041. ベガス一行の苦難
平明神です。
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フィールエルとネルはアイラで一泊した後、ユーゴが向かったと言うベルーナ遺跡へ出発した。
ネルは後方を進むフィールエルの後ろ姿を見ながら考えている。どうして彼女はユーゴを追いかけているのだろうか、と。
聖都を出るため、神官たちを説得する方便として、フィールエルは二人で行動する有用性を説いた。
さらに、ユーゴを含めた三人でのお話し合いでは、ユーゴがフィールエル (ゼスト) に協力する代わりに、彼女もユーゴに協力するという話も聞いた。
しかしそれは、有事の際に駆けつけるという内容で、いまネルやフィールエルが左腕に巻いている時計のような機械があれば、事足りるはずだ。
わざわざ追いかける合理的な理由は無い。
その点、ネルは自分の行動の意味を理解している。
自分の恋心を自覚しているのだ。
イリーナと言う前世の記憶を持つネル。イリーナの人生が恋を知らずに任務を遂行するだけのものだったと知っている。
イリーナの人生を供養する意味でも、この初恋に後悔はしないように行動しようと決めているのだ。
もし、フィールエルが義理や貸し借り以外の理由───有り体に言えば、恋愛感情───で追いかけているのだとしたら、どうしよう。
不安とも焦燥とも知れぬ感情に悩んでいる。ネル。
そんなネルの懊悩など露知らず、フィールエルはネルに声をかけた。
「もうすぐ着くぞ! ベルーナ遺跡だ!」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ベルーナ遺跡地下二階。
ベガス達勇者パーティーは、この階層に下りて一日が経過しても、まだ次の階層に進めていなかった。
時間は彼らがユーゴを追放した直後まで遡る。
地下二階に下りてすぐホールがあり、そこには、モンスターもトラップもなかった。胸を撫で下ろした一行は前進し、通路を進んだ。
そこは今までより高さも幅もある通路だったので、靴の反響音は今までより小さな声だ。
今まで以上に埃っぽくて淀んだ空気に、リリは不安がいや増した。
「ねぇ、ベガス。そういえば、このダンジョンの情報は手に入れてるんだよね?」
事前に攻略対象たるダンジョンの情報を集めているのは、基本中の基本だ。リリはこのクエストの主催であるベガスたちが当然仕入れているだろうと思い、確認した。
「あ、あー…いや。このダンジョンの情報はマップになかったんだ」
「え? どういうこと?」
ダンジョンが発見されれば、一攫千金を目論む冒険者たちが我先にと飛び込む。ダンジョンの宝だけでなく、マッピングした情報にも価値が出るので、それを専門にするマッパーと言う冒険者もある位だ。
マッピング情報は情報屋で売り買いされるが、どういうわけかこの入り口のダンジョン情報は売っていなかったのだと言う。
潜入が遅れれば遅れるほど、旨味が少なくなるが、その分安全性が増す。公益性を考えるパーティーは、後のパーティーのために早めに情報屋に売りに行くものだ。
そういえばと、リリはあることに思い至る。
このダンジョンの入り口には、自分たちしかいなかった。普通完全攻略されたダンジョンでない限り、ダンジョンの入り口にはキャンプしたり、ミーティングをしたり、複数のパーティーがいるはずだ。
それが新発見間もないダンジョンならば尚更た。
何かおかしくないか?
リリは、突然得体の知れないに不安に襲われた。
その時、先頭を歩くベガスの足元から、カチ、と言う音が聞こえた。
ガゴン。
何か大きな物体が地面に落ちたような振動がした。後方から。
一行が振り返ると、そこには先ほどまでなかったものが存在した。黒く大きな鉄球である。
「まじかよ…」
ギランの呟きに応じたわけではなかろうが、ゆっくりと、だが、鉄球は確実に転がり始めた。前方―――すなわちベガスたちの方へ。
「走れ! 走れ!」
ベガスの号令で、全員が全力疾走をする。
「こっちだ!」
通路の途中に、横に伸びる通路をベガスが見つけ、全員が飛び込むように曲がる。
「あ、あんなトラップがあるなんて…」
肩で息をしながら呆然とリリがつぶやいた。
「こっちにも進めるようだな…行こう」
ベガスが進み始めたので、残りのメンバーも後をついていった。
やがて、またホールに出た。中央まで進んだ時、壁からモンスターの群れが湧いて出た。十匹だ。
地下一階と数も種類もそう変わりない。楽勝だろう。そう高を括っていたが、
「ぐぉぉ…っ!」
「ベガス! 大丈夫か⁉︎」
モンスター同士が連携して、パーティーを翻弄。ベガスが猿型のモンスターに噛まれ、肩を負傷した。
四人が全力で戦い、何とかその場を切り抜けた。
「さぁ。先に進もうか」
「ちょ、ちょっと待って、ベガス。一旦戻ったほうがよくない?」
先を促すベガスをリリは止めた。
「どうしてだ?」
「どうしてって…。マップ情報もないし、モンスターも意外と強いし、一度戻って、体勢を立て直そうよ、ね?」
「なんだ、怖いのか 大丈夫だって。俺らがついているから。な?」
猫撫で声で、リリの肩にベガスは手を回した。
「……っ! で、でも、ベガスも怪我しているし…」
ゾゾっと悪寒が走ったリリだが、跳ね退けて、あからさまに関係に溝を作りたくない。この状況下では。
「私もリリに賛成。引き返すなら早いほうがいいわ」
助け舟を出したレイア。男二人は互いに目配せを交わし、
「そうだな。君たちの言う通りだ。一旦戻ろうか」
と、同意した。
さすがにベガスも学習し、鉄球のスイッチを回避しつつ、一階へ続くホールで休息した。
しばらくして進行を再開した一行は、地下一階へ戻った。
そこから彼らは思わぬ事態に直面することになった。何度も。
まず通路を進むと、前方から矢が飛来した。
気づくのが遅れたベガスとギランがそれぞれ腕を負傷した。
さらにモンスターがホールだけでなく、通路にも続々と出現したのだった。
モンスターを倒し終わったホールで、全員床に座り込んで休息している。満身創痍の有り様だ。
「な…なんだよ、これ。なんでこんなにモンスターやトラップが多いんだよ」
「行きはホールだけだったのに…」
ギランとレイアが顔面蒼白で呟いた。信じられない、と。
「ねぇ。ダンジョントラップって、行きも帰りも同じなんだよね?」
「基本的にはそのはずよ」
リリとレイアが囁くように確認した。
「じゃあ、なんでこんなに違いがあるんだよ⁉︎」
負傷と疲弊でイラついた声をベガスは上げた。
「知らないわよ、そんなの。私たちのせいじゃないでしょう。大きな声を出さないでよ」
負けじと不機嫌な声で応酬したレイア。
行きと帰りでは同じ内容であるはずのトラップ。しかし実際には違いがある。
いや、そうではない。リリは考える。違うのはトラップの内容ではないと仮定すると、相違点は、リリたちのほうにあるのではないか。
それは、ユーゴの存在だ。
まさか───リリが思考を深めようとした時、どこか遠くから物音が聞こえてきた。
何かが爆発するような音や空気が収束する音。
一体、何が起こっているのだろうか……?
ベガス達はゴクリと生唾を飲み込んだ。
やがて音が鳴り止むと、代わりに靴音が近づいてくる。
そして───
「ん? 先客かな?」
桃色髪の女騎士と栗色髪の修道女が現れた。
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