ハラスメント社会
社員数五十人の会社の社長室。
「社長、止めてください!それはパワハラです!」
そんな女性の声が豪華な内装の部屋に音は吸い込まれる。
「そんなに文句があるなら君はクビだよ??即日解雇。」
対する社長は悠然と手を組みながら革張りの椅子に座り、気後れどころか僅ながらに面倒くさそうにまたかと内心で思っているがそれを表情に出すことは無い。
「そもそもとして、何で私に楯突いているのかな??君の行動のせいで他の社員のクビも切ろうか?指示通りに動かない、命令無視、遅刻、無断欠勤、業務中のサボり行為。それら全てを見逃しているにも関わらずどうしてそこまで強気で来れるのか理解が出来ない。」
更なる社長の追撃。
「そもそも君はこの会社ではなんの役にも立っていないし口だけ達者で君の業務は他の社員の負担になっている。その達者な口で営業でもしたらどうかと考えたが誠意の無い営業など会社にとってマイナスだから事務員として雇用しているが、それもこれで終わりだよ。今までご苦労様。これからは君の席はこの会社に無いがこれからの君の人生が良いものに成ることを影ながら願っているよ。」
そう言い社長室には警備員が入り、喚き続ける元社員の罵声を塞ぐことせず、社長室を出て会社から追放された。
静かになった社長室で愚痴が吐き出される。
「はぁーーー。何がパワハラだよ。あんな社員を雇っているだけで温情だと何故わからないのかな?あぁ、考える脳がないからか。なら納得♪って成るわけ無いから!」
そんな一人ノリツッコミを虚しくするも社長には心底理解できなかった。
この会社は社員数は五十人だが、非正規雇用の人員を考えれば日本全国で数千人規模に成る。
ただし、正社員の平均雇用年数は三年。中央値で考えれば二年4ヶ月。
その反面、非正規雇用の人員の平均雇用年数はは30年弱。中央値なら37年。
月の労働時間は100時間弱で年収500万円強。福利厚生もしっかりしているし、年間休日は160日越え。会社での積み立てもしており、どんな優良企業よりもホワイトな職場だと信じているし、実際他の社長達にもこんなに良い会社はないなと言われる。
リモートワーク対応で、どんな資格や免許だろうと取得補助もある。
趣味に没頭する時間もとれて、プライベートも充実しやすい職場環境のはずなのに。
「それにしてもパワハラかぁ。この言葉が根付いてから嫌な世の中になったもんだ。」
「そもそも私に対してパワハラとか言うけど、何で自分はハラスメント行為をしていないと言えるのだろうか。まぁこれも持つ者の責務と言うやつかな。本当に嫌な責務だけど。」
そんな弱音ともつかない本音を溢す程には理解が出来ていなかった。
オフィスでは警備員に引き摺られていく女性を見ながら『あぁやっぱり』と言う皆の共通見識だった。
「やっぱり社長に直談判は不味いよなぁ。」
「当たり前でしょ?この会社で社長に逆らう社員なんて見せしめ以外無いわよ。」
「そもそもあの子の業務が私達に回ってきても片手間で終わる内容だもの。」
「俺達の業務なんて殆ど整えられていて、最後に判断する事だからなぁ。」
「本当、この会社が潰れないの不思議だよ。」




