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096. カールの真実

「カール、お前……コイツラのこと、知ってたのか?」


 ユーゴは動揺を抑えつつ、カールに訊いた。

 なぜ紹介していない、初対面の雪とパレアの事を知っているのか。

 彼女たちの名はこの社屋に入ってから、口に出していない。


「私は世界を股に掛ける商人ですので、もちろん九能の姫君や冥海の魔王様の勇名は聞き及んでおります。ですが、ご尊顔は初めて拝見しました。私がお二人のことを言い当てられたのは、ひとえに私のスキル【解明】のおかげです」


「解明? そんなスキル聞いたこと無いわよ」


 パレアが首を傾げて告げた。

 ユーゴもこの世界にも一定数、 “スキル持ち” が存在することは知っているが、【解明】というスキルは聞いたことがなかった。


「ええ。恐らくこの【解明】を持っているのは、この世界では私だけではないでしょうか。というのも、これは私が異世界で命を落としてこの世界で転生する歳に、神を名乗る存在から与えられた能力なのです」


「い、異世界から!?」


「まぁ。そのような事があるのですね」


 驚きを隠せないパレアと雪だったが、ユーゴは、


「俺と似たようなもんだな」


 と、あっさりした反応だった。


「驚かないのですね」


「まぁスマホの件があったからな。予想はしていた」


「ていうか、ユーゴと似たようなものってどういう意味よ?」


「ん? 言ってなかったか? 俺も異世界から来たって」


「聞いてないわよ! なにそれっ!?」


「私も伺っておりませんわ」


 揃って頭をぶんぶんと横に振る女子二名。


「そうか。じゃあ、それも含めて話そうか」


「では立ち話もなんですので、どうぞお掛けになって下さい」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 飲み物と茶請けの菓子をテーブルに並べた女性社員が退室した後、カールが口を開く。


「ユーゴさんがお話ししたいことは、主に二つではないでしょうか。まず一つ目は、私がお渡ししたスマートフォンのこと。次に私とユーゴさんの異世界の件。そしてヨウゲンとの貿易の件」


「そうだな。まずは頼まれごとである、陽元との話をしたいところだが、カールの転生の話が気になって商談に集中できなさそうだ。そっちは後回しで良いか、雪?」


「構いませんわ、旦那様」


「悪いな。じゃあ俺の事情から説明するか。といっても全部話すと長くなるから要約するが───」


 そうしてユーゴは三人に説明を始めた。

 女神ユーラウリアの頼みで転生を繰り返し、異世界を渡っていること。

 今回は異世界に転送された者たちを探しだし、同盟を結ぼうとしていること。


「───とまぁ、こんな感じだな。名前は開かせないが、既に何人か協力を取り付けている。それにしてもカール。お前も驚かないな」


 掻い摘んだ説明を終えたユーゴは、紅茶を飲みながら尋ねた。


「ええ。既に知っていたので。とはいえ、私も初めてユーゴさんとお会いした時は、それはもう驚きましたよ」


「……そうか、例の【解明】か」


「その通りです。私の【解明】の能力の()()()に、生命体や非生命体のステータスを読み取るというものがあります」


「ステータス? とはどのようなものなのです?」


「お答えします、雪姫様。主にその対象者の称号、力やスピードなどのパラメーター、名前、生れてからの日数、習得している技術やその概要などです。これには実力(レベル)差などは関係ありません」


「凄いわね。【解読】の魔術でも似たようなことが出来るけど、実力が上の相手じゃ読み取れないもの」


 カールの説明を聞いたパレアが感心した。

 かつてベルタリオがユーゴのステータスを読むために使ったのも、実はこの【解読】だった。

 

「称号ってのはなんだ?」


「人がそれまでに為してきた行動、業や徳の積み重ねなどにより、世界から与えられる号です。これはどうやらこの世界のシステムが関係しているようなのですが、詳しくは私には解りません。ちなみにユーゴさんの称号は、どれも度肝を抜かれるほどユニークなものです。おかげで初めてお会いした時は、そのあまりの内容に言葉を失いました」


 苦笑したカールに、ユーゴがジト目で問う。


「ちなみに、どんな称号がついてたんだ?」


「そうですね。ではもう一度失礼して……ええと、【神々の遣い】【女神に贔屓されしもの】【邪神調教者】【異世界渡航者】【事象改変者】【竜王の親友(マブダチ)】【悪党つぶし】【海賊皇帝】【虹色の勇者】【鬼喰らい】【ダークヒーロー】【最強の花屋さん】【親バカ会初代会長】それから───」


「もういい。よくわかったありがとう」


 カールを手で制したユーゴに、パレアがじと目を向ける。


「アンタ……いままで一体何をやらかしてきたのよ?」


「色々だ。しかし今のを聞くに、転生する前の───俺の場合は死んでリセットされる前のことも残っているみたいだな」


「そうですね。転生者の場合は、前世の称号が残っているようです。あと、ユーゴさんはパラメーターも規格外ですね。唯一ダントツで低いのが女運くらいですか……」


「やっぱりカールの【解明】は凄ぇな。その通りだ」


 キリッとした顔で頷いたユーゴに対し、パレアと雪が抗議する。


「なんでよ。アタシと出会えたことはアンタにとって幸運でしょうが! これでも魔王様よ、アタシ!」


「私もカール殿の解明とやらの信憑性を疑いますね。コレでも縁談が引きも切らない一国の姫なのですよ」


 納得行かないと言った風情の少女二人を無視し、


「思えばユーラと出会った頃からケチが付き始めたのかもしれないな。いや、それ以前からか……? そういえばカール。お前が出会った神ってのは、頭の中身とノリが軽い、ギャルっぽい女神じゃなかったか?」


「女神? いえ、私がお会いしたのは男神でしたよ。ちょいワル風のイケオジ的な」


「そんな神まで居るのか。ま、違ってたなら良い。で、そのちょいワルオヤジ神にスマホも貰ったのか?」


 パレアに全滅させられそうなクッキーを一枚かじって、ユーゴは訊いた。


「いえ。それは今は亡き私の友人の所有物でした。ユーゴさんにお渡しした一台とこの一台とがセットです」


 そう言ってカールは、上着のポケットからもう一台のスマホを取り出した。

 同時に、そういえば、以前カールは自分のものではないと言っていたことをユーゴは思い出した。


「というと、その所有者も……」


「はい。彼は転移者でした。とある理由でこの世界に転移してきた彼は、持っていた二台のスマホを使ってこの世界を生き抜いてきました。彼は私よりも随分前に転移してきており、既に高齢だったので、天寿を全うしました。それは彼の形見なのです」


「そうだったのか。だからあの時、アラートが鳴ったのか」


 ユーゴは陽元国での事を思い出していた。

 スマホがなった時にスペリオールウォッチのアラートが鳴ったのは、恐らくこの世界でもスマホを使えるようにした何処かのちょいワルイケオジ神の力に影響されたのだろうと予想した。

 そして、アラートが鳴ったということは、その神はユーラウリアと敵対する勢力に属するだろうということも。


「と、以上が私の事情になります」


「水臭ぇな。知り合った時に言ってくれれば良かったのに」


「あのときはユーゴさん、どうやら事情を隠している様子だったので、詮索するのもはばかられまして」


「確かに記憶喪失を装ってたからな。そりゃそうなるか。とにかくカールも転生者なら話が早い。さっき話した事情で、転生者の協力を集めてるんだ。協力してくれ」


「分かりました。これでやっと、ユーゴさんに恩返しが出来そうだ。後その代わりというわけではありませんが、ユーゴさんに依頼したいことがあります。勿論、別途お礼はします」


「ちなみに、どんな内容だよ?」


「実は───」


 カールの説明を聞いたユーゴは、腕を組んで難しい顔をした。


「その内容じゃ俺も確実に出来るとは言えないから、約束はできない。やれるだけやってみるって感じになるが……」


「それで構いません」


 それからユーゴ達は、信衛の商談について話し合ったりカールにスペリオールウォッチを渡したりなどの用事を済ませた。

 その後カールの好意で一泊の宿を世話になると、翌朝、王都へと帰還したのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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