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ep.9 グランドクエスト

試験的にタイトル変えました

 運営報告用の画面を開いて、『エラーアイテム、イベント進行バグ』と入力する。

 運営からの反応を待っている間に、取得した魔法を確認しておこう。


 魔法: 〈アストラルコーパス〉

  - 5分間HPダメージをMPダメージに変換。被ダメージ計算に基礎INT補正。消費MP10。CD40s。


 魔法: 〈アブソルプティオ〉

  - 一分間、対象の最も高い基礎ステータスを上限50%減少させる。ステータス減少分の半分を自身の補正INTに加算。重複不可。消費MP30。CD20s。


 「メニュークローズ。〈アストラルコーパス〉〈アブソルプティオ〉」


 掌に一瞬魔方陣が出現し、体を黒いモヤモヤを纏う、これはアストラルコーパスの効果だろう。同時に、地面を這うように広がった黒い衝撃の波はアブソルプティオの方だろうか、円形にそこそこ広い範囲は実用性が高い。実際に戦闘で使って見ない限り分からないが、当たりスクロールだったようで何より。


 運営からの反応は……まだない。手間取っているのか、単純に対応が遅いのか。

 出来る事なら前者であって欲しい。

 ……ステータスも見ておこう。


 プレイヤー〈フィーニス〉

 Lv:10

 HP: 30/30 MP:370/410

 STR: 1(+10)

 VIT: 1(+23)

 AGI: 1 (+10)

 DEX: 1 (+10)

 INT: 80 (+65)

 装備-

 右手:〈繧、繝吶Φ繝域ュヲ蝎ィ〉

 頭:〈リヴィディナの髪飾り〉

 胴:〈リヴィディナの遺装〉

 手:〈胴装備共有〉

 脚:〈胴装備共有〉

 足:〈胴装備共有〉

 装飾品:〈ハヴォイナのブローチ〉

 スキル‐

 アクティブ:〈スラッシュ〉〈フルスイング〉

 パッシブ:〈不撓不屈〉〈不退転〉

 魔法:〈アストラルコーパス〉〈アブソルプティオ〉


 「ごちゃごちゃしすぎ……右手に変な物ついてるから、大剣に戻せば多少変わるとはいえ、結構上がった感じはあるね」


 思えば、大剣を装備してもしなくてもAGIは1だったが、今なら実績のステータスボーナスのおかげで、大剣を外せばAGIが11ある。

 イデアオンライン人生初の短距離走が今なら可能という事だ。


 『運営メッセージを受け取りました。メッセージから確認してください』


 ──短距離走は後回し。

 メッセージタブを開くと、一件の未開封メッセージが追加されていた。


 メッセージ:〈進行不可バグへのお詫び〉

 ‐日頃より「イデアオンライン」を遊んでいただきまして、まことにありがとうございます。進行不可バグへの対処として、現場へと運営を派遣致します。

 お客様には多大なご迷惑おかけ──


「メニュークローズ……待っていれば来る、と」

 

 メッセージを開封してからどのくらいで到着するのだろうか――と思ったら既に隣に見知らぬ……見知った顔の人物が立っていた。


 『お待たせいたしました。本事案対処を行います自律思考AIαXV型。アルファとお呼びください』


 隣に立つアルファの顔は非常に申し訳ないといった感情を全面に表現している。相変わらずAIとは思えない表情変化だが、反して無機質な目に少しの安心感を覚える。


 「さっきぶりですねアルファ。この進行不可バグ、直せそうですか?」


 アルファは一瞬まばたきをするような動作の後、軽く頷いた。


 『はい。現場状況は確認済み、即座に対処いたします……ですが、まずは謝罪を』


 謝ろうとするアルファに手をむけて制する。

 勿論謎の物体が張り付いた右手。

 うにうにと蠢く右手を見ても不快感を表に出さないのは、流石AI……。

 ……ちょっと嫌そうな顔になった。


 「謝罪は必要ありませんよ、対応してくれるだけで十分ですから」


 アルファは少し微笑んで頷いた後、私がアルファに向けて差し出していた手を下から支える様に触れる。


 『修正作業を開始します』


 瞬間、私の右手にこびりついていた不気味な物が液体状に変わり、掌から零れ落ちた。

 ドロリとした液体は零れ落ちながらも螺旋状に蠢き、絡まりながら細身の大剣へと姿を変えた。


 元初期装備の大剣に比べて細身の剣身、黒一色に少しだけ赤の指し色が入った剣。

 細身ではあるが、しっかりと重量武器区分ではあるようで、剣先を地面に沈める。


 「恰好いいですね」と呟くと、アルファも満足そうに頷いた。

 性能は後で確認するとしても、武器の見た目はとても気に入った。


 『修正作業は終了しました。仔細につきましては、メッセージをご確認ください』


 『それでは』と、お辞儀をして消えていくアルファに、軽く腕を振る。

 運営からメッセージを受け取った通知も同時に届いたが、特段興味も無い。

 それよりも今は、〈グランドクエスト〉の方を進めていこう。


 相も変わらずに虚ろな瞳で「リヴィディナ、リヴィディナ」と壊れた様に呟くハヴォイナ。……実際、先程まで壊れていた事に違いはない。


 「ハヴォイナ」


 声をかけると、ハヴォイナは呟きを止めて顔を上げる。瞳が大きく開かれ、彼の眼に少しの生気が宿る。ここまでは最初に試した通り。


 「リヴィディナ……? 何故ここに……」


 グランドクエストの詳細や、ヒントは何一つない。

 選択肢一つないアドリブでイベントを進めていくのは、リアルとゲームの入り混じったVRMMOの醍醐味なのかもしれない。


 「迎えに来ました。貴方を」


 ハヴォイナは一瞬、目を細め、まるで何かを思い出そうとしているかのように瞑想にふけった。


 「それは、……あの日の。──お前を手にかけた日の言葉」


 ハヴォイナの言葉に耳を傾けながら、右手に持つ大剣を握りしめる。

 ハヴォイナの視線がその大剣に留まり、不安げに揺れ動いた。


「その杖……まだ使っていたんだな」


 これが杖に見えているか。とは言わない。


「はい。この杖には思い出が沢山詰まっていますから……。ハヴォイナは、覚えていますか?」


 適当にそれっぽい返事をして、情報を引き出す。少しでも良い方向に進めるには情報が必要だ。今のままでは、情報が足りな過ぎる。


 ハヴォイナはしばらく大剣を見つめた後、顔をゆがめた。

 顔を片手で抑え、指の隙間から言葉を漏らすハヴォイナは、苦しみに耐えている様に見える。


 「…忘…る筈が…い。リヴィ…ナ、…に…杖…一緒に贈っ…言葉を覚えて…か」


 言葉に詰まりながら、嗚咽の様に言葉を漏らすハヴォイナ。言葉から得られる断片的な情報。〈杖と一緒に贈った言葉〉が重要なのかもしれない。

 それを知る術が足りな過ぎる。


 「……当然です。私にとっても、貴方にとっても、大切な言葉です。どれだけ時間が経とうとも忘れる筈がありません」


 ハヴォイナは一瞬黙り込み、そして突然激しく頭を振った。

 広間の四方に描かれた魔方陣の一つが強く光を灯し、強い緊張感が空間を支配する。


 「嘘だ……。覚えているなら……ドウシテ此処に来たんダ。──オマエはリヴィでぃナじゃない。」


 覚えていないは外れかと思ったが、覚えている、という返事も駄目みたいだ。正解は言葉をピンポイントで当てる事だろうか。

 だとしたら、本来はどこかで情報を得る必要があったのかも知れない。


 どちらにせよ、現状から正解を導くのは難しいが過ぎる。会話の正解択も、クエストの終着点も分かりようがない。


 ならば早々に諦めて――ゴリ押すしかない……!


「ハヴォイナ、私を見てください。私はリヴィディナ──生きて、貴方を迎えに来たんです!」


 ハヴォイナの瞳が揺れ動く。変に会話が進むよりも先に、このままたたみかける。


 「思い出してください。貴方がくれたこの杖と、あの日の言葉──あと服と髪飾りとブローチと顔とか!」


 広間の四方に描かれた魔方陣から光が消える。

 やったか!?



 「……リヴィディナ。もしお前が本当にリヴィディナなら……。

 ──ハヴォイナではなく、もう一度あの日と同じように呼んでくれないか」


 それは分かる訳が無い。

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