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幕間 聖都侵攻

決着はついた。

勝者は、敗者にかける言葉はなく、少女の横をそのまま過ぎ去って行くのみ。

残された敗者は、城門を背に反対方向へ視線を向ける。

小鳥がアリステイルの肩にのりぴぃっと鳴く。

「そう、案の定、聖都は来たんだ。まあ、あそこのKY2人組ならこういう事態を黙って静観しているとは思ってなかったけど」

やれやれとため息をつく。

「表向きは、何かが起こった際の救援、救助のためなんて言っているのが余計にタチが悪いし。」

ぼやきつつ、アリステイルは肩から伸ばした手――指先へと留まる小鳥にささやいた。

「シルヴァニア騎士団、第一位から第十位まではシルヴァニア王国周縁の警戒と場合によっては戦闘。

十一位以下は上位の団長に従うように。

あたしはココで守るって伝えて」

ぴいっと一声鳴くと、小鳥はそのまま大空へと羽ばたいていった。

小鳥が飛び去った大空を一度見て、

【聖剣】を大地に突き刺し、仁王立ちで眼下に広がる城下町、そしてその果てにある侵入者達へと赤い双眸を向けた。

その瞳は、ここから先、邪魔はさせない――。

そう言っているようであった。




シルヴァニア王国の国境沿い、数百人に昇る集団がそこにはいた。

聖都の怪物と呼ばれるエルダム・ウィル・ウィダート。

聖都の聖女エミュレス・F・エターナル。

彼らの護衛役として派遣された聖都を守る剣と盾の軍隊。

彼らは静かにシルヴァニア王国中央都市ピティウムの方角を観察していた。

「……わざわざ聖女殿がここにいらっしゃる理由はないと思うが?」

言外でさっさと帰れ。そう目で語る武装神官長。

「いえいえ。武装神官長エルダム・ウィル・ウィダート。こういう場合こそ、現場で指揮をとらなければ迅速な対応はできませんよ?」

言外では、何寝言言っているの?死にたいの?そう目で語る聖女。

互いに笑みを浮かべているものだから、彼らを守る兵士達はたまったものではない。

はっきりいって胃が痛いのである。

実際、仲が悪くても国の運営やら戦いにおける指揮などといった公務に障害になるようなことはしない。

しかし、その一方公務に支障がないレベルでやりあうのだから武力行使の心配がないとしてもハラハラするのだ。

「――いよいよ、新たな歴史の扉が開くのですな」

「ええ。そしてこれからヨーツテルンは混迷の時代へと進むことでしょう。

今までこの大陸ヨーツテルンにかかっていた呪い――。

それが此度のシルヴァニアの事変において解呪される。

これを待っていた者達が暗躍を始めるでしょうね」

視線を果てに向けたまま、聖女の独白は続く。

「帝国は、未だ復興にはほど遠く。

シルヴァニアもまたこの事変後の結果がどうであれ、国内に乱れが生じることでしょう。

そして、もっとも注意しなければならない国――」

「【楽園】バナウスですな」

「ええ」とエミュレスはうなずいた。

「多種族の安定と目指す。

言葉はいいですが、男性と女性という一種族の中でも衝突があるのに多種族にそれを広めるのは困難を極めるでしょう。」

「しかし、実際彼の国はそれを為してきましたが」

「そうです。

中身はともあれ、【楽園】は多くの種族が住まう理想郷として存在し、運営されています。

それを一手に行っているのが巫女代理コーデリア・ガルヴァン。

彼女は【楽園】の真の支配者が来るまでずっと一人であの国を支えてきました。

そしてこれからも――」

肩にかかる金糸の髪を手で整える。

「わたしはあの女ははっきりいって嫌いですが」

「はっきりいいますな。

聖女たるもの、もう少し外面を良くするべきかと存じますが?」

「ここには他の方々はおりませんし、たまにはいいでしょう。

それに」

すっと振り返り、トップ二人を護衛するための集団に対して、

「わたしのことを聖都で言いふらす、口の軽い者を軍には入れていませんしね」

びくっと身体を震わせる正規軍。

「あまりおびえさせるものではない、聖女殿」

「簡単な戯れです」

そう言い、新都シルヴァニア王国へ視線戻す。

「貴女の舞台。

無事踊りきってみせなさい、【闘神姫】いえ、【世界に滅びをもたらすもの】よ」




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