表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/54

最終話 親しみのある元老院議長ゼネクス

「うむ、では建築ギルドへの予算増加を上奏しよう」


 元老院議事堂で、ゼネクスが議論をまとめ上げる。

 こうして可決された案は後にゼネクスによって、皇帝アーノルドに上奏され、施行されるか決まることとなる。

 今回の件はおそらく問題ないだろう、とゼネクスは踏んでいる。


 議会が閉会し、議員たちと挨拶を交わし、議事堂を後にする。


 あの再誓式からおよそ一ヶ月――人々がゼネクスを見る目は大きく変わっていた。


「あ、ゼネクス様だ!」

「再誓式、最高でしたよ! 本当に感動しました!」

「この間など、夕食の時に議長様の話題が出て、楽しいひと時を……」


 そんな彼らの声に、ゼネクスもにこやかに応じる。


「どうもありがとう。これからも元老院を見守っていてくれ」


 声をかけると、市民たちは礼儀正しく頭を下げる。

 ゼネクスの威厳は今も変わらない。

 しかし、再誓式を大々的に行ったおかげで、ゼネクスが決して威厳だけではない、妻への愛情溢れる紳士だと認識する人が多くなった。

 かつてのようにむやみに恐れられ、「帝国の黒幕」「帝国の支配者」のように言われることはなくなっていった。


 ゼネクスはそのまま徒歩で帰宅する。


「ただいま」


「お帰りなさい、あなた」


「お帰りなさいませ、旦那様!」


 ジーナは穏やかに、メルンは元気一杯に出迎える。


「さっき連絡があって、今夜はリウスたちが来るそうですよ」


「おおっ、楽しみじゃわい!」


 ゼネクスとしては、孫娘のミナに会えることが特に楽しみである。


「ですから、大鍋でシチューを作ってまして。メルンにも手伝ってもらっているんです」


「そうかそうか、ワシにも手伝えることはあるか?」


「でしたら、食器を出して頂けます?」


「もちろんじゃ!」


 愛用の黒いコートを脱ぎ去ると、ゼネクスは食器棚から皿を出し、キッチンに持っていく。

 それが終わると、リビングのソファに座り、小説『威厳ゴッド』を読み進める。威厳ある神が悪党を罰する姿に、ゼネクスは爽快感を覚える。

 そして、明日の元老院議会に思いを馳せる。

 明日も数多くの難題を、ゼネクスは優秀な議員らと話し合うことになるだろう。

 議会で決まった事柄は、グランメル帝国を導く道標となる。


(まだまだ頑張らねばならぬのう……)


 ゼネクスは心の芯に沸き立つものを感じていた。いかなる水や氷であろうと、この熱を冷ますことはできない。

 年は取ったが、ゼネクス・オルディンという議長人生を全うしてみせる。

 その生き様を若い者たちに見せつけることこそが自分の役目だ。バトンを譲るのではなく、バトンを取ってみせろと言い続けてみせる。

 漂ってくるシチューの匂いで、ゼネクスは自然と笑顔になる。


(やりたいことはまだまだあるが、とりあえず今はシチューとミナが来るのが楽しみじゃわい)


 ゼネクスがニヤリとするのを、妻ジーナは見逃さなかった。そして、嬉しそうにニコリとする。

 威厳がありすぎて、親しみもある元老院議長ゼネクスはまだまだ元気である。






おわり

元老院議長ゼネクスの物語、これで完結となります。

最後までお読み下さいましてありがとうございました。


少しでも楽しんで頂けたら、ぜひ評価を頂ければと思います。感想もお待ちしております。

今後の創作活動の燃料にさせて頂きます。


また他にも沢山の作品を書いていますので、よろしければそちらもどうぞ!

今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
遅くなりましたが……。 完結おめでとうございます\(^o^)/ いやぁ~時間がかかってしまいましたが、読了してとっても面白かったです。 個性的なキャラばかりで楽しませていただきました。 実は「親しみの…
一気に全部読みました(≧▽≦) 亡くなるとこまで書かないとこが凄くいいです(人•͈ᴗ•͈)
完結!お疲れ様でした! ゼネクスは再誓式で親しみある人間になれた…か! エタメタ先生らしいオチだと思いました!きっとこれが短編でも同じオチになったのでは?と思います!綺麗な終わりですよ! …感想で誰か…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ