表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

ep.5 実績とスキル

 初戦闘は無事に終わったが、その後の問題に気が重くなる。戦闘自体はこれまでのVRゲームで培ったスキルでなんとかなるが、戦闘のたびに大剣を降ろし、終わるたびに背負い直すか、インベントリを経由して装備し直す。

 これでは余りにも非効率すぎる。



「一々仕舞う必要もない……か」


 少し考えた後、私は大剣を背中に戻すのを諦め、地面に引きずって持ち歩くことにした。

 臨戦態勢を維持しやすく、時間効率も良くなる。

 何より、AGIが1なので、引きずってもこれ以上遅くなることはないからだ。


 ──AGIが最低値の移動速度は遅いが、それ以上下がらないという小さなメリットもある。両手で大剣を引きずったとしても、片手で引きずったとしても、移動速度は変わらない。現状に慣れれば、あとは全てメリットになり得る。

 ……勿論、足が遅い事に変わりは無い。


 片手で大剣を引きずりながら歩いていると、今度は道の先に二体の平原うさぎが現れた。ゆっくり近づいてくる私を確認すると、警戒しているようでジッと固まったまま動かない。


 今の私のステータスでは二体と正面から戦うのは効率が悪い。少し工夫しないと。


「どうしようかな……」


 一瞬、思案していると、一匹のうさぎが飛びかかってきた。素早い動きに反応し、再び大剣を引きずりながら構えようとするが、やはり重い。

 咄嗟に身を引いて回避する。もう一匹のうさぎもまた、連携攻撃と言わんばかりの時間差攻撃を仕掛けてくる。


「考えても仕方ない、かな」


 もう一匹のうさぎの突進に合わせて、肩に沿わせる様に大剣を動かし、盾代わりに使う。狙い通り大剣に向かって突撃したうさぎが衝撃で跳ね返る。

 肩から伝わった衝撃でHPが少し減ったが、問題ない。


 最初に突進を繰り出したうさぎにむけて、背負った大剣ごと倒れ込むように振り下ろす。頭部を分断する勢いで振り下ろされた大剣だったが、当然一撃で倒すには至らない。 


 背後から飛び込んでくるうさぎを半身で避け、追撃で横一線に斬る。

 戦いは地道だが、徐々に勝利が見えてきた。何度も突進してくるうさぎたちを、同じ方法で迎え撃つ。やがて、一匹目のうさぎが動かなくなり、続いてもう一匹も力尽きた。


「ふう、やっと倒せた……」


 倒したうさぎたちの残骸が光の粒子となって消え、ドロップアイテムが地面に残る。平原うさぎの皮と少量の経験値を手に入れた。


『実績〈ふるすいんぐ!〉〈初級武闘派魔術師〉を開放しました。スキル〈フルスイング〉を取得しました。レベルが2に上がりました』


 メニューを開き、実績とスキルの詳細を確認する。


 実績: 〈ふるすいんぐ!〉

  - 大剣に振り回された者の証。

〈フルスイングの習得〉


 実績: 〈初級武闘派魔術師〉

  - 魔法使いながら、物理戦闘もこなす者の証。

〈物理攻撃力がわずかに上昇〉


 モーションスキル: 〈フルスイング〉

  - 大剣を全力で振り回し、範囲内の敵にダメージを与える。STRに応じてダメージが増加。CD(クールダウン)10s。


 「フルスイング……モーションスキルを手に入れるのは嬉しい。これで少しは戦闘が楽になるかも」


 スキルには大きく分けて魔法、アクティブ、パッシブ、モーションの種類がある。

 モーションスキルはVRゲーム特有で、〈フルスイング〉なら発動と同時に大剣を振り回す動作が自動的に行われる。

 無理な体勢では発動できないが、発動後は任意に動作を解除できる。うまく使えれば強力なスキルになるという訳だ。

 

 それから、レベルが上がって新しく手にしたステータスポイントは引き続きINTに全部振っておく。

 今の所、全く意味の無いステータスだが、今更他のステータスを上げてしまうのはつまらない。


 今後も考えて、ステータスポイントは全てINTに自動振り設定をしておこう。


「メニュークローズ。──さて、大森林までは後どれくらいで着くのかな」


 平原は広大だが、大森林まではそう遠くない。ゆっくり歩いても大して時間はかからないが、一度か二度は戦いになりそうだ。


 数十分平原を歩く間に、他のプレイヤーとすれ違う。目が合うことはあっても、会話はない。他のプレイヤーが戦闘している様子を見てみると、ほとんどが平原うさぎを一撃か二撃で倒している。それも、特に身構えることもなく撫で斬りにする様子から、うさぎは相当弱いことがわかる。


「……いよいよ大森林か」


 先ほどのプレイヤーたちと比べると、私の攻撃力はかなり低い。戦闘速度から推測すると、平原のプレイヤー平均レベルは5くらいだろう。

 ……もう少し平原でレベル上げとスキル集めをしてもいいかもしれない。


 「とはいえ、レベルを上げてもINTに振る限り攻撃は上がらないし、スキルが手に入るとも限らない」


 ──まずは目前のモンスターを倒してから考えよう。


 ようやく大森林の入り口が見えたという所で、足早に駆け寄ってくるモンスターの姿が見える。緑色の肌に中肉中背、ぽっこり膨れたお腹。ぎゃっぎゃっと喚きながら棍棒を振り回すその姿は、まさにゴブリンだ。


「人型モンスター、けど……あんまり賢くはなさそうだね」


 ゴブリンは小さな目をぎょろつかせ、棍棒を振り回しながらこちらに向かってくる。私も大剣を引きずりながら歩み寄る。距離は10歩もない。


 今まで通り、迎え撃つように大剣を横一線に振るう。うさぎと比べて大きなゴブリンは、一撃を受けても大きくは吹き飛ばないが、それはかえって好都合だ。


 振りぬいた勢いでふらついた身体をそのままに、大剣を左手一本に持ち替える。

 今のSTRでは、片手で大剣を振るう事は難しいが……。 


「〈フルスイング〉!」


 スキルを発動させると、体が自動的に動き出す。片手で握られた大剣が大きな弧を描き、周囲の空気を切り裂く音が響く。ゴブリンの目が一瞬見開かれ、衝撃と共にゴブリンは後方へ飛ばされる。


「片手で振っても、スキルを使わない時よりはダメージが上かな……?」


 ゴブリンは地面に叩きつけられ、痛々しい声を上げたが、すぐに立ち上がって再び向かってきた。その動きは遅く、ダメージを受けているのが明らかだ。


「クールダウンは10秒、連発は出来ないけど十分強い。……いいね」


 迫って来たゴブリンが棍棒を振り上げた瞬間、私は足を踏み込み、大剣を振るう。しかし、ゴブリンは前の一撃で学習したのか、雄たけびをあげて後ろに飛びのいた。

 大剣の長さが幸いして剣先がゴブリンを切りつけるが致命打には至らない。


 態勢を崩したゴブリンは尻もちをつきながら棍棒を振り回し、雄たけびをあげて威嚇している。

 ゴブリンの足はがくがくと震え、立ち上がることが出来ないでいる様子だった。


「恐怖とか、あるんだ」と呟くと、ゴブリンはさらに怯えたように叫び声を上げる。


 ──10秒が経ちフルスイングのクールダウンが終わった。


ep.1~5まで公開しました。 マイペースに更新を続けて行きますので、よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ