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13 聴取と代弁

「津村さん、ちょっと一緒に来て」

 当番の掃除が終わって帰ろうと教室に戻ると、亮子先生が待っていた。


「ちょっと、警察の人が来てるの…根岸さんの事ですって」

 美也の事?警察って事は轢き逃げ犯人が捕まった?

 でも、だったらあたしじゃ無くって美也の家に最初に話しに行くんじゃない?

「…あたし、事件の事は何も知りませんけど」

「あら、そうなの?」

 亮子先生もちょっと困った風に続ける。

「駄目なら校外で事情聴取するって言うから」

 それなら目の届く学校内のほうがいいって訳かな。



 生徒指導室のソファーには二人の男女が待っていた。

 向かい合わせに亮子先生と座る。

「相良です」

 歳かさの男の人が言った。

「霜鳥です」

 もう一人、亮子先生と大して変わらない若い女の人が続ける。

「ええと、津村祥子です」

 意外と礼儀正しい挨拶にあたしも取り敢えず無難に応じる。

 美也はソファーに座らず、入り口の扉に背中を預けて立っている。

「我々は、根岸…美也さんの事件について調べています」

 霜鳥…刑事でいいのかな。女の人が訊いてくる。

「事件の前後、何か変わった事とかありませんか?」

「あの、あたし、事件の前後っていうか、先週末のことよく覚えてないんです」

「…事故の時に一緒に居たと聞いているのですが」

 は?確かに週末約束していたような気はするけど。

 事故の時に、一緒だった?

 振り返って入り口に立つ美也を見る。

「本当?」

「…んー覚えてない」

 美也も、覚えてないって。


「…廊下に誰かいるんですか?」

 霜鳥刑事が言うと、相良刑事が静かに立ち、扉を開ける。

 音もなく近づいてきた相良刑事に美也が慌てて横に飛ぶ。

「誰もいないようですが」

 そういって、ソファーに戻る。

 うん、廊下には誰もいないと思う。

 なので、頷いておく。


「殺人事件が有ったのはご存じですか?」

 霜鳥刑事が話を続ける。

 ん?なんの話?

「誰かがなんか言ってた気もするけど、良くは知らないです」

 美也の事件を調べてるんじゃないの?


「そうですか。二つの事件の時間と場所がかなり近いんです。」

 時間と場所?

 神社の裏の森だとか言ってたかな。

 確かに近い。

「それに、根岸さんを轢いた盗難車から、事件の被害者の毛髪が見つかったんです。」


 盗難車…それに、被害者の毛髪。


「犯人が、美也を狙ってその為に車を盗んで事件を起こしたって事ですか!」

 あたしは思わず上ずった声をあげる。

 視界の隅で美也がぽかーんと口を開いてる。古典的ねあんたの驚き方って。

「…まあ、その可能性は否定できないと考えて、事件当時一緒に居たあなたが何か知っていることが無いかうかがいに来た訳です」

 霜鳥刑事が答える。

「何かって…」

 そんなこと言われてもね、美也の事件だって月曜まで知らなかったし、土日は電話もメールもしてない。殺人事件だかについても何にも知らないし、週末そっちの方には出掛けてない…そうじゃない、覚えていないだけであたしは美也と一緒に居た筈なんだ。

 どうして、そんな事忘れていたんだろう。


「幽霊が出るそうですね?」

 答えに詰まったあたしに相良刑事が水を向けるように口を開く。

「二つの事件の関連性に気付いて根岸さんの近所で聞き込みをしたんですよ。もちろん事件の直後にもしてるんですが。そうしたら何軒かのお宅でそんな話が出てきましてね」

「警察が、そんな話信じるんですか?」

 一応、そう答えて置く。

「はは、まあ正面切って訊かれると困るんですけどね、…そう、信じない訳じゃ無い、ぐらいでどうですか」

 何よそれ、信じてる訳じゃ無いって事でしょそれ、そんなんでよく学校まで来るね。

「まあ何だ、噂ってのはどこかに真実を含んでるものですから。それに今回は実際に根岸美也さんの幽霊に触ったとか、話をしたなんて証言も有りましてね」

 あー、和美だなその聞き込み先って。まったく、面倒な事を。

「じゃあ、質問があればどうぞ、あたしが代わりに答えますから。」

 イタコ役にも大分慣れたもんね。


「…では、その、質問をします。いいですか?」

「はい」

「では、事件についてですが、その、聞いても良いですか」

「良いけど、何も覚えて無いです。」


「それは…事件の事を覚えていないという事ですか」

「土日の事、何も覚えて無いです。幼稚園のある神社に行ったかどうかもわかりません」

 美也が先回りして答える。

「本当に何も覚えていないのですか?」

 霜鳥刑事が念を押すようにあたしを睨みながら訊ねる。

 あたしがイタコ役やってるけど、答えてるのは美也なんで、睨まれても困るんだけどな。

「土日の事は何も覚えていません」

「じゃあ、覚えてるのは何ですか」

「金曜の夜寝るまでは覚えてます。あと、月曜の朝教室で気付いてから今までの事も覚えてます」

「金曜は何をしていました?」

「学校から帰ってからは特に何も」

「外出はしませんでしたか?」

「してません」

「土曜に外出したのはどうしてだと思います?」

『わかりません』

「何か、思い当たることはありませんか」

『コンビニかロンロンへ行ったのかも 時々覗きにいくから』

 暫く考えてから答える。

「ロンロンというのは?」

「確か神社の先にあるファンシーショップだったかな、ね?」

 相良刑事の疑問に対するあたしの答えに美也が頷く。

「ちなみにファンシーショップと言うのは、女子中高生向けにおしゃれな雑貨やキャラクター文具とかを売っているお店です」

 霜鳥刑事が補足する。

「そのぐらい知ってる」

 え、うっそだぁ。見栄張るとこ?

「失礼しました、…ですが、事故の際にそれらしい物は持っていなかったようですが」

「お金ないし、滅多に買わないから」

 その割りにっていうか、だからっていうか、良く飽きもせずに眺めてたよな。よく付き合わされたよね。

 あんまり役に立つ情報は無さそう。


「それでは、お話は充分お聞きできたと思います。あと、何か思い出したとか、気付いた事とかありますか?」

 暫く質問を続けてから相良刑事と顔を見合わせて霜鳥刑事は締めに入った。

 美也は少し考えてこちらを見る。

「祥ちゃん、昨日の事言っとく?」

 昨日の事?

 あいつに家に送って貰ったのが何か?


「ほら、おっきなクルマに轢かれそうになったじゃない」

 おー、そうだ。あれって、何か関係あんのかな?まあ、そうだね話しとくか。

「あの、関係あるか分かりませんが、昨日、あたし達クルマに追いかけられました」

 わざわざ美也から通訳する必要も無い。

「大きな四駆?かな、土手の車止めまで行ったらバックして行っちゃたから、あたしの事狙ってたって美也が言うんだけど」

 狭い一方通行の道をすっ飛んで行ったけど、あれはやっぱりあたしも狙われたって事?

「詳しい場所と時間はわかりますか?」

 覚えてる限りの事を伝えると今度こそ締めって事で二人は立ち上がる。

続きは明日のこの時間に

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