021. 必殺の黒銃
仕事が忙しく休憩時間がないので投稿が遅くなりました。
「早くても、到着は明日になると思っていたのだけれど……。どんな手を使ったのかしら?」
ぼそぼそと喋る少女───黒魔女マリア。
足首まで隠れる裾の広がったスカートやリボンがこれでもかというほど飾られた上着には、フリルがふんだんにあしらわれていた。
いわゆるゴスロリドレスを着込んだ少女は濡れ羽色の長い黒髪で、容姿は整っている。
だが眼鏡の奥の瞳は、怨嗟や憎悪のような負の感情を内包していて、その魅力を減じている。
「黒魔女マリア。教主様たちは無事か⁉︎」
ゼストが冷たく問いただす。
「無視? 最悪……。さあ? 私、力のない、しかもオジさんには興味ないから。でもヴァリオン教の信者たちが騒いでたから、殺されてないと良いわね。私がこの街を襲ったのは、あなた達を誘き出すためだもの───あら? 貴方、どこかで……」
微塵も興味がないマリアはそう答えた。が、何かに思い当たったマリアはゼストをしげしげと眺める。
しばし記憶を探り、やがて思い出したマリアは、底意地の悪い笑みを浮かべて告げる。
「そう。あなただったのね。お久しぶり。その後お加減はいかがかしら?」
「お陰様で、元気だよ」
「ふふふ。あははは……ああ可笑しい。凄いわね、あなた。私だったら、あんな非道いことされたら恥ずかしくて生きていけないわ」
口元を手で隠し、まだ笑いが収まらない様子のマリアに、ゼストは告げる。
「非道だと思うなら、誠意を見せてくれないか?」
「厭よ。あなたみたいに人から好かれる人に嫌がらせをするのが私の生き甲斐だもの。どうにかしたかったら私を殺すことね。そうすれば、元通りになるかもしれないわよ」
「仕方がない。そうするしかないか。悪いが今度は本気でやらせてもらう」
剣を抜くゼスト。
対してマリアは右手に持っていた厚い書籍を開く。
「そうなさい。でも私、今日はツイてるわ。今回の目標である聖女ネルと、以前取り逃がしたあなたが同時に手にはいるんだもの」
「……? そういえば、キミが聖女たちを狙うのは何故だ? 宗教間の争いにしてはやりすぎだ」
「それはね…… “彼” の餌にするためよ‼︎」
マリアが頁を捲ると彼女を中心に呪力が溢れ、少し離れた場所に黒く光る呪力が編み込まれた円陣が現れた。
「無詠唱の呪怨術⁉︎」
スウィンが驚愕の声をあげた。
ヴァリオン教徒は呪怨術という術を行使できる。
呪怨術は神聖術と同じようにこの世界のシステムに干渉し様々な事象を改変する術だが、その内容は神聖術と似ているようで異なる。
異なる点は、呪怨術について森羅万象を憎悪し、呪うことで様々な呪いや不幸を引き起こし、魔獣をも使役できること。
共通点は、その行使には呪文の詠唱が不可欠だということ。それがたとえ、魔女であったとしても。
少なくとも、ミラール教ではそのように教えられる。
円陣からひときわ輝く光を放ちながら、マットブラックの巨大な石板がせり出してきた。
「ゲート⁉︎ 召喚か?」
石板から爆発のような呪力が吹き出しながら、それは顕れた。
顕れたそれが、咆哮を上げる。
「■■■■■■■■■■‼︎‼︎‼︎」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
Pezzoli New-Omega G-custom。通称、ニューオメガ。
それが闇の銃職人ペッツォーリがユーゴのために特別に作り上げた拳銃のひとつ。
元々はデザートイーグルのように破壊力のある弾丸を撃ち出す大口径の銃だった。
ただ、拳銃でありながら、ライフルのように長距離への射撃が可能だったり、ペッツォーリ特製のおもしろ弾を数種類撃てるという、強力かつユニークなピストルだった。
だのに。
G-custom( GはGODの意 )とあるように、これも神の余計なお世話が加わってしまった。
何故なら銃爪を引くと、凄まじい威力のエネルギー弾が出るようになってしまったのだ。もはや弾丸を必要としなくなってしまったのである。
しかも元々の機能を踏襲してか、エネルギー弾の種類も豊富だ。
ユーゴは魔獣の頭を足場にして跳躍し、最寄りの建屋の屋上にそのまま移動した。
ニューオメガのエネルギー弾を ”バーストモード” に切り替える。
バーストモードは着弾すると、その半径約十メートルの範囲で爆発する光弾を放つ。
ユーゴはトリガーを引いて爆発を起こし、魔獣数体を一気に葬りさった。
適当な間隔をおいて銃口を移動させて、更に何度もトリガーを引く。
その合間に首を上に向けて飛行する魔物を視認。左手のネオアルファを上に向け、いい加減に発砲し、弾切れになるまで銃爪を引き続ける。
視線は既に階下に移している。ネオアルファのターゲティングは視界から外れても有効だからだ。
銃としての面白みは無くなってしまったが、乱戦時には有用であることは間違いない。
ニューオメガのモードをノーマルに戻して光弾を放つ。ノーマルモードは殺傷力のあるただの光弾を放つ。破壊力はバーストモードに劣るが、それでも一撃でゴリラの頭くらいは弾き飛ばす。さらにエネルギーの消費が少なく速射も可能であるので、ユーゴはこのモードを多用している。
バーストモードの被弾を免れた個体をノーマルモードで処理していく。
【千里眼】で現在までの戦果を確認。
いまの攻撃でこのブロックは掃討完了したが、まだ全体の半分といったところだった。
ユーゴはネオアルファのカートリッジを取り出して交換。移動しようとしたところで、
「……何の音だ?」
山の中腹。神殿の方から怪獣の雄叫びのような声。そして何かが破壊される音をユーゴの聴覚は感じ取った。
念のため【千里眼】の視点を移動させてゼスト達の安否を確認することにした。
そして思わず溢れた言葉が、
「なんじゃこりゃ?」
だった。
神殿の奥にある、聖堂と思われるだだっ広い空間にゴスロリ姿の少女がいる。
その前方にゼスト、スウィン、ピアが倒れている。体中に傷を負い、意識を失っているようだ。
彼らから少し離れた場所に、巨大な怪物がいた。
見るからに悍ましく凶悪で、強大な力を持っていると思わせる外観だ。
そしてその怪物を、
ネルが杖でバシバシしばいていた。
「……どういう状況だ?」
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