ひどくつまらなそうに言い放った。


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