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ep.7 ゴーレムとの戦い

 ゴーレムとの戦いは……地味すぎた。クールダウンごとにスキルを発動し、地道にゴーレムの腕にダメージを与える。

 完全にパターン化した戦闘は高難易度に挑戦するというより、集中力を試されている様で、ほぼほぼ無心に近い状態で戦い続ける。


 何度目かの繰り返しで、ついに大剣がゴーレムの石の腕に深々と食い込み、ゴーレムの腕は砕け散った。


 ――ダメージが見えて嬉しい反面、これはまずい。


 腕を失えば挙動が変わる可能性がある。パターンが崩れるのは避けたい。


 ゴーレムは片腕を地面につけ、前のめりになって咆哮を放つ。耳をつんざく音と共に、衝撃波が広がった。


 「ノックバック……!」

 ゴーレムの放った咆哮によって、体が軽く浮き、体が後方に吹き飛ばされる。

 HPは……減っていない。

 ダメージ無しのノックバックスキル。


 すぐに体勢を整えたが、ゴーレムとの距離が大きく離れてしまった。距離を詰める前に、ゴーレムが再び動き出す。


 ゴーレムの額に埋め込まれた黒の導石が激しく明滅し、周囲の石や土が浮かび上がる。それらが徐々にゴーレムの身体に集まって――「〈フルスイング〉!」

 

 ――モーションスキルで体が自動的に動き出す。ゴーレムとの距離は広く、大剣が大きな弧を描き空を斬る……



 ()()()()()()()()()()()

 

 キャンセルと同時に両手を離し、フルスイングの勢いを利用して大剣を一直線にゴーレムへと投げた。

 

 大剣はゴーレムの額の中心、黒の導石を貫く。


 瞬間、導石が爆発的に輝きを増すと、衝撃音と共にゴーレムの頭部が破裂する。頭部を失ったゴーレムの身体はゆっくりと崩れ落ち、石片が地面に散らばる中、黒の導石と大剣だけが残された。


『実績〈大番狂わせ〉〈不撓の精神〉〈不屈の精神〉〈大剣使い:初〉〈孤高の戦士〉〈無傷の挑戦者〉〈賢人〉を開放しました。スキル〈不撓不屈〉〈不退転〉を獲得しました。レベルが10に上がりました』





 「ふう……」

 危なかった……か分からないけれど、最後は少し焦った。


 ゴーレムの残骸が地面に散らばる中、私は黒の導石と大剣を拾い上げる。周囲は再び静寂に包まれ、先ほどの戦闘が嘘のように静かだった。


 第二形態、みたいなモーション変化も見てみたいとは思いつつ、楽に倒せるならそれに越したことは無い。

 メニューを開いて、獲得した実績とスキルを確認する。


 実績: 〈大番狂わせ(ジャイアントキリング)

  - 圧倒的な強敵に勝利を収めた証。

〈 ステータスポイント+10〉


 実績: 〈不撓の精神〉

  - 通常の攻撃が自身の体力上限を上回る強敵との長期戦を制した証。 

 〈不屈の精神を要する〉


 実績: 〈不屈の精神〉

  - 物/魔に対する強靭な耐性に対して、物/魔の攻撃のみを用いて強敵を制した証。

 〈不撓の精神を要する〉


 実績: 〈大剣使い:初〉

  - 大剣を使用し強敵を制した証。

〈大剣攻撃時:AGI+5〉


 実績: 〈孤高の戦士〉

  - 単独で強敵を倒した証。

〈単独行動時:全ステータス+5〉


 実績: 〈無傷の挑戦者〉

  - 戦闘中、一度もダメージを受けずに強敵との勝利を収めた証。

〈最大HP時:全ステータス+5〉


 実績: 〈賢人〉

  - 経験の全てを知力の向上に傾倒した者の証。

〈魔法使用時:基礎INTの50%を追加補正〉


 スキル: 〈不撓不屈〉:パッシブ

  - 与ダメージに耐性貫通:小。被ダメージに耐性:小。


 スキル: 〈不退転〉:パッシブ

  - パッシブ:死亡時にHPを1で蘇生、発動後5秒間継続。30秒間アクティブスキル〈不退転〉を開放。CD20h。

 ‐アクティブ:パッシブ発動中の被ダメージに比例して1分間全基礎ステータスを上昇。使用後にスキル封印。



 「結構いい感じだけど、大剣スキルや魔法が覚えられないのはそろそろきついかもなぁ……」


 大剣も魔法も、習熟度がスキルの習得に影響する。基礎STRが足りない今、まともに大剣を扱えず、魔法も使っていないため、新しいスキルを覚えるのは難しい。


 「まぁ、それを考えるのは、このクエストが終わってからかな」


 ゴーレムから手に入れた〈黒の導石〉を、遺跡の中央に向けて投げ付ける。〈黒の導石〉は一つ目の石と同じように浮かび上がり、空いていた柱のくぼみへと嵌る。


 遺跡が再び震え始めると、柱の間に置かれていた石棺が地面へと沈み込み、黒い碑石の表面に白色の光が浮かび上がった。


 ゴーレムの登場によって抉られた遺跡のクレーターを避けて碑石に近づくと、沈み込んだ石棺の後には地下へと続く穴が顔をのぞかせている。

 どうやらクエストはまだ続くらしい。


 下りる前に、碑石に浮かび上がった白色の光を眺める。

 一見すると文字の様にも見えるが、少なくとも日本語では無い形をしている。


 「魔……ハヴォ……ナ……?」


 目を凝らすと、何となく文字が理解できるような雰囲気をを感じる。

 

 暫く目を凝らしていると、碑文の内容を理解できるようになってきた。

 ゲームシステムのおかげとはいえ、見たことも無い文字の読み方が短時間で読める様になるのは不思議な感覚だ。


 『スキル〈古言語理解:Ⅰ〉を獲得しました』


 「魔導士ハヴォイナ、ここに眠る……なるほど」


 碑石の下にできた穴は、近くに寄ってみると穴では無く、石造りの階段になっていた。左右の壁に等間隔に埋め込まれた石が光を発して、階段を照らしているのも確認できるが、先は深く、何処までも続く様な深淵を覗かせている。

 



 階段を一歩一歩慎重に下りていく。階段はどこまでも続いているようで、歩いても歩いても終わりが見えない。

 始めはひんやりとした冷たさが、徐々に肌を刺す冷たさへと変わって来た。


 等間隔に埋め込まれた光る石と、段差を下りる度にガツガツと音を鳴らす大剣の音の所為で、どれだけ進んだかも徐々に分からなくなってくる。


 ――やがて、階段の先に広がる広間が見えてきた。


 広間に足を踏み入れると、四方の壁には魔法陣が描かれており、かすかに光を放っている。中心には巨大な石棺が鎮座し、その周囲には幾つもの燭台が炎を揺らめかせていた。


 「これが……魔導士ハヴォイナの墓」


 広間の静けさと荘厳な雰囲気に圧倒されながらも、慎重に石棺に近づく。手を伸ばして石棺に触れると、冷たい感触が指先に伝わってくる。


 突然、石棺が微かに震え、広間全体に共鳴するような低い音が響き渡った。

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