とある悪魔の独白
これも深夜テンションで書きました。
「503418、503419、503420、503421、503422、…」
一人一人、顔と表情を脳裏に焼き付けながら作業を続ける。
俺の顔は多分無表情で、数字をひたすら呟いている。
仲間が見ればついに狂ったかと呆れられるだろう。
ぐるぐると脳裏を巡るのは、「止めてくれ!」と必死の形相で立ち塞がる弱者の最後、「殺さないでくれ!」と背中を向ける弱者の最後、…
数えるときりが無いな。
無駄に高性能な頭は意識せずとも全てを記憶するなど造作も無いのだが、それを俺の心が許さない。
一人目と一万人目の重さに差はなかった。はじめは慣れるものだと思っていたが、そんなことはなかった。
生まれたときには持ちえなかった心は作業を続けるごとに重くなり、押し潰されそうになる。
「これでやっと一柱か。」
気がつけば、ようやく目的の一つ目を達成した。
単独で挑めば死ぬかもしれない敵だった。決死の覚悟で戦うべき敵だった。
だが、それでも重い重いこの解放されない心と比べると、とても楽で気にならない弱者であった。
自身の思うままに動く鎖は、ピクリとも動かなくなったモノを縛り上げている。
モノには数百もの鎖が貫通しており、縛るのをきつくすると容易く爆散した。
鎖は俺の感情を示しているのか、爆散したモノの欠片を容赦なく叩き潰している。
「文明圏全てを殺戮する。そしてこれはたったの一つ目。」
この世界には神がいる。
神は人が想像し崇められた結果、その信仰が形となって現れたものだ。
神の力は凄まじく、神はただそこに在るだけで世界の法則を塗り替えていった。
人々は信仰を捧げ、神はその返礼として人を助け導いた。
勿論、交流を進め多神教となる文明、一神教を曲げず戦火を広げる文明もあった。
神は超常を起こし、人の科学技術は停滞し、衰退していった。
人の争いは醜かったが、それは問題ではなかった。
本当にそれだけなら良かった。少なくともこうなることは無かった。
「"貴様達は狂っている。信仰者を全て殺すつもりか?"って言われたが、その通りだろうな。」
モノが俺に言った言葉は俺の頭の中を駆け回わる。
「ああ、そうさ。俺達は狂っている。」
神が現れて数十万年。
神が引き起こす法則の書き換えは世界そのものに少しずつ歪を与えていた。
一柱だけならだけなら、もしかしたら文明がひとつだけなら問題は無かったのかもしれない。
だが、異なる法則同士は摩擦し、矛盾を引き起こした。矛盾は極小ながらも世界に決して癒えない傷を与えていった。
「数百年後のいずれ来る終わりを回避するためか。」
そのためには神を消し去ることが必要であった。
しかし、神自体はほぼ不滅である。過去、現在向けられた信仰の総量とそれに関連付けられる物体の存在が神の力に比例し、その信仰が続いている限り、消滅することは決してない。
その信仰が途絶えた時、神にはやっと死の概念が与えられる。
故に俺達が取れる策は、信者の皆殺しの他になかった。
「あいつと見た星はもう見えないのか。」
何も見えない夜空を見上げた。
周囲には何一つとして明かりがないというのに、雲はかかっていないというのに星は一つも見当たらない。
当然だ。
神を弱体化させるために、神とよく結び付けられる星を空を閉ざして隠したのだから。
あいつは俺に名をくれた。
あいつは俺に感情をくれた。
「あいつがいなけりゃ、こう苦しむこともなかった。」
涙が零れた。
俺は世界を安定させるために創られた。
いずれ、こうなることも想定はしていた。
「だが、ここまで苦しいとは思ってもいなかった。」
たった今、永眠した文明。
倒すべき目標はたった一柱。
目標達成のための殺した信者は10539529人。
「さて、俺のノルマは後、九柱か。」
悪魔の彼の心は擦り切れることも狂うこともない。
故にひたすら増えていく苦しみを永遠に直視する。
明日も彼は全てを直視して、やるべき作業をこなしていった。
連載のほうのネタが思い浮かばない。