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第十六話 逃亡と決着

「何のためにお前なんかに愛想を振りまいたと思ってるんだ!? イリスレインに王位継承権を放棄させるためだろ!?」

「きゃ……!」


 部屋に入ってきたオリバーはレインに抱き着いたままのヘンリエッタの髪をむんずと掴み上げ、引きずるように引き倒した。

 ヘンリエッタが痛みに顔を歪める。ぶちぶちと髪の抜ける音がした。


「ユリウスが欲しいとか言うから! 手伝ってやろうとしたんだろう!?」


 そのままオリバーがヘンリエッタを殴りつける。鈍い音が響いて、レインはあまりの痛々しい様子に叫んだ。


「やめて……!」

「ああ、イリスレイン、お前が……ヘンリエッタをたぶらかしたのか? お前は父上も、そのグズ弟も、使用人も、大勢をたぶらかす天才だからな」


 オリバーがレインに今気づいたとでもいうように、レインに向き直る。……ヘンリエッタを踏みつけにして。ヘンリエッタは足に踏まれて肺がつぶされたのか、ひゅうひゅうと息をしている。


「……ッ」

「何黙ってるんだよ! お前も俺のことを馬鹿にしてんだろ!? 何もかも乏しい第一王子だってみんなが言ってるのを知ってるんだよ!」


 オリバーが叫ぶ。裏返った声は狂気的で、オリバーの青い目が血走っている。尋常でない様子に、レインはアレンを抱きしめる腕に力を込めた。


 オリバーがヘンリエッタに唾を吐き捨てる。


「いいよなあ、お前は、先代女王の攫われた子供ってだけでお涙ちょうだい。慕われて、女王になる……王になるはずだったのに、俺にはこんなゴミみたいな妄想女しか残らない!」


「訂正してください! ヘンリエッタはゴミみたいでも、妄想女でもないわ!」

「ああ……そうやって、きれいごとでこいつのこともたぶらかしたんだな。奴隷が調子に乗りやがって」


 もはやあの王子然としたさまはなりをひそめ、乱暴な様子で口から唾を吐き散らかすオリバーに、アレンは怯え、ヘンリエッタは震えている。這いずるだけのヘンリエッタからオリバーはもう興味を失ったのだろうか。


 その足で、まるで絨毯でも踏むようにヘンリエッタを乗り越え、レインに近付いた。生魚のような息がレインに吹きかけられる。

 レインは眉根を寄せ、静かに、オリバーに向けて口を開いた。


「それが、あなたの『ほんとう』なのね」

「……あ?」

「最初に出会ったあなたは、もう少し、貴公子だったわ」

「ああ、貴公子、貴公子ねェ……。こうすればいいかい?」


 オリバーは髪をかき上げてにっこりと笑って見せた。それはあの入学式の日の彼のようで、ああ、やはり取り繕っていたのだと思った。それが悪いわけではない。けれど、そうしてだれかを騙そうとしていたのだと、失望にも似た気持ちだった。


「そうしないと、君たちは認めないだろう? あの凡庸な王の息子だと……無才の王子だと陰であざ笑って!」


 オリバーはそばにぼうっと突っ立っている使用人を突飛ばした。レインを囲むうちの一人は、何の反応も示さずその場に倒れ込む。


「こいつらも役に立たないな。薬で正気を失わせてるって話だったが……ただ静かなだけじゃないか」


 言って、オリバーはもう一人の使用人も蹴り飛ばし、足蹴にした。それでも何も表情も変えない使用人を、つまらなそうに見る。


 レインは倒れ込む使用人の胸を確認した。大丈夫、生きている、上下している。


 ほっと息を吐いたレインは、静かに尋ねた。ヘンリエッタに目配せする。


「その人たちには、薬を飲ませたのですか」

「ああ。コックス子爵夫人は薬物に詳しくてな。おかしなことを言うやつだが、これをこれだけ飲ませれば何も感じなくなる、というのを教えてくれたよ。……ヘンリエッタを幸せにするため、と言えば、なんでもする、実に便利な人間だ」


 ヘンリエッタがカタカタと震えている。アレンは意味がわからなくても、おびえてまた泣いている。声を出さずに。

 そうか、そうやって、たくさんのひとの人生をめちゃくちゃにしたのか。


 レインだけでなく、この使用人たちの、そうして、ヘンリエッタの人生を、壊したのか。それを理解して、レインはぎゅっと手に力を込めた。


「……解毒法は、あるのですか」

「さあな、この書類にサインをすれば、教えてやってもいいぞ」

「……見せてください」


 レインの言葉に、オリバーは顔に喜色を浮かべた。

 懐から取り出した紙をソファの前のテーブルに置き、レインの肩を掴み引きずって行く。

 そうしてレインの手に無理矢理に羽ペンを握らせ、インクをずいと押し出してきた。


 レインは書類にさっと目を通す。そこには想像通り、レインが王位継承権を放棄する、という内容が書かれていた。

 おとなしく書面に目を通すレインが抵抗するとは、もはや考えていないのだろう。

 オリバーがをぎらつかせてこちらを見てくる。


 その手がそわそわとレインの体から離れ――。


「――今よ!」


 レインはすべての体重をかけてオリバーに体当たりをした。

 ヘンリエッタが掲げた椅子が、突き飛ばされたオリバーに振り下ろされる。


 ガァン!と大きな音がして、オリバーはその場に崩れ落ちた。

 レインはアレンを抱きかかえたまま、叫ぶ。


「今のうちに!」

「――はい……!」


 ヘンリエッタを伴い、レインは部屋を出る。廊下に出て、走り出した後ろから「イリスレイン、貴様……!」という、怒り狂った声が聞こえてくる。


「ヘンリエッタ、出口は?」

「大階段を降りたところ……でも、だめ、見張りがたくさんいるはず……」


 背後から大きなものが転がるような音が響く。まだまっすぐに走れないだろうオリバーだが、追い付かれるのは時間の問題だ。


「では、立てこもれる場所は?」

「ええっと……」

「おねえたま、あっち! 誰もいないよ!」

「――! 主寝室! 中から鍵がかけられる!」


 ヘンリエッタが叫ぶ。レインは頷いて、ヘンリエッタの手を引いて駆け出した。

 カーテンの隙間から朝焼けの光が差し込んでいる。夜明けが、すぐそこまで来ていた。


 走る、走る、走る――。二階の廊下を掛け抜け、端の部屋にたどり着く。

 鍵はかかっていなかった。勢いよく開けた扉に滑り込むように三人入り、中から鍵をかける。


「合鍵は?」

「ある……はず」

「わかりました。ヘンリエッタ、アレン王子、手伝ってください」


 レインが椅子を持ち上げる。それで察したのか、ヘンリエッタはティーテーブルを、アレンはそれより小さな箱を、ドアの前に立てかけた。


 さすがにベッドは運べないから、それ以外の家具を、二人がかり、あるいは三人がかりで重ねていく。


 あまり時間は経っていなかったように思う。

 けれど、ドアの向こうからオリバーの声が聞こえてきたのは、レインとヘンリエッタが最後のチェストを扉の前に重ねてすぐのことだった。


「おい! ここを開けろ!」


 乱暴にドアを叩く音がする。レインは震えるヘンリエッタとアレンを抱きしめてドアの先を睨み据えた。


「くそ、開かない……。誰か! 合鍵を持ってこい!」


 ドン、ドン、とドアが叩かれる。みしり、重ねた家具が鳴る。

 鍵を持ってこられてしまえばもうだめだ。多少は時間を稼げるだろうが、逃げ切ることはできないだろう。


 最悪、ヘンリエッタとアレンだけでも……。

 レインがそう考えて、腕の中の二人を見下ろした、その時だった。


「――レイン!」


 最初、幻聴かと思った。レインを案じる、硬い声。低いその声は、レインが大好きなもので。


「――レイン、どこにいる!?」

「この声……ユリウス様……?」


 ヘンリエッタが驚いたように目を瞬く。


「ゆりうすおにいたまだ!」


 アレンが喜色にあふれた声をあげた。

 声は窓の向こうから聞こえている。

 レインはカーテンをもどかしく開け、バルコニーへと続くガラス戸をを開いて外へと身を乗り出した。


 ――はたして、そこにユリウスはいた。たくさんの兵士を率いて。あの、サファイアに気付いてくれたのだろうか。


 ああ――ああ――!


 いつだって、ユリウスはレインの救いだ。背後からオリバーの怒鳴り声がする。少し、焦った色が混ざっていた。


「畜生! アンダーサン公爵がなんでここに! なんでばれたんだ……! こうなったら、お前たちを人質に……」


 がちゃがちゃと鍵穴に鍵を差し込まれる音がする。

 開いた扉から家具が雪崩れるようにあふれ、オリバーを足止めする。


「うわあ!? なんだこれは!」


 その隙に、レインはバルコニーの手すりに乗り上げるようにして叫んだ。


「ユリウス――!!」

「……ッレイン!」


 レインに気付いたユリウスがレインを呼ぶ。

 ユリウスのそばにいるダンゼントがすばやく硬い鎧を脱ぎすてる。

 ユリウスにさし出された手、跳べ、と言っているのだ。


「大丈夫、レイン、必ず受け止める」


 その言葉を疑うことなどありはしない。背後から家具をかき分けてオリバーが迫ってくる。

 不安そうなアレンを、ヘンリエッタが抱き上げた。


「大丈夫、アレン様……一緒に跳べば、怖くないわ」


 ダンゼントがヘンリエッタに手を伸ばしている。

 ダンゼントなら――ダンじいやなら、大丈夫だ。


「跳びましょう!」

「はい!」

「あい!」


 ヘンリエッタとレインは同時にバルコニーを蹴った。

 やっとのことでバルコニーにたどり着いたオリバーが二人に手を伸ばすが、その手は髪をかすめるだけでぎりぎり届かない。


 落ちる、落ちる――けれど、こわくない。

 衝撃がレインを襲う。けれど、恐ろしくなんてなかった。

 ユリウスが抱き留めてくれると、信じていたから。


「レイン……!」

「ユリウス!」


 目があって、その美しい琥珀色の目が安堵したように細くなるのを見たとき、レインの目は張りつめていた糸が切れたように涙をこぼしてしまう。


「おにいさまぁ……」

「レインが私をそう呼ぶのは、久しぶりだね……」


 しゃくりあげるレインをぎゅっと抱きしめて、ユリウスは自身のコートをレインに着せかけた。そう言えばガウン姿だったわ、と思って、レインは泣きながら顔を赤くした。


「お兄様……ユリウス」

「今は呼びたい名前でいいよ」

「すみません……甘えてしまって」

「今は甘えていいんだ。……レイン、がんばったね」

「はい……」


 夜が明ける。やわらかな、紫色の陽光が屋敷に差し込んでいる。レインはそっとユリウスの背に手を回し、抱き着いた。


 この腕の中に、帰ることができたのだと、そんな確信とともに、涙をこぼしながら。


 ■■■


 屋敷の入り口に集まっていた騎士たちが屋敷の中に駆け入っていく。

 見覚えのある顔の彼らは、アンダーサン公爵家と王家の騎士たちだった。


 まもなく、わめき散らすオリバーが引き立ててこられ、反応のない使用人たちが保護された。


「くそ、離せ! 俺は王子だぞ!」


 オリバーが叫ぶが、騎士たちはそんなオリバーの抵抗など意識にとどめるほどでもないようで、オリバーの抵抗にその体を揺らがせもしない。オリバーは腕に縄をかけられ、罪人然とした様子で馬車にのせられ、引き立てられていった。


 そうして次に、騎士がダンゼントに抱き留められたヘンリエッタへと視線を向けた。


「ヘンリエッタ・コックス嬢ですね。あなたにも逮捕命令が出ております」

「はい……」

「待って! ヘンリエッタは……義母に脅迫されていたの、情状酌量の余地があるわ……!」


 レインの言葉に、ユリウスがおや、という顔をする。


「レインと、コックス嬢、君たちの間で、何か話せたことがあるんだね」

「はい、ユリウス」


 レインのきっぱりとした言葉に、ユリウスが微笑む。


「わかった。きちんと調べて、真実を明らかにする」

「……ヘンリエッタは……」

「今日は、護送しなければならないだろう」

「そんな……」


 レインは眉尻を下げた。そんなレインに、ユリウスも困ったような顔をする。

 そんな空気を破ったのは、今まさに話題になっていたヘンリエッタだった。


「大丈夫よ。……いいえ、大丈夫です。レイン様」


 ヘンリエッタは笑って言った。どこか、つきものが落ちたような顔をして。


「私だって悪いことをしました。オリバー様に協力して、レイン様を陥れようとしてほかにも、たくさん……それは、本当のことだから、きちんと罪を償います。そうしないと、おかあさんに会えない」

「ヘンリエッタ、あなたの、本当のお母様は、今どこに?」

「私の故郷の村にいるはずです。毎年、生きてる証拠として髪だけ渡されていました。……レイン様」

「ええ、助けるわ。必ず。あなたのお母様を」

「……ありがとうございます」


 ヘンリエッタは涙声で言った。

 頭を下げて、おとなしく馬車に乗り込む。


「ユリウス、ヘンリエッタの故郷の村に、彼女の本当のお母様がいらっしゃるんです。人質として。……今すぐ、人をやってもらえますか」

「ああ。では騎士をひとり遣ろう。ダンゼント、任されてくれるか」

「は。お任せください。馬で駆ければすぐです」


 本当は、自分が行きたい。行って、ヘンリエッタの実の母親の無事を確認したい。けれどレインが行けば目立ってしまって、ヘンリエッタの母親の無事が保証されない。

 身分というのはままならないものだ。


 レインが目を伏せると、ユリウスがそっとレインの肩に手を置いて、撫でてくれる。

 その手があたたかくて、許されているような気持ちになって、レインは小さくうなずいた。

 ふと見ると、アレンが騎士の一人に抱かれて眠っている。緊張することばかりだったから、安全な場所について安心してしまったのだろう。


 その寝顔の安らかさに、レインはほ、と笑みを浮かべた。夜明けが朝へと変わる。

 青い空が、レインたちの上に、高く、高くある。終わったのだわ、と思って、レインはユリウスの胸にそっと頭を預けたのだった。


■■■


 かつかつと高い靴音が、しいんとした牢に響く。

 音の主に気付いたのか、うなだれるように座っていたオリバーが顔を上げた。


「ああ……ユリウスか……」


「最後に申し開きがあるなら聞こう。私はそのために来た」


 げっそりとこけた頬はここ数日でいっそう顕著になった。よほどこの環境に参っているのか、それとも、自らの計画が失敗したことへの口惜しさか。

 ユリウスは牢の前に立ち、痩せやつれたオリバーと対峙した。


「申し開き? これ以上何を言えばいいんだ。公開裁判で明日、死刑を言い渡されるやつが」

「ああ、言い方を間違えたな、すまない。貴様の動機を尋ねに来た。これは個人的な用事だ」

「――……お前は、どれだけ俺を馬鹿にすれば気が済むんだ!」


 オリバーの激昂に、ユリウスは静かな目を向けた。そこにはオリバーへの恨みや怒りはなく、ただ憐みのような色があるだけだった。


「俺はいつだってお前と比べられてきた! 凡庸な王から生まれた、凡庸な王子! 優秀なユリウス・アンダーサンと出自を入れ替えられればいいのに、と何度も何度も言われてきた!」


 がしゃん!と牢の鉄格子を掴み、オリバーがユリウスに顔を近づける。


「ああ、いいさ、動機なんていくらでも教えてやる! 俺と比べられてきたお前が寵愛する義理の妹! そいつは俺も、お前すら持たない王家の証を持っている! お前にわかるか!? その時の俺の絶望が! 壊してやりたいと思ったことが、わかるか!?」

「わからないな」

「ぎぃいい!!」


 淡々と答えるユリウスに、オリバーは頭を掻きむしって獣のような声をあげた。


「わかるものか。たかだか嫉妬で何人も殺したお前の絶望など」

「――は」


 ユリウスの言葉がその場に落ちると、オリバーは顔を押さえていた手をどけてぼんやりとユリウスを見やった。――そうして。


「なんだ、ばれてたのか」


 にい、と笑った。


「しょうがないじゃないか。邪魔だったんだから。俺が王になるにはいらなかった」

「見張りの兵士は剣で、協力者であるエウルア家の使用人は過剰な薬物投与で。いったい何が前をそこまで駆り立てたんだ」

「王になりたかったからに決まってる。俺は第一王子だ。イリスレインさえ現れなければ順当に王になっていた」


 オリバーは髪をかきあげ、ユリウスと同じ、琥珀色の目をゆがませて哄笑する。


「ヘンリエッタは便利だったぜぇ? その義理の母親もな。なぜか俺に最初から友好的で、スチル? がなんだのとおかしなことを言う以外は扱いやすかった……」


「スチル」おそらく、ヘンリエッタの証言にあった異世界の娯楽の用語だろう。


「イリスレインと婚約して、思いっきり振ってやったときのあの表情は見ものだった……! すぐにお前が助けにこなければ、ゆっくり見られたのにな……あ?」


 オリバーの言葉が一瞬、止まる。

 ユリウスの表情を見て、びくりと体を揺らした。

 ユリウスは唇に笑みをはいて、オリバーをじいっと見つめる。


「な、なんだよ……どうせ、お俺は死刑に……今さら怖いものなんて……」

「言い忘れたが」


 ユリウスは静かに言った。


「お前は死なない。一生、辺境の砦で幽閉と決まった」

「……は?」


 さあっとオリバーの顔が白くなる。紙のようになったその顔に微笑して、ユリウスは続けた。


「もうすぐレインの立太子だ。その時に不穏な出来事は避けたい。それに、レインの心優しい希望もあって減刑させてもらった」

「な……! 殺せよ! 今さら、どうやって生きろって……」


 ユリウスは射殺すようなまなざしでオリバーを見つめた。オリバーの目がおびえたように縮こまる。


「私は許可したよ。お前のしたことは許せないが、だからこそ、これが一番の罰になるとね。……一生、レインの治める地を見て、嫉妬に身を焦がして生きろ。オリバー」

「あ、あああああ……!」


 オリバーの慟哭が響く。その目にはもはやユリウスなど映ってはいなかった。自分の悲しみに酔いしれるオリバーは、けして他者のことを見ない、自己愛の強い男だった。これは、だから迎えた結末だった。


「哀れな男だよ、お前は……」


 床に崩れ落ち、こぶしで床を殴りつけるオリバーを悲しいまなざしで見やって、ユリウスは踵を返した。

 薄暗く、湿った空気が充満している。ユリウスは、きっと、だからこんなにも息が苦しいのだと思った。




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