表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/54

第23話 新米メイド・メルン

 メルンがゼネクスらの家に来てからおよそ一週間が経った。

 議会は休みの日、ゼネクスが寝室で目を覚ますと、すかさずメルンが飛んでくる。


「おはようございます! 旦那様!」


「お、おはよう。朝から元気じゃな~」


「元気だけが取り柄ですので!」


「それはいいことじゃ」


「ありがとうございます!」


 リビングの席につき、朝食を取る。


「今日はメルンが作ってくれたんですよ」とジーナ。


「ほう、メルンが。どれどれ……」


 メルンが作ったメニューはハムエッグであった。


「いただきます」


 ゼネクスはナイフとフォークでハムエッグを切り分け、口に運ぶ。


「ほぉ、こりゃ美味い!」


「ありがとうございます!」


「さすがにグレイゾンをずっと世話していただけあって、料理もお手の物じゃな」


「料理だけが取り柄ですから!」


 元気のいいメルンに、ゼネクスは微笑む。

 朝の仕事がひと段落すると、メルンは庭で稽古を始める。木剣で素振りを繰り返す。

 メイド服姿のままだが、その素振りはかなりの迫力がある。


「おお、剣の稽古か?」


「はい、私はこの邸宅の警備も担当するつもりですので!」


「自己流とのことじゃったが、やはり剣筋はよいな」


「剣だけが私の取り柄ですから!」


「おぬし、取り柄が多いんだか少ないんだか、よく分からんのう……」


 ゼネクスはやや困ったような笑みをこぼした。



***



 昼すぎ、いつものようにリウス一家がやってきた。


「おじいちゃ~ん!」


「おおっ、ミナ~! 会いたかったぞ~!」


 いつも通りのやり取りを経てから、ゼネクスはメルンのことをリウスたちに紹介する。

 家族に嘘はつけないとして、ありのままを話した。

 実の父親が命の危機にあったということで、リウスはさすがに驚いていた。


「暗殺……!?」


「うむ、なかなかいい腕じゃった。ワシに剣の心得がなかったら危なかったかもしれん」


 リウスはメルンを見る。メルンは申し訳なさそうにしている。


「まあ、父さんが許したのなら、僕から言うことは何もないよ。よろしく、メルン」


「は、はいっ!」


 ミナがメルンに近づく。そして、覗き込むようにじっと見つめる。


「あなた、おじいちゃんを殺そうとしたの?」


「……うん」


 ミナは祖父ゼネクスが大好きである。そのゼネクスをメルンは紛れもなく殺そうとした。


(ミナとメルンは仲良くなれるかのう……)


 ゼネクスにも不安がよぎる。


「でも、今はそうじゃないんでしょ?」


「そうだ……」


 メルンは小さくうなずく。


「じゃあ、いい! 許してあげる!」


「あ、ありがとう」


 ゼネクスの心配は杞憂だった。

 二人の仲を後押しするように、ゼネクスが提案する。


「メルン、ミナと遊んでやってくれんか」


「は、はいっ!」


「メルンちゃん、行こう!」


 邸宅の庭でメルンとミナが遊ぶ。

 メルンの方が年上だが、ミナの方が遊びを知っているので、リードする形になる。


「メルンちゃん、いっくよー!」


 ミナがゴムボールを投げる。

 メルンはなんなくキャッチし、そのまま投げ返す。が、強く投げてしまい、ミナの顔にぶつかってしまう。


「あっ、大丈夫!?」


「平気! もっと強くてもいいよ!」


 この光景を見てゼネクスはニヤリとする。


「さすがワシの孫じゃ」


「いいや、僕の子だね」リウスが対抗する。


「なんじゃい、やるのかリウス」


「望むところだよ、父さん」


 リウスの妻マチルダは「あなた、やめてよ」と口を挟み、ジーナはにこやかに笑む。


「うふふ、似た者同士ねえ」



***



 リウスたちは日が沈む前に帰宅し、時刻は夜になった。

 夕食も済ませ、夜は更けていく。


「お休みなさいませ、旦那様! 奥様!」


 メルンは桃色のパジャマ姿になり就寝する。

 ゼネクスとジーナは二人、リビングでメルンについて話す。


「どうやらメルンも馴染めそうね」


「うむ、親とも離れてしまい、ずっと祖父の世話をしてきた人生じゃったが、ここでの暮らしは楽しんで欲しいわい」


 ジーナは夫の見せた優しさに、小さくうなずいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おお(⊙⊙)‼ 多彩なメルンさん。さっそく大活躍ですっかり馴染んでますね。 >メルンの方が年上だが、ミナの方が遊びを知っているので、リードする形になる。 私の場合……。 お姉ちゃんがアウトドア派で私…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ