15 友情と和解
次の日、ショコは学校を休んだ。
救急車で病院に運んで、点滴を打って、念のために一晩泊っていけって事になった。
まあ、美也の件から始まって、車に追いかけられたり、先生に殺されかけたりしたんだから当然といえば当然だよね。
という話をお京さんたちにしていた昼休み。
皆がお弁当をしまい始めたころにショコがやって来た。
「あれ、あんた今日は休むんじゃなかったの」
たしか、担任代理の副担任が朝そう言ってた筈。
学校も朝からてんやわんやで午前中の授業の半分は自習になってしまってた。
「一晩寝て元気も出たし、二人にお礼も言ってなかったから」
二人?
美也を外すと、残りはあたしと黒田か…
「あたし、何にもしてないけど」
「病院まで付き添ってくれたんでしょ」
ああ、確かに。
まあ、美也だけじゃ何もできないし、黒田が付き添うのもちょっと色々面倒そうだからね。
「なるほど、じゃあお礼を言って貰いましょうか」
そう言って、腕を腰に置き、薄い胸を張ってふんぞり返る。
「…昨日はありがとう。美也からの電話に出てくれて、病院まで付き添って母にも色々と説明をしてくれて」
一瞬、鼻白んで、ショコは丁寧に言葉を紡いでくる。
うん、突っ込んで欲しかったんだけど、無理か。
「うん、確かにお礼の言葉受取りました。じゃあ、次はもう一人にお礼を言わなきゃね」
教室の後ろに腕を引っ張って連れて行く。
「さて、黒田君、ショコがお礼を言いたいってさ」
背中を押して、黒田の前に突き出す。
昨日のアチチぶりを見てたものだからつい調子に乗ってしまったのが失敗だった。
ショコの表情がすっと消える。
能面の様に感情のない顔で、感情のこもらない言葉を繰り出す。
「黒田君、昨日はありがとうございました。本当に助かりました。色々とご迷惑をおかけしましたが、今後はもうそんなことは無いと思いますので、これまで通りにして下さい。」
え、なにそれ。
驚いているあたしと、黒田を置き去りにしてショコは深く頭を下げると、くるりと踵を返して自分の席に行ってしまった。
うわ、失敗した。
ごめん、黒田。
◇ ◇ ◇
もっと早く来るつもりだったのに、退院の手続きと家でのシャワーと早めの昼食に思いのほか時間がかかってしまった。
母が心配だというのと、学校と話があるというので送って貰ったので何とか昼休みの間に着く事が出来た。
昼休みも半ばが過ぎ、お昼を食べ終わった頃合い。
教室に入ると、視線がすごい。
騒めきもだんだんと静まる。
「あれ、あんた今日は休むんじゃなかったの」
和美が席を立って声を掛けてくる。
変わらない態度に少しホッとする。
「一晩寝て元気も出たし、二人にお礼も言ってなかったから」
「あたし、何にもしてないけど」
本気でそう思っているのだろう。
確かに昨日の件では大活躍したのは美也だものね。
「病院まで付き添ってくれたんでしょ」
もちろん、和美がしてくれたことはそれだけじゃないんだけど。
一番わかりやすい答えを返す。
「なるほど、じゃあお礼を言って貰いましょうか」
そう言って、腕を腰に置き、薄い胸を張ってふんぞり返る。
えと、なにその態度は。
「…昨日はありがとう。美也からの電話に出てくれて、病院まで付き添って母にも色々と説明をしてくれて」
どう突っ込んだらいいのか判らないので、まじめにお礼を言う。
「うん、確かにお礼の言葉受取りました。じゃあ、次はもう一人にお礼を言わなきゃね」
和美がそう言いながら、あたしの腕を引っ張っていく。
教室の後ろ。
怪訝そうな顔をして、あいつが座ってる。
「さて、黒田君、ショコがお礼を言いたいってさ」
背中を押され、目の前に突き出される。
クラス中の視線が集まってる気がする。
自意識過剰かもしれないけど。
目の前に居るあいつの視線も痛いほど感じる。
昨日はもっと近くに居た。
抱きかかえてくれた。
担任から助けてくれた。
言葉では尽くせない程、感謝しているけど。
ゴクリと唾をのみ込む音が大きく聞こえる。
緊張して鼓動が大きく聞こえる。
表情筋が強張る。
どこか遠くで自分の声が聞こえる。
「黒田君、昨日はありがとうございました。本当に助かりました。色々とご迷惑をおかけしましたが、今後はもうそんなことは無いと思いますので、これまで通りにして下さい。」
他人行儀に深々と頭を下げる。
何を言ってるんだろう。
全然お礼になって無いし。
逃げ出したい。
だけど、そうも行かない。
ゆっくりと自分の席に向かう。
椅子を引き出し、ゆっくりと座る。
視線を感じるけど、振り向きたいけど、振り向けない。
あー、もうバカ。
◇ ◇ ◇
祥ちゃんがすたすたと自分の席に戻ってしまうのを二人は茫然と見ている。
クラスの皆も、何が起きたのかよくわかってない。
和ちゃんたらもう。
祥ちゃんはそういうの全然ダメなんだから、こんな衆人観衆の中で仲直りなんて無理に決まってるじゃない。
昨日の引っ付き虫みたいな自分に自己嫌悪一杯になってるに決まってるし。
元々、黒田君にかわいく迫るなんて出来るわけないし、
まあ、でもここで放っておくと、どんどん拗らすだけだもんね。
あたしが、なんとかしないとね。
「黒田君、ちょっとお願いして良い?」
和ちゃんと二人で顔を見合わせて困っている黒田君に声を掛ける。
「あ、返事は良いからさ、そうね体育館側の三階の渡り廊下の処で待ってて」
黒田君は軽くうなずくと、そのまま誰にも何も言わずに教室を出ていく。
周りから見ると、ちょっと気まずくなって席を外したように見えるかも。
さて、次は祥ちゃんだ。
あんまり、黒田君待たせるのも悪いし、昼休みもそんなに残って無いしね。
続きは明日のこの時間に
感想お待ちしています。




