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5 宣言と驚愕

「…誰も、居ないよ」

 和美が言う。


「何言ってんのよ!」

 おもわず、あたしは立ち上がって、後ろの席の美也の腕を掴んで叫ぶ。

「此処に居るでしょ!美也が!」


 教室の空気が一変する。


「ショコ…」

 和美が美也の方を見る。

「本気で言ってんの?」


 どういう意味よ、ここに美也が居るってのに何言ってるのよ。

「何よ!みんなして変なこと言わないでよ!」


「武田さん達まで引き入れて何やってんの!?事と次第によっては本当に怒るからね!」

 和美も、その後ろの二人も固まったまま何も答えない。

 ここに美也が居るのに何をわけのわからないことを言ってるのか、だいたい他の生徒たちも美也が死んでなんかいないことは見りゃ分るでしょうに。


「えぇー、何これ!」

 突然、うしろで美也が叫ぶ。

「祥ちゃん!何か変!」

 制服を掴んで美也が体を寄せてくる。

「何、どしたの」

 ひとまず和美とのにらみ合いを中断して美也を振り返る。

「見てこれ!」


 は?


 視線の先に見えるものに理解が追い付かない。


 美也の華奢な身体があたしの背中から腰に張り付いている。で、あたしの背後には美也の机があって、それもあたしの腰にぶつかっている。

 普通に考えれば美也は机の向こう側に居て、あたしとの間には美也の机があるわけで、あたしの腰には机は当たっても、美也の腰がぶつかるはずはないの。

 だけど

 あたしの腰には美也の机がぶつかっているし、その上、美也の身体も密着したまま。

 白いセーラー服の上着はストンと下がってそのまま黄土色のスチール机に続いている。


 慌てて机の下を覗き見ると、紺のスカートと白い靴下、ピンクのゴム底の上履きがちょうど上半身から続く場所に在るのが見える。まったく違和感がない。


 途中に存在するスチール机を除いては。


「何、これ、どうなってるの」

 よくわからないので美也に聞いてみる。

「そんなの、あたしが聞きたいよ!」

 けど、当人にもよくわからないらしい。


 イリュージョン?

 いつのまに覚えたんだろう。

 そんな現実逃避の思考に美也の一言がとどめを刺す。

「あたし、やっぱり死んじゃったのかな」

「ちょ、何言ってんのよ!」

 反射的に叫ぶ。


「だって!」

 そう叫ぶと美也はあたしの腕を振りほどいて和美の方に向かう。手のひらを広げて和美の前に突きつけるけれど、和美はまばたきもしない。

 性質たちの悪い冗談でも、いじめでも、和美に美也の事が見えてるんなら、反射的に避けたり目をつぶったりする筈。

「見えてないんだよ!ほら」

 美也は勢い込んでこちらに振り返る。


「うぁ」

 けれど、和美に向かった動きをちゃんと止めないうちに身体を回してこちらに向き直ろうという自分の運動能力をかえりみない動きに足がもつれる。

 和美の方へ向かう動きに回転運動が加わって美也の身体は背中から和美への激突コースに乗った。


「危ない!」

 慌てて腕を伸ばすけど、間に合わず、美也はそのまま和美に向かって倒れ込む。


 そして、あろう事か、


 倒れ込む美也の身体はそのまま和美を突き抜けた。



 確実に周りの机を巻き込んだ筈なのに、机も動かない。



「やっぱり死んじゃったんだねあたし」

 そう言いながら美也は立ち上がる。

 和美を避けて、でも並んだ机を動かすこともなくあたしに向かってくる。


「そんで、ユーレーになったんだ」

 とんでもないことを、達観したような薄笑いを浮かべながら美也はあたしを見る。

「何言ってんのよ、こんなにしっかり見えてるし、掴めるし、それにさっきミルキー喰ってたじゃない、そんな幽霊なんて居るか!」

 あたしの叫び声が教室中に響き渡る。

「でも、ほら、祥ちゃんは特別だから」


 美也はそのままあたしの横をすり抜けると、教室の廊下側に向かう。

「ちょっと、美也…」

 何考えてんの、どうしてそっちにわざわざ行く訳。


 そんな奴のところに行ってどうするつもり。



「黒田くんは、祥ちゃんの事どう思ってる?」



 何 て こ と 聞 く の よ ! ! !



 いや、待て、そうだ、さっきから美也の言ってること誰も聞こえてない。

 うん。

 そうだ、彼だって今美也が言った事なんか聞こえてる筈がない


「え、なに、誰」



 し っ か り 聞 こ え て る ! !



「もしかして、根岸さん?」


 彼の言葉に教室中がざわめく。

 彼の前に座った男子生徒が慌てて席を立とうとしてつんのめる。


「えー、黒田君聞こえるんだ!!凄い!」


 凄いってなんだそれ。


「で、どう思ってるの?」


 だから、どうして今それを聞くのよ!


「なんで、それを今聞くかな」

 あ、被った。


「大事なことだから」


 そう、大事。いや、違うそうじゃない。


「えと、根岸さんは、その、幽霊って事?」


 そう、それ、なんでそんなこと言うわけ。


「うん、そうみたい」


「良いの、それで?」


 良 く な い !


「いや、良くなくっても仕方なくない?生き返るってわけにも」


 ! ! !


「それだ!」


 何で気づかなかったんだろう、そうだ、死んでしまったのなら生き返らせればいいんだ。

 教会へ連れて行ってお金を払えば・・・ってゲームじゃない。


 だけど。


「いくよ!」


 あたしは、美也を取っ捕まえて教室を出る。

 変な男の近くを通ったけど、目もくれない。うん、気にしてない。


「行くって、どこに?」

「あ」

 美也っていまどこにいるんだろう?

「どこの病院?」

 和美に向かって確認する。

「どこって…?」

「だから、美也が運ばれた病院、知ってるんでしょ?」

「ああ、うん、えっと」

 和美がのろくさと答えた病院は少し離れた、でも歩いていけない距離じゃない大きな総合病院。何度か行ったことがある。そのときはバスだった気がするけど。


 行って、生き返ればオールオッケー。だよね。



「あ、津村さん、どこ行くの」

 昇降口に向かっている途中で担任の亮子りょうこ先生とすれ違う。

「気分が悪いので早退します」

 速足で階段を駆け下りながら言っても信用されないよね。

続きは明日のこの時間に

感想お待ちしています。

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